体幹を前屈した際に、腰痛が起こる原因について解説していきます。
筋筋膜の硬結
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体幹前屈時の腰痛において、最も重要な筋膜がSBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)になります。
この筋膜の路線のどこかに問題(硬結)が生じると、腰部に痛みとして問題を起こします。
私の経験上だと、腰部脊柱起立筋(腰多裂筋含む)やアキレス腱移行部、仙結節靭帯に問題が生じやすい傾向にあります。
問題部位には必ず関連痛が出現し、例えば、アキレス腱移行部を押圧することで腰痛を再現することができます。
治療では硬くなった筋膜を緩めることが大切で、そのためには硬結部位を探してリリースすることが必要になります。
腰多裂筋の拘縮
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多裂筋は脊椎深層を走行している筋肉で、頸椎から骨盤まで伸びている非常に長い筋肉になります。
頸椎・胸椎・腰椎でそれぞれ作用が異なることから、部位ごとに頚多裂筋、胸多裂筋、腰多裂筋と分ける場合もあります。
とくに下位腰椎では浅層の脊柱起立筋よりも腰多裂筋のほうが発達しているため、腰椎の拘縮に関しては多裂筋のほうが重要です。
腰部の中でもL5/S椎間関節は拘縮が起こりやすく、拘縮すると隣接関節のL4/5や仙腸関節に過剰な可動性が求められ、椎間板障害や仙腸関節障害といった問題が生じます。
また、腰多裂筋自体も立位前屈で筋内圧が上昇することが報告されており、血流障害に伴う腰痛(腰部コンパートメント症候群)を起こす原因となりえます。
大殿筋の拘縮
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大殿筋の拘縮は、股関節の屈曲制限と骨盤の前傾制限を起こします。
そのため、隣接関節である腰椎に過剰な可動性が求められることになり、椎間板障害を生じる原因となります。
また、大殿筋は仙腸関節付近でS1〜S2に付着する多裂筋と筋膜性に結合するため、大殿筋の伸張刺激は多裂筋にも影響します。
椎間板障害
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腰多裂筋や大殿筋の拘縮が腰椎の過剰な可動性に繋がることは前述しましたが、屈曲時の負担を受け止める組織が椎間板です。
とくにL5/S椎間関節が拘縮しやすいために、隣接関節であるL4/5椎間関節の椎間板は負担が増加する傾向にあります。
その証拠に、椎間板症や椎間板ヘルニアで最も多いのはL4/5間であり、拘縮を取り除くことが重要であることが推察されます。
腰椎すべり症
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ここまでにL5/S椎間関節が拘縮しやすいために、隣接関節であるL4/5椎間関節の屈曲が増大することは前述しました。
その際に、過剰な動きを周囲組織が受け止めきれなかった場合は、上位の椎体がすべることになります。
腰椎すべり症のほとんどは前方すべりであり、すべり症はL4に多いことからも関連性が推察されます。
基本的にすべり自体が痛みの原因となるわけではなく、すべりによる周囲組織の損傷や脊柱管狭窄によって、痛みや神経症状が生じ、そこではじめて問題となります。
治療方法としては、すべりが発生している関節の隣接関節の可動性を確保することで、症状の進行を予防していきます。