上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のリハビリ治療

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上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のリハビリ治療について解説していきます。

テニス肘の概要

上腕骨の遠位は筋肉が付着しやすいように隆起しており、外側(橈側)を上腕骨外側上顆、内側(尺側)を上腕骨内側上顆といいます。

外側上顆には長・短橈側手根伸筋や総指伸筋など、手関節背屈や手指伸展に関与する筋肉が付着(起始)しています。

それらの筋肉を過剰に使用することで、起始部に炎症が起こっている状態を上腕骨外側上顆炎といいます。

好発年齢は30〜50代で、テニスをされている方々に多く発症することからテニス肘と呼ばれます。

若年層での発生はそれほど多くなく、社会人になってからスポーツを開始したケースに多いとされています。

肘関節|上腕骨外側上顆炎

一般的には、加齢的変化によって筋肉や腱の退行変性などが起こり、そこに過度な負荷が加わることによって生じるとされています。

筋肉の柔軟性や筋力を高めておくことはテニス肘の予防に効果的であるため、中年以降でスポーツを始める場合は、念入りに事前運動を実施しておくことが大切です。

外側上顆に付着する筋肉の中でも、とくに短橈側手根伸筋(extensor carpi radialis brevis:ECRB)が炎症を起こしている場合が多いです。

短橈側手根伸筋

テニスよりも重量物の運搬で発生する

554例の外側上顆炎を解析した報告によると、最も多くみられた発症原因は「重量物の運搬」で、全体の38%を占めていたことが報告されています。

テニスが原因となっている症例は約10%であり、全体の比率からみると比較的に発生頻度は高くないとされています。

しかし、テニスプレーヤーにおける発生率は30〜50%と高率で、とくに硬式テニスやプロレベルになると60%以上が本症を経験しています。

上腕骨外側上顆炎の場合は筋肉が障害部位であるため、障害部位の圧痛に加えて、原因筋の収縮時痛が認められます。

上腕骨外側上顆に付着する筋肉

上腕骨外側上顆に付着する筋肉は非常に多く、長・短橈側手根伸筋や総指伸筋以外にも、尺側手根伸筋や肘筋、回外筋、小指伸筋が付着しており、合計で7つもの筋肉が起始しています。

ちなみに上腕骨内側上顆には浅指屈筋や円回内筋、尺側手根屈筋、橈側手根屈筋、長掌筋が付着しており、合計で5つの筋肉が起始しています。

手関節は掌屈動作よりも背屈動作の方が筋力が弱いため、負担が加わり続けることで上腕骨外側上顆のほうが痛めやすい構造となっています。

上腕骨外側上顆 上腕骨内側上顆
肘筋 尺側手根屈筋
長橈側手根伸筋 長掌筋
短橈側手根伸筋 浅指屈筋
総指伸筋 橈側手根屈筋
尺側手根伸筋 円回内筋
回外筋
小指伸筋
外側上顆炎|筋肉

短橈側手根伸筋の作用

短橈側手根伸筋(ECBR)は、ラケットを握った際の「手関節の安定性」や「バックハンドで打つ動作」として主に活躍します。

日常生活ではタイピング動作やドアノブを捻る動作に用いられます。

起始は上腕骨外側上顆及び輪状靭帯にあり、第3中手骨底の背側面に停止します。

上腕骨小頭から橈骨頭にかけて肘屈曲位では前方を走行し、伸展に伴い外側に偏位します。

肘関節|前面|靱帯

テニス動作(ラケットの握り方など)

尺側グリップ

  • 環指と小指でラケットをしっかりと握り、示指と中指はリラックスした握り方
  • 短橈側手根伸筋への負担が少ない
テニスラケット|尺側グリップ

橈側グリップ

  • 示指と中指に力が入り、ラケットをしっかり掴んだ握り方
  • 短橈側手根伸筋への負担が大きい
テニスラケット|撓側グリップ

テニスの不良動作

  • 体幹回旋が乏しく、腕だけで打っている
  • バックハンドで手関節掌屈位となり、ECBRを過伸長している
  • サービスエースで肩関節の内旋が減少している
  • インパクトがスウィートスポットから外れている

初心者ほどテニス肘になりやすい理由

技術的に未熟な人はスウィートスポット(ラケット中央)から打点が外れるため、インパクト時の振動が大きくなり、肘部への負担が大きくなります。

また、上級者はインパクト時にのみ手関節の背屈筋や掌屈筋が強く収縮するのに対して、初心者はスウィングの間中ずっと筋収縮が起こっています。

これらの理由からテニス初心者に上腕骨外側上顆炎は起こりやすく、とくに中年以降に始めた人ほどリスクが高まります。

テニスラケット|スウィートスポット

整形外科検査

Thomsen test

  • 肘を伸ばしたまま手関節の背屈に対して抵抗を加え、手関節伸筋群起始部の疼痛を診る
  • テニス肘では高頻度に疼痛が出現する
  • 同様のテストで徒手抵抗ではなく椅子を持ち上げてもらう「Chair test」がある
中指伸展テスト

引用画像(1)

中指伸展テスト

  • 肘を伸ばしたまま中指の伸展に対して抵抗を与え、手伸筋群起始部の疼痛を診る
  • 短橈側手根伸筋は第3中手骨底の背側面に付着しているため、選択的に負荷をかけることができる
Thomsen test

引用画像(1)

日本整形外科学会の診断基準

  1. 抵抗性手関節背屈運動で肘外側に疼痛が生じる
  2. 上腕骨外側上顆の伸筋群腱起始部に最も強い圧痛がある
  3. 腕撓関節の障害など伸筋群起始部以外の障害によるものは除外する

手術療法(観血的治療)

テニス肘のほとんどは保存療法で完治しますが、難治例に対しては短橈側手根伸筋(ECBR)の切除術、筋膜切開術などが実施されます。

どの手術においても、その治療目的はECRBの緊張を軽減して除痛することです。

近年では積極的に関節鏡視下手術も行われており、従来より早期に社会復帰が可能となっています。

また、術式によって治療成績に大差が出るとした報告はありません。

重症度と復帰目安

1.軽度の場合
握力が健側の2/3以上
テニス後や練習中にたまに痛む
復帰までは1-4週間
2.中等度の場合
握力が健側の2/3以下
練習中はいつも痛む、ドアノブをひねる動作でも痛む
復帰まで1ヶ月以上は要する
3.重度の場合
握力が健側の1/3以下
ラケットを握るだけで痛みが出る
復帰まで2ヶ月以上を要する

安静指導(エルボーバンド)

患部の安静のためには、前腕回外と手関節背屈動作を控えることが重要です。

背屈動作の制限に関しては、手首サポーターを使用して、手関節の背屈を制限すると有用です。

また、エルボーバンドを装着することで痛めている筋肉を持続圧迫することにより、疼痛の軽減および浮腫発生の抑制も期待できます。

こちらはあくまで除痛目的なので、痛みがやわらいだからといって同じ動作を繰り返していたら根本的な解決とはなりません。

フォーム指導

フォーム指導はテニス経験のない素人には難しいですが、「橈側グリップではないか」と「腕だけで打っていないか」のチェックだけは行います。

片手バックハンドストロークで順回転のボールを打つためには、強い手関節伸筋群の収縮が必要で、外側テニス肘の原因にもなります。

再発を避けるためには、両手でのバックハンドストロークへの変更も考慮してください。

リハビリテーション

上腕骨外側上顆炎は筋膜障害で起こっているケースもあるため、上記のラインはしっかりとリリースするようにします。

具体的には、尺骨背側で外側縁と橈骨内側縁の間にセラピストの四指を骨と伸筋群の筋膜の間に間隙を作るようなイメージで差し込みます。

圧を加えた状態で患者に手指の屈伸運動を10回行ってもらい、痛みが軽減するようなら、さらに末梢に加圧する場所を変えて再度実施します。

筋膜が痛みに強く関与しているようなら、癒着を剥がすようなイメージで行うことにより、疼痛の除去が期待できます。

また、外側上顆に付着している筋肉をストレッチすることにより、血行の改善と癒着などの二次障害の予防ができます。

ストレッチ側の腕を肘関節伸展位、前腕最大回内位、手関節掌屈位とし、もう片方の手で手関節を掌屈・尺屈していきます。
橈側手根伸筋,ストレッチ,方法,部位

上腕骨外側上顆炎の予後

治療群と無治療群を比べると前者のほうが改善が早い傾向にあり、治療内容に関係なく6ヶ月以内に90%で改善が得られるとされています。

一方で、治療内容に関係なく、1年後の状態は2/3で痛みが消失し、1/3に痛みや不快感が残っていたことが報告されています。

これらのことから、上腕骨外側上顆炎が発症したら患部の安静を十分にとることに加えて、しっかりと筋膜リリースを行ってください。

参考資料/引用画像

  1. 日本整形外科学会発行のパンフレット「テニス肘」
  2. 日本整形外科学会発行の診療ガイドライン

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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