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ボバースアプローチの基本コンセプト


ボバースアプローチ(Bobath approach)による治療の考え方について解説していきます。

ボバース概念について

1940年代に医師のカレル・ボバースと理学療法士のベルタ・ボバース夫人により、中枢神経疾患に対する治療法として考案されました。

治療を発展させていく中で、従来のボバースアプローチのみでは対応が困難となり、現在はボバース概念(Bobath concept)という言葉に統一されています。

ボバース概念の基本構成として、①姿勢運動コントロールの理解、②姿勢分析、③ハンドリングの三部から成り立っています。

姿勢運動コントロールの理解

ボバース概念において重要視するのは、「体幹機能」と「筋緊張」であり、四肢の運動を調節するためには体幹の安定性(抗重力活動)が重要としています。

脳卒中後遺症者では体幹機能の低下が起こることで、全身の運動調節が不十分となり、適切な筋緊張を保てなくなります。

体幹機能や筋緊張について理解するためには、大脳からの指令を伝達する下行性伝導路について熟知している必要があります。

下行性伝導路は、腹内側系と背外側系に分類でき、腹内側系は主に体幹機能の調整に働き、背外側系は主に四肢の運動や巧緻動作の調整に働きます。

臨床神経学雑誌第49巻第6号

引用画像(1)

腹内側系

経路 障害
橋網様体脊髄路 体幹機能のバランス活動が崩壊(無意識)、筋緊張の恒常的調整の破綻
視蓋脊髄路 頭頂部から上位胸髄までのバランス活動が崩壊、視覚的定位運動の障害
間質核脊髄路 頭頂部のバランス活動が崩壊、眼球の水平運動の障害
内側前庭脊髄路 同側の伸筋群の収縮活動が亢進(頸部・上肢)
外側前庭脊髄路 同側の伸筋群の収縮活動が亢進(体幹・下肢)
前皮質脊髄路 体幹機能のバランス活動が崩壊(随意的)

橋網様体脊髄路は、最大の経路で1800万本の線維が下行します。前庭脊髄路とともに、姿勢コントロールに対して最も重要な働きを担います。

橋網様体脊髄路の障害では体幹部の弛緩による不安定を呈するため、ボバース概念においては極めて重要な経路です。

視蓋脊髄路と間質核脊髄路に障害を呈する場合は、目と手の協調性が欠如することで、上肢のリーチ運動が困難となります。

前庭脊髄路(内・外)は同側の伸筋の緊張をコントロールしており、障害を受けることで伸筋の収縮活動が亢進します。

腹内側系

背外側系

経路 障害
外皮質脊髄路 交叉して片側の上下肢に弛緩性麻痺を起こす(とくに手の内在筋)
赤核脊髄路 近位筋と遠位筋の協調性が障害、屈筋群の収縮活動が亢進(とくに前腕屈筋)
皮質延髄網様体脊髄路 近位筋と遠位筋の協調性が障害、屈筋群の収縮活動が亢進(上下肢)

皮質脊髄路全体(外・前)では、約100万本の線維が下行しています。そのうち50%は頚髄、20%は胸髄、30%は腰仙髄まで下行します。

外側皮質脊髄路の障害では、手の内在筋の弛緩性麻痺が生じます。脳卒中後遺症者では、手に強い痙縮がみられる場合は多いですが、内在筋は弛緩が確認できます。

赤核は中脳被蓋にあり、反対側へ赤核脊髄路もしくは赤核延髄路を作ります。延髄網様体脊髄路の2/3は頚髄で終止し、残りは腰髄まで下行します。

赤核脊髄路と延髄網様体脊髄路は遠位屈筋の緊張をコントロールしており、障害を受けることで屈筋の収縮活動が亢進します。

背外側系
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姿勢分析

姿勢を分析できるようになるためには、上述した姿勢運藤コントロールのメカニズムを理解することに加え、健常者の正常運動(ヒューマンムーブメント)について理解することが必要となります。

これは正常な動作における構成要素の組み合わせ方を学ぶことにより、患者の異常な要素を見つけ出すことを目的としています。

また、四肢による課題の遂行には体幹機能が調節できていることが前提としており、ここがボバース概念の特徴のひとつと考えられます。

ハンドリング

姿勢分析にて原因を予測できるようになったら、その症状への効率のよい効果的な刺激や環境を与えるためのハンドリングスキルについて学んでいきます。

脳卒中後遺症者の治療においては、固有感覚によるコントロールの能力を重視する場合が多いです。

固有感覚とは、筋肉や腱、関節、靭帯、迷路からの感覚であり、その中でも筋肉からの情報は最も大きいとされています。

治療においては、ハンドリングによる誘導を用いながら、固有感覚のフィードバックや再学習の観点から進めていくことになります。

そして、固有受容器に適切な刺激が繰り返しに与えられることにより、ヒューマンムーブメント(正常動作)を獲得を目指します。

部位 固有受容器 受容
迷路 前庭器、三半規管 頭の位置と運動による変化
筋肉 筋紡錘 筋の長さの変化
腱紡錘 筋収縮、筋張力、筋の長さの変化
関節包 ルフィニ終末 関節運動の方向と速さ、他動・自動運動の弁別
靱帯 パチニ小体 わずかな運動、運動の加速度

引用画像/参考文献

  1. 臨床神経学雑誌第49巻第6号

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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