概要
三角筋は肩を“キャップ”のように覆う大きな筋肉で、前部・中部・後部に分けて考えます。
三角筋のTPは**発痛源がほぼその場(局所)**に出るのが特徴。肩の別の筋(斜角筋・大胸筋・腱板など)の問題から“つられて”二次的にできることも多いです。
症状と関連痛パターン(ざっくり)
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前部:肩前側の局所痛/腕を前へ上げる・押す動作で痛い

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中部:肩横~やや外側のズキッとする痛み/横に上げると痛い・力が入りにくい

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後部:肩後ろの局所痛/腕を後ろへ引く・投球のフォローで痛い

※三角筋由来の痛みは**安静時より“動かすと痛い”**が典型。広範な放散痛は少なめです。
できやすい原因
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反復動作・持続負荷:頭上作業、重いものの持ち上げ・抱き上げ、スイミング/ボールスポーツ、スキー、ウエイト
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作業姿勢:肘が常に高い(キーボード位置が高い・肘掛け無し)→三角筋の“持ち上げっぱなし”
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外傷/オーバーリーチ:捻挫・ぶつける・腕を強く引っ張られる
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二次的発生:斜角筋・大胸筋・腱板(棘上/棘下/小円/肩甲下)にTPがあり、その“サテライト”として三角筋に出現
自分で見つけるコツ
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指腹で筋腹の中央帯をゆっくり圧迫し、“嫌な痛み+いつもの痛みの再現”があればヒット。
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前部・後部は中央1点に出やすい。中部は起始(肩峰寄り)~停止(上腕骨三角筋粗面)まで帯状に点在しやすい。
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強く押しすぎは逆効果。痛み3/10以内を目安に。
セルフケア(安全第一)
1) ボール圧迫(いちばん手軽)
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テニス or ラクロスボールを壁と肩の間に挟む
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前・中・後部を壁に対して身体の向きを少しずつ変えて探る
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1点につき20–30秒の持続圧 or 小さな前後スライド×2–3回/日
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痛みがじんわり軽くなる範囲のみ。鋭痛なら中止
2) 軽い動的リリース
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痛点を軽圧しながら、痛くない範囲で腕をゆっくり上下(前部→屈曲、中部→外転、後部→伸展)10回ほど
3) ストレッチは“やりすぎない”
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三角筋は伸ばし込みで悪化しやすいタイプ。
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まずTPが落ち着いてから、軽い肩回しや胸椎の伸展エクササイズを足す程度に。
再発予防のワンポイント
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肘の位置=低く&支える:キーボードは肘高、肘掛けや前腕サポートを活用
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荷物は体幹に近づける:ぶら下げ持ちはNG
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トレは肩甲帯セットで:前鋸筋・下部僧帽筋を使って**“すくみ肩”を抑える**と三角筋の過労を防げます
よくある誤解と鑑別
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三角筋TPの痛みは局所主体。広く前腕や手まで響くときは、斜角筋や腱板、頸由来をまず疑う
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「肩外側が痛い=三角筋」と決めつけず、**棘上筋(腱板)**の関与もチェック(外転初動痛、ペインフルアーク)
こんな時は受診を
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夜間痛で眠れない/安静でも強い痛み
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外傷後に挙上保持ができない・力が入らない
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しびれ・発熱・腫脹が続く
→ 腱板損傷、滑液包炎、頸神経根症などを医療機関で鑑別しましょう。
ミニQ&A
Q. どこを押すのが正解?
A. 痛みの出る動作に対応する区画の“筋腹中央”。前=前部、横=中部、後ろ=後部が目安。
Q. どれくらいの強さ?
A. 痛み3/10以内。圧は“息を止めないで保てる強さ”。30秒×2–3回で十分。
Q. マッサージで指が疲れます…
A. 壁+ボールに切替。体重を預ければ楽にコントロールできます。
Q. トレーニングは?
A. 痛みが引いたら、軽負荷の肩甲面挙上(フルカン)や外旋等尺を小さく。すくみ肩はNG。
まとめ
三角筋のTPは**“その場で痛い・動かすと痛い”が合図。
まずはボール圧迫で鎮静 → 姿勢・作業環境の見直し → 肩甲帯の協調づくり**の順で整えると長引きにくくなります。