坐骨神経痛と間違えやすい5疾患の見分け方

要約

  • お尻〜脚の痛み・しびれ=必ずしも坐骨神経痛(椎間板ヘルニア)とは限らない

  • よく混同されるのは:①椎間板ヘルニア ②腰部脊柱管狭窄症 ③梨状筋症候群 ④仙腸関節障害 ⑤股関節症

  • レッドフラッグ(急激な筋力低下、排尿排便障害、発熱・広範な麻痺)は至急受診

  • セルフチェック→受診科の目安初動のセルフケアまでをまとめる


症状の大枠をつかむ(まず3問)

  1. どの動作で増悪? 前屈・座位/伸展・立位/長距離歩行/外旋動作など

  2. 痛みの走行は? 腰→臀部→大腿後面→下腿外側→足部のどこまでか

  3. 神経症状は? しびれ/感覚低下/力が入らない/つまずく など


5疾患のクイック判別表(セルフ向け)

疾患 悪化しやすい姿勢/動作 和らぐ姿勢 しびれの出やすい範囲 目安テスト(自宅版)
① 椎間板ヘルニア 前屈・座位長時間、くしゃみ 仰臥位、反らしは悪化することも 大腿後面〜下腿外側・足趾 片脚で膝伸ばして脚を上げると臀部〜脚に鋭い痛み(簡易SLR)
② 脊柱管狭窄症 立位・歩行で悪化、休むと改善(間欠性跛行) 前かがみで軽快(自転車は長く漕げる) 両下肢のしびれ・だるさ 前屈で楽、反らすとすぐつらい
③ 梨状筋症候群 長時間座位、外旋ストレッチで痛む 歩くと楽なことも 臀部中心〜大腿後面 仰向けで膝を外側へ倒すと臀部深部に痛み(簡易FAIR)
④ 仙腸関節障害 立ち上がり・片脚荷重・寝返り 骨盤帯を押さえると楽 片側の臀部〜大腿後外側 片膝を抱え反対側に倒すと骨盤後方に痛み(簡易Thigh Thrust風)
⑤ 変形性股関節症 靴下履き・和式動作で股関節前/鼠径部が痛い 体重をかけないと楽 鼠径部〜大腿前内側 股関節を内旋させると痛み(簡易FADIR)

注意:上表はセルフスクリーニング用の傾向。確定診断ではありません。痛みが強い/長引く/進行する場合は医療機関へ。


各疾患をもう一歩深掘り

① 腰椎椎間板ヘルニア

  • 典型:若年〜中年、前屈・座位で増悪。咳・くしゃみで響く。

  • 伴いやすい:片側の坐骨神経様疼痛、足趾のしびれ/脱力。

  • 初動:無理な前屈反復を避け、短時間の安静+痛み許容内の歩行

② 腰部脊柱管狭窄症

  • 典型:中高年、歩くと悪化→前かがみ休憩で改善(間欠性跛行)

  • 両側症状やしびれ・脱力の広がりがポイント。

  • 初動:前屈位で休む、長時間の反り姿勢を避ける。

③ 梨状筋症候群(深層外旋筋群の過緊張/圧迫)

  • 典型:座位長時間、外旋ストレッチで臀部深部がうずく。

  • しびれは臀部中心〜大腿後面に限局しやすい

  • 初動:座面の硬さ・財布の位置を見直し、短時間ごとに立つ

④ 仙腸関節障害

  • 典型:片脚荷重・段差・寝返りで骨盤後方の一点が痛む。

  • 触ると後上腸骨棘(PSIS)周囲が局所的にズキッ。

  • 初動:骨盤ベルトやタオルで軽くサポート、ねじり動作を一時回避

⑤ 変形性股関節症

  • 典型:鼠径部の痛み、和式/靴下/車の乗降でつらい。

  • 可動域:内旋・屈曲が制限されやすい。

  • 初動:体重管理・段差回避・杖の検討(反対手で持つ)。


レッドフラッグ(即受診/救急も検討)

  • 排尿・排便障害、会陰部のしびれ(馬尾症候群が疑われる)

  • 突然の著明な筋力低下、発熱と腰痛の同時発症、がん・ステロイド長期使用・外傷直後

  • 夜間安静時も強い痛みが続く、進行性の神経症状


受診のしかた(どこへ行く?)

  • まず整形外科:レントゲン/必要に応じMRI、神経所見

  • リハ・理学療法:痛みの増悪因子を特定→動作設計負荷管理

  • 痛みが強い急性期は薬物・神経ブロックの併用を検討(医師判断)


初動のセルフケア(医療に代わるものではありません)

  • 姿勢・時間管理:座位は30–40分で一度立つ/立位作業は台で少し前傾に逃がす

  • 負荷の線引き:痛みNRSが2〜3/10で収まる範囲に調整

  • 軽運動

    • ヘルニア傾向:仰向け膝抱え軽い揺らし30秒×3

    • 狭窄傾向:座位前屈ダングリング20–30秒×3

    • 梨状筋傾向:小振りの外旋内旋スイング各20回

    • 仙腸関節傾向:骨盤ニュートラルでのブリッジ小さめ10回

    • 股関節症傾向:可動域内のヒールスライド10回

※痛みが悪化する場合は中止し、専門家へ。


よくある質問(FAQ)

Q1. 坐骨神経痛=ヘルニアですか?
A. 坐骨神経様の症状をまとめた症候名で、原因は複数あります。

Q2. しびれが少しあるが我慢してよい?
A. 進行する、広がる、力が入らないは受診推奨。レッドフラッグがあれば即受診。

Q3. 画像検査は必須?
A. 症状と神経学的所見で方針が決まることも。医師が必要と判断すればMRI等を行います。

Q4. 仕事中にできる対策は?
A. 座面の高さ調整、前傾作業の合間に前屈休息、長財布やスマホをお尻の下に置かないなど。


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