この記事では、ヒラメ筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
ヒラメ筋の概要
ヒラメ筋はその大部分を腓腹筋に覆われている扁平な筋肉で、筋体積に対して筋横断面積が大きいため、筋出力が非常に高いことが特徴です。
歩行など日常生活では常に使用し続けられる筋肉であるため、全筋肉の中で遅筋線維の割合が最も高く、全体の90%弱を占めています。
白筋線維より赤筋線維のほうが不活動による萎縮を起こしやすいため、ヒラメ筋は術後などの長期臥床によって廃用が進行しやすいのが特徴です。
また、下腿には静脈洞や強力な深横筋筋膜、上方には静脈が位置しているため、ヒラメ筋は骨格筋のポンプ作用として非常に重要な役割を担っています。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 脛骨神経 |
髄節 | S1-2 |
起始 | 腓骨頭、腓骨と脛骨の間のヒラメ筋腱弓、脛骨後面のヒラメ筋線 |
停止 | 踵骨隆起 |
栄養血管 | 後脛骨動脈 |
動作 | 足関節の底屈 |
筋体積 | 575㎤ |
筋線維長 | 3.1㎝ |
速筋:遅筋(%) | 12.3:87.7 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
足関節底屈 |
1位 | ヒラメ筋 |
2位 | 腓腹筋 |
3位 | 長腓骨筋 |
※ヒラメ筋は腓腹筋よりも足関節底屈に貢献する筋肉です。
下腿三頭筋の概要
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下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋の総称で、ふたつの筋は踵骨隆起に停止する際にアキレス腱を形成します。
アキレス腱は人体で最も強靱かつ太い腱であり、長さは約15㎝ほどです。
前述したようにヒラメ筋は遅筋線維が豊富なため、持久力が必要な普段の歩行にはヒラメ筋が、瞬発力が必要な走行には腓腹筋が主に活躍します。
ヒラメ筋の触診方法
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膝関節を屈曲した状態で足関節の底屈運動を実施することで、腓腹筋の深部で収縮する扁平なヒラメ筋を触知することができます。
膝関節を屈曲する理由としては、大腿骨に付着する腓腹筋を緩ませることで収縮を抑え、ヒラメ筋を選択的に収縮できるからです。
下腿の後方から触れようとすると腓腹筋にぶつかるため、下腿の側方から指先を入れ込むことで、より容易に収縮を感じられます。
下腿の断面図
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下腿中央を断面でみた場合、ヒラメ筋は腓腹筋に囲まれるように位置していることがよくわかります。
側面は腓腹筋が覆っていない部分もあるので、そこに指を当てることで直接的な触知が可能です。
ヒラメ筋の深層には中隔の筋膜が存在しており、多数のヒラメ筋線維が挿入しています。
この中隔に滑走不全が存在するとヒラメ筋の伸張性を低下させ、アキレス腱炎やアキレス腱周囲炎、血液循環のトラブルを引き起こします。
ストレッチ方法
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膝関節伸展位では二関節筋である腓腹筋が伸張されるので、膝関節は屈曲して実施することでヒラメ筋を選択的にストレッチできます。
筋力トレーニング
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膝関節が伸展していると腓腹筋の収縮が入ってきますので、ヒラメ筋を選択的に強化するために膝関節は軽度屈曲位で実施します。
トリガーポイントと関連痛領域
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ヒラメ筋にトリガーポイントがあると、アキレス腱に沿って踵や足底まで痛みが放散します。
長く立っているとふくらはぎがだるくなるといった訴えがある場合は、重心が前方(つま先より)にあり、反射的に下腿三頭筋が緊張しています。
だるさを改善するためには立位で下腿三頭筋が緩む位置に重心を移動させ、緊張をできる限りに取り除くことが求められます。
ハイヒールを履くとヒラメ筋は常に短縮し、足首を不安定にさせるので、ヒラメ筋を過剰に働かせてトリガーポイントを形成されます。
歩行時の筋活動
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歩行において、ヒラメ筋は荷重応答期(LR)の後半から立脚終期(TSt)にかけて活動します。
この時期は足関節が背屈している時期であり、ヒラメ筋は遠心性に働いて足関節の安定に寄与しています。
そして立脚終期の最後の一瞬だけ蹴り出すようにして求心性に収縮します。
関連する疾患
- ふくらはぎのだるさ
- アキレス腱断裂
- アキレス腱周囲炎 etc.
アキレス腱断裂
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アキレス腱断裂は中年のスポーツ習慣者に発生しやすく、練習不足の状態で急激な動きをした際に発生します。
受傷前にはアキレス腱の部分断裂を伴っていることも多く、断裂する2週間ほど前からアキレス腱に痛みを感じている場合もあります。
アキレス腱断裂の大部分は、血流が乏しい部分(踵骨に付着する部位より4〜6㎝近位)に多く発生します。
アキレス腱周囲炎
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主な症状は、アキレス腱付着部から2〜6㎝近位部の痛みと腫脹です。
運動後や起床時の歩き始めに痛みが強く、症状が進行すれば安静にしていても痛みを伴うようになります。
アキレス腱周囲炎が進行すると、徐々に足関節の動きが悪くなっていき、動かす度にアキレス腱部に軋轢音が発生する場合があります。