腰痛を引き起こす原因のひとつである上殿皮神経障害のリハビリ治療について、ここでは解説していきます。
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上殿皮神経障害の概要
上殿皮神経(superior cluneal nerve:SCN)は、Th11-L4の後根神経から構成されています。
上殿皮神経は腸骨稜を乗り越える際に胸腰筋膜を4〜5本の神経枝が貫通し、殿部領域の感覚を支配しています。
そのため、胸腰筋膜に短縮や捻れが発生したり、神経損傷によって癒着が起こることにより、上殿皮神経が絞扼されて殿部痛が誘発されます。
報告によると、腰痛の主な原因がSCN障害であると判断できた症例は、腰痛患者全体の約2%といわれています。
上殿皮神経障害は画像検査などでは原因を特定できないため、しばしば見落とされやすい傾向にあります。
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障害を検査する方法
上殿皮神経は胸腰筋膜を正中から7-8㎝のところで貫通しており、中間枝や外側枝ほど上方の筋膜を貫通しています。
そのため、殿部上方の外側を中心に知覚支配しており、そのあたりを圧迫することで痛みが増悪します。
基本的に痛みは神経支配領域のみであり、坐骨神経痛のように下肢に放散することはありません。
神経麻痺であるため、可能であるなら上殿皮神経にブロック注射を実施し、症状の改善が認められるかも確かめていきます。
リハビリテーション
痛みは殿部上方の外側を中心に現れ、圧迫することで痛みが増悪します。
ただし、前述したように絞扼を受けているのは筋膜を貫通しているところなので、殿部をいくらマッサージしても痛みはとれません。
重要なのは腰部の後方筋膜をやわらかくすることであり、上殿皮神経の絞扼を改善させることにあります。
方法としては、患者にはベッド上で側臥位をとっていただき、検査者は脊柱起立筋群に手を当てて圧を加えます。
その状態から上下左右と斜めといった具合に筋膜を伸ばしていき、緩むのを感じられるまでマッサージを加えていきます。
数回ほど治療して痛みが自制内となってきたら、必要に応じてストレッチやテニスボールを使用した自己リリースなどを指導します。
観血的手術
保存的治療が奏功しない場合は外科治療の適応となり、圧迫を受けている神経の剥離を行います。
具体的には、局所麻酔下(または全身麻酔下)にて5㎝ほど皮膚を切開し、顕微鏡下で胸腰筋膜貫通部を中心に切開し、上殿皮神経を解放します。
局所麻酔下では、神経刺激装置を用いることで、数本ほどある神経のなかでどれが原因となっているかを見極めることができます。
そのため、無駄な神経切離を避けることができ、術後の後遺症を極力に防ぐことが可能となります。