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アルツハイマー病(認知症)のリハビリ治療


アルツハイマー病のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

アルツハイマー病の概要

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)は認知症を引き起こす代表疾患のひとつであり、潜行性に発症し、緩徐に進行していくのが特徴です。

発症から10年ほどで急激に進行し、歩行が困難となって寝たきりになり、発症から15年前後で亡くなられるケースが多いです。

ADは、脳にアミロイドベータというタンパク質が蓄積されることで神経細胞が破壊され、脳萎縮が起こることによって障害が起こります。

なぜ蓄積するかいった明確な原因については分かっていません。そのため、治癒したり、進行を止めるといった治療法はないのが現状です。

アルツハイマー病の症状

初期のADによる認知機能障害では、数分前の記憶(近時記憶)が障害されやすく、側頭葉の海馬が障害されることに起因しています。

記憶 分類 期間
即時記憶 短期記憶 数秒間
近時記憶 長期記憶 数分から数ヶ月
遠隔記憶 長期記憶 数ヶ月以上

さらに、進行に伴い見当識障害や頭頂葉症状(視空間認知障害、構成障害)が加わっていきます。

また、病識の低下やうつ症状、アパシー等の精神症状、場合わせ反応といった特徴的な対人行動がみられます。

その他の代表的な認知症(レビー小体型認知症や脳血管性認知症など)との違いを以下の表にまとめています。

認知症の鑑別方法

ADの場合は、CTあるいはMRI検査で、治療可能な認知症に認められる脳内異常構造物がなく、内側側頭葉の萎縮が認められます。

また、SPECT、FDG-PETによる両側側頭・頭頂葉と帯状回後部の血流低下や糖代謝障害認められます。

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運動認知リスク症候群とは

運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome:MCR)とは、遅い歩行速度と軽度の認知異常を特徴とし、各国で新しく説明されている前認知症症候群です。

米国イェシーバー大学の研究では、MCRは高齢者で頻度が高いこと、MCRは認知機能低下を強力かつ早期に予測しうることを報告しています。

MCRは認知症への移行率が高いとされており、前段階から予防的なリハビリをしておくことは有用といえます。

また、認知症の予防には運動療法が効果的とされており、セラピストの指導の下、運動習慣を身につけておくことは極めて重要であるといえます。

通所リハや外来で通われてきている高齢者に対して、定期的に歩行速度を計測している病院は多いかと思います。

その際に、歩行速度の低下は運動機能の低下に止まらず、認知機能の低下まで示唆していることを頭に入れておくことが大切になります。

治る認知症について

アルツハイマー病の治癒は困難であることは前述しましたが、その他の代表的な認知症(レビー小体型認知症や脳血管性認知症など)も基本的に治癒はありません。

そのため、認知症は治癒しないもの、加齢現象だから仕方がないと考えている方も多いですが、治る認知症というのも実は存在しています。

それは脳に血腫が起こっている場合(脳内血腫)、髄液の貯留によって脳を圧迫している場合(正常圧水頭症)などです。

そのような明確な原因が生じて認知症が起こっている場合は、手術によって認知症は改善が可能です。

なので、もう高齢だから仕方ないといって放っておかずに、まずは医療機関を受診し、どのような認知症であるかを調べてみることが大切です。

正常圧水頭症の特徴としては、他の認知症よりも早期に尿失禁や歩行障害が出現することが挙げられます。

そのような徴候が強い場合はとくに、お近くの脳神経外科などで適切な診察を受けるようにお願いします。

認知症に対するリハビリの効果

認知症に対する治療は、主に薬物療法と運動療法、認知機能の向上治療などになります。

薬物療法に対しては、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンどの有効性を示すエビデンスが多数あります。

そのため、認知症の進行を遅らせるためにも、薬剤の服用は行うように強く薦められています。

運動療法に対しては、多くの観察研究において定期的な運動が高齢者の認知症やADの予防、あるいは認知機能の低下を抑制できることが報告されています。

しかし、運動療法でADの進行が遅らせられたり、改善するというわけではなく、あくまで発生を予防することに効果があるという報告になります。

発生してしまってからは、運動療法で進行を遅らせたり、認知機能が改善できるといったことはほとんど期待できません。

認知機能の向上治療に関しては、認知刺激療法やバリデーション療法、回想法、音楽療法、リアリティオリエンテーションなど、多数の治療法が提唱されています。

しかしながら、これらの治療も同様に明確な改善効果は証明されておらず、本人の状態をみながらの適応になるかと思います。

認知症に対するリハビリの方法

認知症で主に障害を受けるのは「記憶」です。発症初期では、その中でも特に近時記憶(3分ほど情報を保持する能力)が障害されます。

進行に伴い、即時記憶(1分程度)や遠隔記憶(個人の生活史、家族構成等)にも障害を受けるようになります。

具体的にエビデンスがあるワケではありませんが、発症初期に近時記憶を反復強化することが脳機能を維持するためには効果的ではないかと私は考えています。

症状が進行し、即時記憶まで障害された方には、そういった記憶訓練を行うことが難しくなるため、早期からのトレーニングが重要といえます。

また、前述したように認知症そのものの改善は困難なので、進行に伴う二次的障害を予測した上での介入が不可欠です。

具体的には、発症初期にしっかりとした運動習慣を獲得しておくこと、日常生活が円滑に行えるように環境設定しておくことです。

あえて新しいことには取り組まず、今後を見据えて運動や行動をパターン化して覚えておくことにより、自立した生活ができる期間を延ばせるように努めます。

認知症の進行を予測する

米国ジョンズ・ホプキンス大学のPeters氏は、軽度ADにBPSD(精神病症状,攻撃性,感情障害など)が合併している場合、重症化するまでの移行期間を早めることを報告しています。

BPSDに関しては、認知症の二次的障害といわれており、環境調整や対応方法によって改善できることがわかっており、認知症の進行予防のためにも患者への対応は非常に重要であるといえます。

英国で行われた大規模研究では、中年期に肥満だった人では、正常体重または低体重の人に比べて認知症を発症しにくいことが報告されました。

肥満者では、正常体重者に比べ15年後の認知症発症率が30%低く、低体重者は正常体重者より認知症発症率が34%高いという結果でした。

これは非常に意外な結果だったので、メディアにも取り上げられたましたが、この結果はあまり本質的なものではないと私は考えています。

肥満者(少し太り気味)の人は動く際に体重が重りになってきますので、普通の生活をしていても運動量が必然と高くなっています。

そのため、低体重者よりも筋力が維持されやすく、なにもしていないのに運動習慣があるような状態になっているといえます。

前述したように、アルツハイマー病は運動習慣によって発症が予防できるので、認知症が肥満者に少ないのは、おそらくここが本質的な部分だと思います。

もちろん重度の肥満者は総じて寿命が短くなりますので、たとえ過体重によって認知症の予防効果があったとしても、その便益を得るだけの長生きはできないでしょう。

なので、肥満者だから認知症になりにくいといったような短絡的な考えではなく、運動習慣の重要性に目を向けるべきです。

動きを制限しない環境整備に重点を置く

発症から10年ほどが経過すると、徐々に廃用による身体機能低下が出現し、転倒のリスクが高まってきます。以下は転倒の危険因子となる順位です。

順位 原因
1位 過去の転倒歴
2位 平衡障害
3位 筋力低下
4位 視力障害
5位 内服薬

1度転倒してしまった人はまた転倒することが非常に多いですが、だからといって、無闇に拘束することがあってはいけません。

それよりも、転倒しても怪我をしないように生活環境のほうを整備をすることのほうがより大切になります。

また、これから先までを見据えた家庭環境への適応訓練、介護保険の利用による適正なサービスの選択などを実施し、活動量を落とさないようにトータル的なサポートを実施していきます。

認知症末期の関わり方について

ADでは終末期になるにつれて、自発性が乏しくなって寝たきりとなり、経管栄養が必要となってきます。

この時期からは、いかにして穏やかに過ごすことができ、人生のターミナルに向かうことができるかが重要だと考えています。

療法士の中には、拘縮が進行するからといって乱暴な関節可動域訓練やストレッチをしている人を見かけますが、それは是非とも避けるべきです。

そういう人のリハビリを見ていると、患者は上下肢に強い緊張が入っており、顔に苦痛の表情を浮かべていたりします。

終末期の患者は言葉を発することができず、どれだけの苦痛があっても訴えることはできません。だからこそ、こちら側の読み取る力が重要となってきます。

誰でもそうですが、無理やりに緊張している筋肉を伸ばされたら痛みが出て、全身に緊張が入るはずです。

そのような反応を読み取っていかないことには、つらいだけ、痛いだけでなんの効果もないリハビリになってしまいます。

終末期はとくに褥瘡や肺炎の予防が重要になってくるため、廃用予防に合わせて、呼吸音の聴診や嚥下訓練なども必要に応じて実施していきます。

そのようにして、無理のない範囲で二次的な障害を最小限に止めるようにしながら、穏やかな最後となれるように関わりを持っていきます。

誤嚥性肺炎の予防について

寝たきりとなった認知症患者の死亡率で最も多い原因が誤嚥性肺炎です。

誤嚥を予防するためには、口腔ケアや食事中に下顎を引くこと、食後1時間は座位を保つことが有効であるとされています。

しかし、いずれもエビデンスレベルは高くなく(グレードC1)、誤嚥性肺炎を起こしてしまう場合も少なくありません。

職場の環境によっては理学療法士でも嚥下の状態や食事形態の選択についても関わりを持っていく必要があるため、その辺りまで勉強していくことが求められます。

リハビリの本来の目的である全人的復権の観点からも、たとえ意思疎通ができなくてもしっかりと声かけを実施し、ひとりの人間として接することが大切です。

穏やかな最期が迎えられるようにするためにも、終末期ではとくにチームで協力しながら細やかな全身管理が求められます。

リハビリテーション実施計画書のサイン

老健や通所リハなどで実施計画書にサインをもらうとき、認知症で理解できないにも関わらず、「ここに名前を書いてください」といって説明もなしに名前だけ書かせているセラピストをよく見かけます。

そんな状態では、認知症の老人を騙して契約をとっている悪徳業者とやり方がかわらない気もします。

認知症の方には、家族にサインをもらうことが原則です。くれぐれも、面倒だからといって本人にもらわないように注意してください。

認知症への対応についての原則

少し話は変わりますが、認知症の患者と接するときに是非とも知っておいてほしいことに、「感情の記憶は残りやすい」ということがあります。

認知症の人はどうせ覚えてないからといって適当な対応を繰り返していると、「あの人はなんとなく嫌だ」と避けるようになります。

実際に現場で働かれている方なら、このような状況が日常的によくあることを知っているかと思います。

また、そういった対応は認知症に伴う心理症状(異常行動、興奮、易刺激性など)を悪化させる原因にもなります。

そのため、認知症の方に対して適切な対応をとるということは、それだけで立派な治療法の一つにもなりえます。

以下に日常で遭遇しやすい場面を具体的に挙げていき、どのように考え、どう対応したらいいかを解説していきます。

1.昔の話を何度も聞かされる

聞かされる側からしたら大変なのですが、1分でもいいのでしっかり聞き、「用事があるから続きはまた今度聞かせてくださいね」といって優しく切り上げてください。

適当にあしらったり、その話はもう何度も聞いたからと指摘すると、相手には負の感情だけが残ります。

尾を引かずに上手に切り上げることができる方は、高齢者からも好かれますし、仕事もやりやすくなります。

2.何をしてほしいのか言わない

高齢になると、物事を判断するのに時間がかかるようになります。

介護する側としては、答えを性急に求めてしまいがちですが、根気よく待つ心構えも時には必要となります。

こちらがすべて勝手に決めてしまうと、信頼関係も築けませんし、自尊心を失わせることにもなりかねません。

私たちでもそうですが、信頼関係ができていないうちは頼み事もしづらいものです。なので、最初はその人のことを理解し、気軽に話せる関係を構築することが大切です。

3.同じをことを何度も聞いてくる

何度も聞いてくるということは、自分の覚えていることが間違っていないか心配になっている可能性があります。

そういった場合は、メモ帳やカレンダーなどにわかりやすく記入して、その都度に確認ができるように対応してください。

そうすることで、説明する人の負担も減りますし、認知症の方も不安を解消することができるようになります。

4.部屋の掃除をさせない

これは高齢者だけに当てはまることではなく、人に掃除されると物のある場所がわからなくなってしまうから嫌だという人は多いはずです。

また、見られたら恥ずかしいものや大切なものを他人には触られたくないといった感情は誰しもが持っているかと思います。

とくに高齢者ほど物を大切しますので、その傾向が顕著になります。

この対応策としては、「○○のついでに少し綺麗にさせてね」とさりげない言葉をかけてから片付けます。

一度に全部ではなく少しずつ実行していき、相手の反応を見ながら次の段階に進んでいってください。

思い出のあるものの話を聞いたりしながら、少しずつ信頼関係を築いていくことにより、掃除されることへの抵抗感を減らしていくことができます。

5.何もしようとしない

認知症の代表的な心理症状にアパシー(無気力)があります。

これは、以前は簡単にできていたことが難しくなってきて、何をするにも億劫でやる気がなくなっている状態です。

私たちでもそうですが、難しいことや不慣れなことはなるべくしたくありません。年をとったら、その傾向は尚更に強くなります。

ですので、なるべくその人が簡単にできるような方法を考え、難しいことに対しては手助けをするようにお願いします。

間違っても、以前はできていたことなので、「これぐらいできるでしょ!」と怒鳴りつけたりはしないでください。

6.お風呂に入りたがらない

これも上記の「何もしようとしない状態」と理由は同じであり、とくに入浴は日常生活の中でも非常に複雑な動作を必要とします。

以前はできていたことができなくなったことに対して気持ちが億劫になってしまったり、できないことを知られるのが恥ずかしいと感じていたりします。

そんため、できる限りに難しいといった感情を取り除くためにも、入浴しやすい環境をまずは整えることが大切かと思います。

また、場合によっては自分が汚れているという認識がない人もいますので、診察の際などに医師の口から「健康の面からお風呂は体にいいですよ」などと勧めてもらうことが効果的な人もおられます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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