腱板損傷によって肩関節の可動域に制限が生じた場合、それは上腕骨頭を正しい位置に保持できていない可能性が高いです。
ここでは、上腕骨頭の偏位に関わる筋肉とそれらが障害された場合に起こる状態について解説していきます。
上腕骨頭の偏位
上腕骨頭の偏移に大きく関わる筋肉として、①三角筋、②棘上筋、③棘下筋、④小円筋などがあります。
これらの筋肉の走行と関節構造を覚えることで、骨頭偏移についての理解が容易になります。
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腱板筋の広範囲損傷
上腕骨頭を関節窩に引き付ける腱板筋(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)が広範囲に損傷された場合、外転時に三角筋の収縮で骨頭が上方偏移します。
骨頭が上方偏位してしまうと肩が挙上してしまうため、うまく関節の軌道に乗ることができずに最終域までの外転が不可能となります。
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棘上筋の単独断裂
筋肉の走行から考えても、腱板筋の中で上腕骨頭の求心力に大きく関与しているのは棘上筋になります。
その棘上筋が単独断裂した場合、骨頭への求心力は大幅に低下しますが、その他の腱板筋の求心力により三角筋の上方偏移は防止可能です。
とくに棘下筋は棘上筋と密接に連結しているため、偏位を抑えるために最も鍛えるべき筋肉になります。
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三角筋の麻痺
上方へのベクトルを持つ三角筋に麻痺が生じた場合、上腕骨頭は下方に偏位してしまいます。
また、その状態で上腕骨頭を下方に偏位させる棘下筋や小円筋が収縮すると、下方偏移をさらに助長させてしまうことになります。
図には示していませんが、肩甲下筋も内旋とともに下方偏位を促すことになるため、外旋だけではなく内旋にも注意が必要です。
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上腕骨頭の前方偏位
もうひとつ多い状態が上腕骨頭の前方偏位です。
これは大胸筋の過緊張や肩関節後方関節包の狭小化、外旋筋群の過緊張、肩甲下筋の収縮不全などが原因として起こります。
なぜ後方に位置する棘下筋や小円筋の過緊張が原因になるかというと、骨頭が外旋させられると同時に骨頭は前方に滑るからです。
そのため、大胸筋や外旋筋群には十分なリラクセーションが求められます。
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