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効果的な治療法は過去の経験則を参考にする

整形外科クリニックで働きだして10ヶ月ほど経ちましたが、やっぱりリハビリは外来が面白いなと今さらながらに感じています。

ほとんどの患者は、肩・膝・腰が悪くて治療を受けに来ていますが、教科書で勉強したことを当てはめても治らないことばかりです。

最近は少しずつパターンが見えてきたので、そこを中心にアプローチすることで改善率が高まってきました。

そこでようやく気付いたのですが、従来より推奨されている方法をやることが結果的には良くなる場合が多いようです。

しかしながら、その方法の意味を正しく理解して、しっかりと前準備をやらないことには効果が現れません。

今回はそのことについて、代表的な運動方法を例に挙げながら、わかりやすく解説していこうと思います。

膝の痛みの治療:クアドセッティング

まずは膝関節の治療についてですが、どの本でも推奨されている方法はクアドセッティングだと思います。

この方法は膝の痛みがある患者でも簡単に大腿四頭筋(とくに内側広筋)を強化できるため、あらゆる場面で効果を発揮します。

しかしながら、いくら在宅指導をしてクアドセッティングをさせても、ほとんどの患者は膝の痛みが減りません。

なぜなら、膝蓋骨がしっかりと動くための前準備をしていないため、本来の目的をほとんど果たしていないからです。

以前の記事にも書いたので、ここではサラッとしか書きませんが、クアドセッティングの目的はそもそも筋力強化ではありません。

膝蓋骨の動きが悪いことで膝蓋下脂肪体が挟み込まれたり、強い摩擦を受けることで膝関節に痛みは起こります。

なので、しっかりと膝蓋骨が動かないことには痛みが解消しませんので、それを効果的に引き出すのがクアドセッティングの役割です。

しかしながら、膝関節が痛いヒトでは膝蓋骨の動きが悪いため、自主的に運動をしてもほとんど膝蓋骨が動きません。

そこを解消するためには徒手的に膝蓋下脂肪体をほぐしたり、周囲の膝蓋支帯の滑りを良くしておくことが重要となります。

ここまでの前準備をして、はじめて効果を発揮できますので、治療法の正しい意味を理解していないことには効果は出せないといえます。

腰の痛みの治療:ウィリアムズ体操

次に腰部の治療についてですが、昔から推奨されている方法としてウィリアムズの腰痛体操があります。

一昔前は腰痛の原因は反り腰(腰椎の過度な前弯)にあると考えられていたので、腰椎を屈曲させる方向への運動を主としています。

具体的な例としては、背臥位で下肢を屈曲させていき、そのままお尻を上げて腰が丸まるような動きなどが挙げられます。

腰痛患者では後方筋膜や大腰筋が硬くなっているケースが非常に多いので、そのような患者には効果的な治療法といえます。

しかしながら、ただウィリアムズの腰痛体操を指導したとしても、実際はほとんど効果が出ないかと思います。

理由はいくつかあるのですが、まずは後方筋膜が硬い状態でストレッチングをしても、効率的に伸張することができないからです。

はじめに滑りが悪くなっている部分を徒手的にほぐしておかないことには、腰痛体操をして伸ばしたところで無意味です。

坐骨部が最も滑走性が低下しやすい箇所なので、そのあたりから腰部までの範囲で滑りが悪い場所を集中的にマッサージしていきます。

十分にほぐれたところでストレッチングを加えることにより、後方筋膜をしっかりと伸ばすことが可能となります。

大腰筋が硬くなっているケースでは、しっかりとリラクゼーションを実施してからでないと腰椎の屈曲が現れません。

そのため、後方筋膜と大腰筋にアプローチしてからウィリアムズの腰痛体操を行うことで、はじめて効果を発揮できるといえます。

肩の痛みの治療:コッドマン体操

最後に肩関節の治療についてですが、最も有名な方法としてはコッドマン体操(振り子運動)があります。

最近では積極的にあまり実施されていないかもしれませんが、対象者を選ぶことで、わたしは十分に効果が認められると思います。

肩関節は他の関節と比較して炎症が非常に起こりやすい部位であり、それが長期にわたって現れるのが肩関節周囲炎です。

炎症のある関節を早期に沈静化させようとした場合、温熱療法と自動運動が最も効果的であるといえます。

コッドマン体操は振り子の原理を利用しているので、あまり筋収縮は起こさないようにした方法かもしれません。

しかしながら、血流を良くするためには痛みのない範囲で筋肉を働かせたほうがいいので、この部分は患者に応じた工夫が必要です。

運動前にはお風呂や貼るカイロなどで身体を温めておき、その後に動かしていくことが最も効果的となります。

おそらくほとんどのセラピストが「肩は治療が難しい」と考えているかと思いますが、それは炎症が治らないからだと思います。

炎症のある関節をいくら動かしたとしても、リハビリによる痛みの緩和効果はほとんど認められません。

そのことを理解しているだけで治療の考え方は変わりますので、治らないと思い詰めることもなくなるはずです。

おわりに

代表的な運動方法をひとつだけ例に挙げて解説してきましたが、それぞれの部位で考え方が異なるのは面白い部分だと思います。

腰の治療においては多くの腰痛体操が存在するのに対して、膝関節や肩関節ではストレッチングを軸とした有名な体操は存在しません。

膝の治療においては筋収縮による滑走性を改善させる運動が推奨されているのに対して、腰部や肩関節にはそのような運動はありません。

これは部位ごとに痛みの原因(多発しやすい原因)が異なるからであり、そこを理解しておくと、どうしてその運動が広まったかが理解できます。

ここで紹介したのはあくまで一例なので、他の方法についてもどうして広まったのかを考えてみると面白いと思いますよ。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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