ヒラメ筋の概要
腓腹筋の深層にある扁平で持久力に優れた底屈筋。筋体積の割に横断面積が大きく定常出力に強い一方、長期臥床では不活動萎縮が生じやすい。
下腿静脈洞+強靭な深横筋筋膜に囲まれる解剖から、骨格筋ポンプの主役として下肢循環に重要。
基本データ
| 項目 | 内容 |
| 支配神経 | 脛骨神経 |
| 髄節 | S1-2 |
| 起始 | 腓骨頭, ヒラメ筋腱弓, 脛骨後面(ヒラメ筋線) |
| 停止 | 踵骨隆起(アキレス腱) |
| 栄養血管 | 後脛骨動脈 |
| 動作 | 足関節の底屈 |
| 筋体積 | 575㎤ |
| 筋線維長 | 3.1㎝ |
| 速筋:遅筋(%) | 12.3:87.7 |
運動貢献度(目安)
足関節底屈:ヒラメ筋 > 腓腹筋 > 長腓骨筋
肢位・負荷で寄与は変動。目安として使用。
下腿三頭筋とアキレス腱

腓腹筋+ヒラメ筋=下腿三頭筋。両者の腱が合流しアキレス腱となって踵骨隆起に停止。
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歩行・立位:ヒラメ筋が主体(持久)
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走行・ジャンプ:腓腹筋の関与↑(瞬発)
下腿中央の断面図
ヒラメ筋は腓腹筋に囲まれた深部にあり、側面からは直接触知が可能です。
深層には中隔の筋膜が存在し、ここで滑走不全が起こるとアキレス腱炎・周囲炎や循環障害のリスクになります。
触診方法

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膝屈曲位で足関節底屈を指示すると腓腹筋が緩み、ヒラメ筋を選択的に収縮させやすい。
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外側縁から指腹を差し入れると腓腹筋を避けて触知しやすい。
ストレッチ方法

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膝屈曲位+足関節背屈でヒラメ筋を選択的に伸張(壁押し・段差ストレッチ)。
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20–30秒 × 2–3回、反動なし。アキレス腱部の鋭痛は中止。
筋力トレーニング

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カーフレイズ(膝軽度屈曲位):ヒラメ筋を強調。10–15回 × 2–3セット。
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段階化:両脚 → 片脚 → 追加荷重/テンポ調整(遠心ゆっくり)。
トリガーポイント(TP)

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主訴:アキレス腱〜踵周囲の重だるさ・立位でのふくらはぎ深部の張り・歩行初動でのこわばり(しばしば足底〜踵に放散)。
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誘因:長時間の立ちっぱなし・ゆっくりした歩行の継続・つま先荷重の作業・ふくらはぎのストレッチ不足での急な歩行開始・ヒール/硬い靴での移動。
歩行時の筋活動

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LR〜MSt:遠心性に背屈を制動し関節安定化。
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TSt:求心性に底屈してプッシュオフを補助。
通常歩行ではヒラメ筋が主役、速度・推進要求で腓腹筋動員が増える。
関連する疾患・症状
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ふくらはぎのだるさ/浮腫:静脈ポンプ低下。足関節のポンピング運動が有効。
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アキレス腱断裂:中年アスリートに多く、踵骨付着部より4–6 cm近位が好発。数週間の違和感が前駆する例あり。
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アキレス腱周囲炎:付着部〜2–6 cm近位の痛み・腫脹、朝の初動痛。進行で軋轢音・可動制限。
よくある質問(FAQ)
Q. ヒラメ筋と腓腹筋の違いは?
A. ヒラメ筋=持久・姿勢保持/歩行主体、腓腹筋=瞬発・走跳主体。鍛えるときは**膝屈曲(ヒラメ)/膝伸展(腓腹)**で使い分けます。
Q. トリガーポイントの関連痛は?
A. アキレス腱〜踵〜足底へ広がるだるい痛み。ストレッチ+遠心強化、歩行のプッシュオフ改善が有効です。
Q. 周囲炎の初期サインは?
A. 起床時の一歩目の痛み、運動後の腫れ・熱感。悪化前に負荷管理と段階的リハへ切り替えましょう。
最終更新:2025-10-13

