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上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリ治療

上腕二頭筋長頭腱炎のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

上腕二頭筋長頭腱炎の概要

上腕二頭筋は2つの頭(起始)を持っており、肩甲骨の関節上結節に起始する部分を長頭、肩甲骨の烏口突起に起始する部分を短頭といいます。

上腕二頭筋は肘関節屈曲と前腕回外の動きに関与する筋肉であり、長頭は肩関節屈曲に、短頭は肩関節水平内転にも貢献します。

長頭のみに炎症が起きやすい理由ですが、長頭腱は小転子の上を滑車のように角度をなして走行しているため、摩擦を受けやすくなっています。

上腕二頭筋長頭炎1

また、長頭腱は関節包内に入り込んで、肩甲骨の関節窩に付着する関節唇に停止しています。

投球動作などで上腕二頭筋長頭腱に急激な負荷が加わると関節唇が剥離する場合があり、それをSLAP損傷と呼んでいます。

こちらも上腕二頭筋長頭に起因する痛みですが、上腕二頭筋長頭腱炎とは病態が異なりますので注意してください。

SLAP損傷1
SLAP損傷の図

上腕二頭筋長頭腱炎の症状としては、結節間溝部の圧痛と収縮時痛(ドアノブをひねる動作など)になります。

炎症が強い時期は、食べ物を口に運ぶ動作でも痛みが出現します。

筋肉が弱化してきた中年以降の男性に好発し、重いモノを持ち上げて運ぶ動作などを繰り返すことで損傷します。

そのため、仕事については必ず聴取しておくようにし、治療を進めていくうえで患部に負担がかからないように調整することが大切です。

基本的に保存療法にて治癒しますが、3カ月以上の保存療法に抵抗する難治例かつ著しい不全断裂(50%以上)を伴う症例に対しては、手術が適応される場合もあります。

上腕二頭筋長頭炎の検査法

1.ヤーガソンテスト
意義)上腕二頭筋長頭腱炎の判定
方法)患者は座位にて、肩関節軽度伸展位・肘関節90度屈曲位・前腕回内位に保持し、患者に前腕回外運動を指示し、検査者は運動を止めるように抵抗をかける
判定)肩関節前面(結節間溝)に痛みが生じた場合に陽性
2.スピードテスト
意義)上腕二頭筋長頭腱炎の判定
方法)患者は座位にて、両上肢を肩関節軽度屈曲位・肘関節伸展位・前腕回外位に保持し、患者にその位置で上肢を保持させ、検査者は肩関節伸展方向に抵抗をかける
判定)肩関節前面(結節間溝)に痛みが生じた場合に陽性

リハビリテーション

1.安静期(強い疼痛が伴う期間で約1〜2週間)
薬物療法 消炎鎮痛薬、ステロイド剤の注射
患部安静 生活指導、三角巾の使用
物理療法 アイスパック、電気刺激、超音波
2.回復期(疼痛が落ち着いてきた約2週間以降)
ストレッチ 胸椎・胸郭、円回内筋、撓側手根屈筋
運動療法 上腕二頭筋長頭の柔軟性向上、棘上筋の強化
生活指導 再発予防のための生活動作について指導
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炎症の沈静化

痛みは腱損傷に伴う炎症が原因であるため、治療の基本は安静にして損傷部位が治癒し、炎症が治まるのを待つことが第一です。

しかしながら、強い痛みは日常生活に支障をきたすことになるため、消炎鎮痛薬やステロイド注射などを用いて痛みの緩和を図ることになります。

上腕二頭筋腱炎のように炎症部位が明白である場合は、湿布などの外用消炎鎮痛薬を使用することがお勧めです。

ジクロフェナクナトリウムやインドメタシン、フェルビナクなどの消炎成分がありますが、市販薬の中ではジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレンEXテープなど)が最も鎮痛作用が強いです。

圧痛が認められる部位(結節間溝)に貼付することで痛みをやわらげることができます。

痛みや炎症が強い場合はステロイド注射が実施されますが、こちらは効果が高い反面に、腱を弱くしたり、回復を遅延させるような副作用があります。

薬物療法はあくまで痛みを抑えるための対症療法(根本的な解決手段ではない)であり、それで痛みがなくなったところで治ったわけではありません。

しっかりと炎症が治まるまでは安静を保ち、薬を使用しなくても問題がない状態まで改善することが大切です。

患部安静と物理療法

炎症にて痛みが生じている間は患部の安静が重要ですが、仕事をしている人などは難しい場合も少なくありません。

上腕二頭筋長頭は肩関節外旋位での屈曲運動で最も負荷が加わるため、物を持つ動作などでは手が開かないように指導が必要です。

なるべく痛みのない動きを身につけてもらい、今後の再発予防にも結びつけていくことがセラピストには求められます。

重度の場合は上腕二頭筋長頭腱へのストレスを最小限にするため、肘関節屈曲および前腕回外位にて固定します。

三角巾やアームホルダーを使用することでストレスを最小限に抑えられますが、生活にも大きく支障をきたすことになります。

炎症部位は触れると熱をおびていますので、冷やすことで痛みが楽になります。

痛みが楽になる間は定期的に使用するようにし、とくに仕事などの都合で安静が保てない患者は使用後のアイシングを徹底します。

電気刺激や超音波治療などは除痛効果を期待できますので、使用が可能な場合は併用してもよいです。

上腕二頭筋長頭の柔軟性向上

上腕二頭筋長頭腱への摩擦や伸張ストレスを軽減するには、上腕二頭筋自身の柔軟性が必要となります。

しかし、通常のストレッチングでは腱部に負荷が加わるため、あまり推奨できません。

なので、筋腹に直接的な伸張を加えるダイレクトストレッチングやストリッピングなどのマッサージが推奨されます。

ストリッピングは筋の起始から停止まで圧を加えた指を筋線維の方向に沿って滑らせていく方法ですが、ここでは筋腹のみに実施し、痛みがないようにして行います。

上腕二頭筋

肩甲上腕関節のモビライゼーション

上関節上腕靭帯や烏口上腕靭帯の柔軟性が低下すると関節窩面上での骨頭の回転が阻害され、長頭腱の活動が障害されてストレスが加わります。

そのため、肩関節にモビライゼーションを実施することにより、靱帯や軟部組織の柔軟性を確保しておくことが有用となります。

上腕二頭筋長頭腱の周囲組織1

棘上筋・棘下筋の筋力強化

上腕二頭筋は肘関節屈曲と前腕回外の主動作筋ですが、長頭は肩関節の挙上と骨頭の安定化にも寄与しています。

肩関節の挙上は三角筋や棘上筋などで行いますが、棘上筋腱が断裂している患者では、上腕二頭筋長頭の筋活動が増大する傾向にあります。

その場合、手のひらを上に向けて肩関節を屈曲させる代償動作が出現するので、棘上筋の機能低下については確認しておく必要があります。

棘上筋腱の断裂は棘下筋の上部線維に代償作用があるため、腱板損傷例には棘上筋と棘下筋のトレーニングを中心に指導します。

棘上筋の筋力トレーニング2
棘下筋の筋力トレーニング

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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