上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)のリハビリ治療

上腕骨内側上顆炎のリハビリ治療について解説していきます。

上腕骨内側上顆炎の概要

上腕骨内側上顆炎は、ゴルフをされている方々に多く発症することから『ゴルフ肘』とも呼ばれます。

似たような名前で「テニス肘」という症状がありますが、こちらは上腕骨外側上顆に疼痛が起きている状態になります。

上顆炎という名称ではありますが、実際には明確な炎症を伴っていないケースも多いです。

滑走不全のある筋・筋膜を鑑別

内側上顆に付着する筋肉は、①円回内筋、②橈側手根屈筋、③長掌筋、④尺側手根屈筋、⑤浅指屈筋の五つがあります。

これらの筋肉に滑走不全がある場合、前腕の回内、手関節の掌屈、手指の屈曲時などに痛みを発することになります。

各筋肉で主力となる動作は異なりますので、どの動作で痛みが起こるかを評価することで原因の筋肉を特定していきます。

ちなみに長掌筋は動作への貢献度が低い筋肉なので、ほとんど問題となりません。

疼痛動作 原因の筋肉
前腕回内 円回内筋,橈側手根屈筋
手関節橈屈 橈側手根屈筋
手関節尺屈 尺側手根屈筋
手関節掌屈 浅指屈筋,尺側手根屈筋
手指屈曲 浅指屈筋

日本整形外科学会の診断基準

  1. 抵抗性手関節掌屈運動で肘内側に疼痛が生じる
  2. 内側上顆の屈筋群腱起始部に最も強い圧痛がある
  3. 腕撓関節の障害など屈筋群起始部以外の障害によるものは除外する

重症度と復帰目安

1.軽度の場合
握力が健側の2/3以上
ゴルフ後や練習中にたまに痛む
復帰までは1-4週間
2.中等度の場合
握力が健側の2/3以下
練習中はいつも痛む、ドアノブをひねる動作でも痛む
復帰まで1ヶ月以上は要する
3.重度の場合
握力が健側の1/3以下
ゴルフクラブを握るだけで痛みが出る
復帰まで2ヶ月以上を要する

リハビリテーション

リハビリでは、上腕骨内側上顆に牽引ストレスを与えている原因を取り除くことが最も重要となります。

リリースの方法として、患者に背臥位をとっていただき、患側の前腕を回外位とします。

施術者は上腕骨内側上顆から尺骨を指先で近位にたどるようにし、滑走不全のある箇所を見つけたらマッサージをするようにリリースします。

在宅エクササイズとしてストレッチングも有効で、手関節掌屈筋はひとりでも伸ばしやすい筋肉なので、必要に応じて方法を指導します。

患者教育は問題となっている筋肉の過剰使用を避けることが目的なので、患者にどこが問題かを説明し、可能な範囲で使用を控えるように伝えます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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