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ぎっくり腰,急性腰痛症のリハビリ治療


ぎっくり腰(急性腰痛症)のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

ぎっくり腰の概要

重い物を持ち上げる、腰をひねる、中腰の姿勢をとるなど、日常生活の様々な場面で急激に起こる腰痛症の総称をぎっくり腰といいます。

ぎっくり腰

背骨を側方から見た場合は以下の図のような構造となっていますが、その中でも痛みを感じやすいのは線維輪周囲にある洞神経、神経根、椎間関節(包)、後縦靭帯になります。

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ぎっくり腰の原因は大きく分けてふたつあり、ひとつが椎間板の線維輪が破綻して後方に押し出され、後縦靭帯の損傷や洞神経を刺激することにより生じます。

脊椎|ぎっくり腰|後縦靭帯の損傷

もうひとつは、椎間関節を包んでいる関節包が損傷することで起こります。こちらは一般的に椎間関節捻挫とも呼ばれます。

線維輪の破綻が重い物を持ち上げたり、中腰姿勢で生じやすいのに対して、椎間関節捻挫は腰を極端にひねるような動作で損傷しやすいといった特徴があります。

また、急性腰痛症には筋筋膜の損傷によって起こる場合も多く、一説には背中の筋肉に痙攣(こむら返りのようなもの)が起きているとも考えられています。

ぎっくり腰が発生すると腰を動かせなくなってしまいますが、後縦靭帯や椎間板に原因がある場合は激痛のために体動困難になるまでは至らないと考えられます。なので、筋筋膜の損傷や異常収縮が大きく影響していると予測されます。

脊椎|ぎっくり腰|筋痙攣

急性腰痛症は一度発生してしまうと再発を繰り返す場合が多いため、状態が安定するまでは日常の生活動作にとくに注意をはらっていく必要があります。

また、急激な腰痛は脊椎圧迫骨折の可能性もあるため、時間が経ったら良くなると考えて放置せずに、医療機関を受診することも大切です。

急性腰痛症の臥床期間はなるべく短くする

ベッド上の安静臥床は、回復を遅延させるだけで治療効果はないとされています。ですので、安静はなるべく最小限にとどめることが大切です。

もしも、1日経っても痛みが治まらなかったり、足が痺れるなどの神経症状がみられる場合は、病院にて医者の診察を必ず受けるようにお願い致します。

【Evidence】急性腰痛を対象に安静臥床の効果について調査した結果(項目:痛み,機能回復,欠勤日数,仕事への復帰日数,慢性腰痛への移行など)、ベッド上の安静は回復を遅らせるだけで治療効果はなく、むしろ積極的で持続的な活動が仕事への復帰、慢性的な障害や再発の予防に繋がった。(Waddell G.1997.)

ぎっくり腰の原因は椎間板や靱帯よりも筋肉の異常収縮にあると上述しましたが、原因が椎間板や靱帯にあるのであれば、絶対に臥床のほうが治癒は早くなるはずです。

しかし、そうでないということはやはり組織の器質的な損傷ではない可能性が高いと考えられます。

急性腰痛症が慢性化するメカニズム

ぎっくり腰のように痛みの発生初期に関節をロックする方法は、痛みに対して非常に有効な対処法です。

しかし、その状態が継続することで下図のような悪循環に陥ります。動作を制限しすぎないほうが治癒が早いのは悪循環を断つといった目的があります。

慢性腰痛化のメカニズム|悪循環

腰が楽になる姿勢について

腰痛を早く治すためには、早期に安静を排除して筋肉のコンディションを元に戻していく必要があります。しかし、さすがに痛みが発生した直後は動くこともできない状態です。

ですので、以下の図のような痛みが楽になる姿勢をとりながら、身動きがとれるようになるまで安静にしておく必要があります。

仰臥位で下肢を屈曲した姿勢,腰が楽になる姿勢
側臥位で下肢を屈曲した姿勢
腹臥位で腹部と下腿部にクッションを入れた姿勢

また、ベッドなどから起き上がる際は、なるべく腰部に負担がかからない姿勢で起き上がれるように指導することも大切です。

方法として、まずは寝返りをしてから横向きとなり、つぎに両脚をベッドの端から垂らして、ややうつ伏せのような状態から両手で体を押し上げて起き上がっていきます。

その際に、腰椎の前弯を保持しながら実施することがポイントです。

ぎっくり腰,起き上がり方,腰に負担をかけない

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リハビリテーションの効果

米国疼痛学会のガイドラインにおいて、急性期腰痛症に対して効果があるとされる治療は少なく、「通常活動の継続」「表在低温熱ラップ療法」「脊椎マニピュレーション」ぐらいです。

その他の物理療法や運動療法にはほとんど効果を認めていません。下記の表は、ガイドラインに掲載されているエビデンスの一部です。

介入 急性腰痛
エビデンス 効果 グレード
安静臥床の指示 強い 効果なし/悪化 D
通常活動継続の助言 強い 小さい B
書籍・ハンドアウト 強い 小さい B
表在低温熱ラップ療法 強い 中等度 B
腰部サポーター 弱い 実証されていない I
脊柱マニピュレーション やや強い 弱い/中等度 B/C
運動療法 強い 効果なし D
鍼治療 弱い 実証されていない I
牽引療法 弱い 実証されていない I
TENS 弱い 実証されていない I
温熱・寒冷療法 弱い 実証されていない I

表在低温熱ラップ療法

日本ではあまり聞きなれない治療法ですが、米国では有効であるとされています。これは、化学反応の放熱による低温度の温熱を少なくとも8時間連続で局所にあてる方法です。

ホプキンズ大学の調査では、苦痛抑制教育と併せてラップ療法を3日間受けた患者は、苦痛抑制教育だけを受けた患者に比べ、苦痛の強度が急速に激減したとされています。

代替法として、貼るホッカイロを腰に貼っておくことで長時間にわたって腰部を温めることができるので、病院での治療が受けられない場合は実施してみてください。

表在温熱ラップ療法

電気刺激療法(TENS)

患部に電気を流すことでゲートコントロール理論を利用した鎮痛効果が期待できます。詳しくは「電気刺激療法の効果について」の記事を参照していただくと理解しやすいです。

ガイドラインにおいては効果をほとんど認めていないですが、急性期より実施できる安全な数少ない方法なので、試してみる価値はあります。

自分も腰痛持ちなので、痛むときは愛機の「OMRON エレパレス 低周波治療器 HV-F128」を用いて痛みを抑えるようにしています。(結構効果ありますよ!)

自己牽引療法

腰痛症に対しての牽引療法は、これまでの研究で効果がないと散々言われてきたのですが、超急性期の牽引については、その対応の難しさからはっきりとした研究はなされていません。

ここでは、自宅でも簡単にできる牽引方法について紹介します。方法は、ベッドにて仰臥位の姿勢をとり、腰部にタオルを入れて腰椎前彎となるように姿勢を調整します。

その後、ベッドの端から下腿を降ろし、その重みによって腰椎を牽引していきます。ですので、ベッドはなるべく高いものを選び、足が地面につかない状態が理想です。

ぎっくり腰は筋肉(とくに多裂筋)に問題があると考えられますので、下位腰椎をしっかりと伸ばすつもりで実施することで腰痛の予防効果が期待できます。

牽引療法,腰痛,ベッド,リハビリ

脊椎伸展運動(マッケンジー体操)

運動療法は、痛みを抑えるというよりも、腰痛の再発を予防するといった観点で取り組んでいく必要があります。

とくに脊椎伸展運動(マッケンジー体操)は自主トレーニングが行いやすく、腰痛予防への意識づけとしても有効な方法のひとつです。

方法は、うつ伏せの状態から手の平を床につきます。そこから腕を伸ばして、上半身を反らすように持ち上げていき、この動作を大きくゆっくりと繰り返します。

一日に10回×3セットを朝昼晩に実施することが推奨されます。痛みが少ない範囲で実施してください。(詳しい方法はマッケンジー体操についての記事をご覧ください)

マッケンジー体操,体幹伸展,リハビリ,方法,ぎっくり腰

脊椎マニピュレーション

腰痛の原因には様々なものが挙げられますが、前方要素である「椎間板」と後方要素である「椎間関節」に大別することができます。

前方要素に原因がある場合は体幹前屈姿勢で痛みが誘発します。この場合、上述したマッケンジー体操が有効であるとの報告が多くあります。

脊椎|体幹屈曲時

後方要素に原因がある場合は体幹伸展姿勢で痛みが誘発されます。

脊椎|体幹伸展時

椎間関節に由来する腰痛に対しては、屈曲位でのモビライゼーションが即効すると報告されています。

回旋マニピュレーショ ン,モビライゼーション,棘突起,方法

モビライゼーションの方法は、ベッド上で側臥位をとり、施術者は両母指で腰椎棘突起を左右から挟むようにし、左右に動かして関節の遊びを確認します。

その後、棘突起に母指をあてて、関節の遊びが大きく動く方向に操作していきます。

筋力トレーニング

筋トレを実施する最大の目的は、腰椎への負担を軽減することにあります。物を持ち上げるなどの動作をする際は、必ず背筋群を十分に働かせるようにしてください。

荷物を持つ|腰を痛める姿勢 荷物を持つ|腰を痛めにくい姿勢

鍛えるべき対象の筋肉は脊柱起立筋と多裂筋です。脊柱起立筋は体幹の伸展動作に、多裂筋は脊椎の安定性に貢献しています。

トレーニング方法として、専用のベンチなどにうつ伏せとなって足を固定し、上体を持ち上げていきます。お腹などにクッションを入れることで、より簡単に上体を反らしていくことができます。

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ストレッチング

腰痛に対するストレッチでとくに重要となる筋肉は、①ハムストリング、②腸腰筋、③大腿直筋の三つです。

これらの筋肉は短縮をきたしやすく、骨盤の動きを制限したり、傾斜を強めてしまう原因となりやすい傾向にあります。

ハムストリング

真っ直ぐにした脚を大きく広げて座り、背中を真っ直ぐに保って上体を前傾させます。膝の裏側の筋肉が張っている状態を感じながら実施してください。

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腸腰筋

ベッドに片足を乗せた状態で立ち、そのまま体を下げていきます。腰椎を伸展位とすることで大腰筋を、屈曲位とすることで腸骨筋を選択的にストレッチできます。

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大腿直筋

正座の姿勢から片足だけを伸ばし、そのまま後方にゆっくりと体を倒していきます。曲げている方の大腿全面が伸びているのを感じながら実施してください。

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装具療法

コルセットの着用について

コルセットやサポーターの着用は腹部の内圧を上昇させ、腰椎にかかる負担を軽減する効果があります。

この時に大切なのは、しっかりと腹部を圧迫することです。かなり力を入れて締めないと腹圧は上がりませんので、精一杯に締めてください。

コルセットがない場合は、布やタオルなどをお腹にしっかりと巻いて、腹部を圧迫するだけでも同様の効果を得られます。

腰痛を早期に治癒させるために必要なことは「安静の排除」です。そのためにも、コルセットなどを使用して痛みを緩和させ、少しでも活動ができるように調整することが大切です。

お勧めの腰椎固定ベルトはパワフルギア

使用していただいたらわかると思いますが、固定ベルトで最強なのはパワフルギアだと思います。女性でも軽い力で苦しいぐらいに締め上げることが可能です。

しかしながら、あまりに強く締めると血行不良などを引き起こしてしまいますので、血流を阻害しない程度で着用するように注意してください。

痛いのにどうしても動かないといけないときは、気合いを入れて締めるのもひとつの手段です。

コルセットで筋力低下は起きるのか

よく医学書などに長期間のコルセット着用は筋力低下を招くと書かれていますが、実際はそんなことはありません。

コルセットをつけるから筋力低下を招くのではなく、筋肉を使わないから筋力低下は起こります。なので、筋トレを実施することで筋力を維持することは可能です。

サポーターなどに関しては筋肉の補助作用がありますので、本来の発揮する力を少なくしてくれます。それが結果的に、動作を楽にしたり、痛みが軽減することにつながります。

以上より、運動さえ継続できるのなら、患者がコルセットに依存していても私は構わないと考えています。

おわりに

いくつか積極的な治療法を紹介しましたが、いまだに医学的根拠(エビデンス)の確立した治療法は存在しません。

そのため、実施前後に痛みの変化を確かめながら、その人に合った効果的な方法を選択しながら治療は進めるようにお願い致します。

お勧めの書籍(Amazon)

私が執筆している腰痛症の治療に関する書籍も出版されていますので、腰痛について深く理解したい場合は、是非ともご購入を検討してみてください。

参考資料/引用画像

  1. 日本整形外科学会発行の腰痛症の診療ガイドライン(2012)

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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