三角筋のトリガーポイント(TP)

概要

三角筋は肩を“キャップ”のように覆う大きな筋肉で、前部・中部・後部に分けて考えます。
三角筋のTPは**発痛源がほぼその場(局所)**に出るのが特徴。肩の別の筋(斜角筋・大胸筋・腱板など)の問題から“つられて”二次的にできることも多いです。


症状と関連痛パターン(ざっくり)

  • 前部:肩前側の局所痛/腕を前へ上げる・押す動作で痛い

  • 中部:肩横~やや外側のズキッとする痛み/横に上げると痛い・力が入りにくい

  • 後部:肩後ろの局所痛/腕を後ろへ引く・投球のフォローで痛い

※三角筋由来の痛みは**安静時より“動かすと痛い”**が典型。広範な放散痛は少なめです。


できやすい原因

  • 反復動作・持続負荷:頭上作業、重いものの持ち上げ・抱き上げ、スイミング/ボールスポーツ、スキー、ウエイト

  • 作業姿勢:肘が常に高い(キーボード位置が高い・肘掛け無し)→三角筋の“持ち上げっぱなし”

  • 外傷/オーバーリーチ:捻挫・ぶつける・腕を強く引っ張られる

  • 二次的発生:斜角筋・大胸筋・腱板(棘上/棘下/小円/肩甲下)にTPがあり、その“サテライト”として三角筋に出現


自分で見つけるコツ

  • 指腹で筋腹の中央帯をゆっくり圧迫し、“嫌な痛み+いつもの痛みの再現”があればヒット。

  • 前部・後部は中央1点に出やすい。中部は起始(肩峰寄り)~停止(上腕骨三角筋粗面)まで帯状に点在しやすい。

  • 強く押しすぎは逆効果。痛み3/10以内を目安に。


セルフケア(安全第一)

1) ボール圧迫(いちばん手軽)

  • テニス or ラクロスボールを壁と肩の間に挟む

  • 前・中・後部を壁に対して身体の向きを少しずつ変えて探る

  • 1点につき20–30秒の持続圧 or 小さな前後スライド×2–3回/日

  • 痛みがじんわり軽くなる範囲のみ。鋭痛なら中止

2) 軽い動的リリース

  • 痛点を軽圧しながら、痛くない範囲で腕をゆっくり上下(前部→屈曲、中部→外転、後部→伸展)10回ほど

3) ストレッチは“やりすぎない”

  • 三角筋は伸ばし込みで悪化しやすいタイプ。

  • まずTPが落ち着いてから、軽い肩回し胸椎の伸展エクササイズを足す程度に。


再発予防のワンポイント

  • 肘の位置=低く&支える:キーボードは肘高、肘掛けや前腕サポートを活用

  • 荷物は体幹に近づける:ぶら下げ持ちはNG

  • トレは肩甲帯セットで:前鋸筋・下部僧帽筋を使って**“すくみ肩”を抑える**と三角筋の過労を防げます


よくある誤解と鑑別

  • 三角筋TPの痛みは局所主体。広く前腕や手まで響くときは、斜角筋や腱板、頸由来をまず疑う

  • 「肩外側が痛い=三角筋」と決めつけず、**棘上筋(腱板)**の関与もチェック(外転初動痛、ペインフルアーク)


こんな時は受診を

  • 夜間痛で眠れない/安静でも強い痛み

  • 外傷後に挙上保持ができない・力が入らない

  • しびれ・発熱・腫脹が続く
    → 腱板損傷、滑液包炎、頸神経根症などを医療機関で鑑別しましょう。


ミニQ&A

Q. どこを押すのが正解?
A. 痛みの出る動作に対応する区画の“筋腹中央”。前=前部、横=中部、後ろ=後部が目安。

Q. どれくらいの強さ?
A. 痛み3/10以内。圧は“息を止めないで保てる強さ”。30秒×2–3回で十分。

Q. マッサージで指が疲れます…
A. 壁+ボールに切替。体重を預ければ楽にコントロールできます。

Q. トレーニングは?
A. 痛みが引いたら、軽負荷の肩甲面挙上(フルカン)や外旋等尺を小さく。すくみ肩はNG。


まとめ

三角筋のTPは**“その場で痛い・動かすと痛い”が合図。
まずは
ボール圧迫で鎮静 → 姿勢・作業環境の見直し → 肩甲帯の協調づくり**の順で整えると長引きにくくなります。