介護で役立つ褥瘡(床ずれ)を予防するためのポジショニング

ポジショニングの目的と基本

ポジショニングを行う際に注意すべきポイントは、大きく分けて**①圧の分散(褥瘡予防)**と、**②筋緊張の抑制(安楽の確保・拘縮予防)**の2つです。

褥瘡(床ずれ)は、単なる圧迫(圧縮応力)だけでなく、摩擦(引張応力)やずれ(剪断応力)といった力が複合的に作用し、局所の血流が低下・停止することで発生します 。一般的に、約200mmHgの圧迫が2時間加わると皮膚に壊死が生じるとされています 。 そのため、まずは基本的な安楽肢位(背臥位・左右側臥位の3パターン)を理解し、原則2時間ごとの体位変換を実施することが必須となります 。


圧迫されやすい部位

ポジショニング後は、圧迫されやすい骨突出部を触診して除圧を確認します。

  • 背臥位(仰向け): 後頭部、肩甲骨部、肘、仙骨部、踵部
  • 側臥位(横向き): 耳介部、肩峰(肩鎖関節部)、肋骨(側胸部)、大転子部、内果・外果(足関節内踝・外踝部)

各肢位のポジショニングのポイント

1) 背臥位のポジショニング

  • 身体のねじれをなくして正中位を保持します。
  • ベッドと身体の隙間にクッションを入れて圧を分散します。
  • 頭・肩甲骨・仙骨・踵部など、圧迫部位を重点的に除圧します。 (引用画像:すぐに使える拘縮のある人のケア)

背臥位のポジショニング|褥瘡予防

2) 側臥位のポジショニング

  • 側臥位は大転子や肩峰などの骨突出部の圧迫が強く、褥瘡リスクがやや高くなります。
  • 肩に痛みがある場合は、疼痛側を下にしないようにします。
  • 就寝時などの長時間のポジショニングでは、肩関節が過度に伸展した状態になると血流が乏しくなり、虚血状態(夜間痛の原因)を引き起こします。上腕骨(肘)の下にタオルやクッションを置き、肩関節と肘関節が軽度屈曲位になるよう抱え込ませると効果的です。

側臥位のポジショニング|褥瘡予防

3) 30度側臥位のポジショニング

  • 完全側臥位が困難なときに有効な姿勢です。
  • 背臥位で圧迫されやすい脊椎突起部や仙骨部の除圧を優先する場合に用います。

半側臥位のポジショニング|褥瘡予防


拘縮への対応と筋緊張の軽減

筋肉が縮んで緊張した状態(攣縮:スパズム)が長く続くと、局所が虚血状態に陥ります。すると発痛物質が産生され、その痛みがさらなる筋収縮を引き起こすという悪循環が生じ、最終的に組織が癒着・短縮して「拘縮」へと進行します。

1) 上肢や手指に屈曲拘縮がある場合

  • 胸を圧迫しないよう大きめのクッションを胸の前に置き、抱え込む姿勢をとらせます。
  • 強く握り込む手には包帯やタオルで作ったハンドロールを入れます。
    • ※大きすぎると逆に緊張が増すため、軽く握った状態になるようサイズを調整します。

拘縮が起こりやすい関節と短縮しやすい筋

順位 部位 制限方向 短縮しやすい筋
1 体幹 側屈・後屈・回旋・前屈 脊柱起立筋群
2 頚部 側屈・後屈・前屈・回旋 胸鎖乳突筋・斜角筋群
3 股関節 内旋・外転・伸展 梨状筋・内転筋群・腸腰筋
4 足関節 背屈 下腿三頭筋
5 手関節 掌屈 手関節背屈筋群
6 肩関節 外転・屈曲・外旋 大胸筋・大円筋・小円筋
7 肘関節 伸展 上腕二頭筋
8 膝関節 伸展 ハムストリングス

2) 筋緊張を軽減させる工夫

高齢者や感覚障害のある方は、少しでも不安定さを感じると全身に力が入り、筋緊張が増してしまいます。姿勢やクッションの使い方次第で筋緊張は大きく変化するため、以下の点に注意します。

  • 力が抜けやすい体勢を探す
  • 安心してリラックスできる環境を整える これらを意識し、その人に合わせたポジショニングを行うことが、筋の過度な緊張を防ぎ、拘縮を予防する上で最も大切です。

Q&A

Q. ポジショニングの目的は?
A. 圧を分散して褥瘡を予防することと、筋緊張を緩和して安楽な姿勢を保つ(拘縮を予防する)ことです。

Q. 体位変換はどのくらいの間隔で行う?
A. 一般的に約200mmHgの圧力が2時間加わると組織の壊死が生じるとされているため、原則2時間ごとに行い、圧迫部位を除圧します 。

Q. 背臥位と側臥位で圧迫されやすい部位は?
A. 背臥位では後頭部・肩甲骨・肘・仙骨・踵、側臥位では耳介・肩峰(肩)・肋骨・大転子・内果・外踝などです 。


最終更新:2026-07-15