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変形性股関節症のリハビリ治療

変形性股関節症(股OA)のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

変形性股関節症の概要

変形性股関節症

変形性股関節症は、その名の通りに股関節に変形をきたしている総称です。具体的には、関節軟骨が磨耗して関節腔が狭小化した状態を指します。

原因が不明な一次性と、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などの明かな基礎疾患や構造異常を有する二次性に分類されます。

日本人の98%は二次性の変形性股関節症であり、基礎疾患は先天性股関節脱臼が42%、臼蓋形成不全が41%と大半を占めています。

従来は一次性と考えられていた患者でも、寛骨臼と大腿骨頸部の衝突による関節唇損傷(大腿骨寛骨臼衝突症候群:FAI)が起きている可能性が高いことが指摘されています。

有病率は1.0-4.3%(男性:0-2.0%、女性:2.0-7.5%)であり、先天的な異常を持つ女性に好発します。

発症年齢は40-50歳に多いですが、摩耗性であるため、加齢に伴って有病率は増加していきます。

変形性関節症はあらゆる部位で起こりますが、その中でも股関節は4番目に多い関節とされています。

順位 部位
1 膝関節
2 肘関節
3 第1中足趾節関節
4 股関節
5 肩関節

変形性股関節の経過

変形の初期は、激しい運動後に違和感や疲れが残る程度ですが、摩耗が進むと炎症症状が強く発現するため、次第に痛みとして認識するようになります。

実際に病院を受診し始めるのは痛みが出現する時期で、主訴としては、立ち上がり時や歩き始めに脚の付け根(鼡径部)が痛いと訴える場合が多いです。

この時点で正しい対応がとられず、炎症症状が悪化していくと軟骨が摩耗して関節腔が狭小化し、変形が進行していきます。

進行すると強度の炎症のために安静時痛や夜間時痛が起こり、脚を引きずるような跛行が出現します。

日常生活では階段昇降や靴下の着脱が難しくなり、台所などの立ち仕事にも支障をきたすようになります。

 ①前期股関節症 ②初期股関節症 
前股関節症 初期股関節症
③進行期股関節症 ④末期股関節症
進行期股関節症 末期股関節症

股関節はなぜ変形するのか

変形性股関節症が発症する患者は先天的な臼蓋不全が根底にある場合が多く、関節の受け皿(関節窩)が浅い状態になっています。

受け皿が浅いと大腿骨の骨頭は不安定となり、しっかりと力を発揮できなくなったり、一カ所に荷重が集中するようになります。

荷重が集中している場所は表層の軟骨が削られていき、次第に深層の骨部分が衝撃に耐えられるように骨硬化していきます。

また、浅い関節を安定化させるために骨棘を形成して関節窩を広げたり、大腿骨頭を扁平化させて接する部分を増やしていきます。

症状が急激に進行すると軟骨損傷部から関節液が骨に侵入し、骨が溶けてしまって穴があき、骨嚢胞が出現します。

骨嚢胞は例外ですが、骨棘の形成や骨頭の扁平化は不安定な関節を安定化させるために修復した結果ともいえます。

もちろん変形によって問題となることは多く、関節を押し込めて安定化させたせいで関節の動きは制限されます。

さらには股関節周囲組織の走行が変化し、筋膜や腱が擦れて弾撥音や軋轢音などが出現するようになります。

そのため、炎症症状はなるべく早期に沈静化し、変形を進行させすぎないように注意しておくことが大切です。

疼痛発生のメカニズム

痛みが発生する理由について、関節軟骨がすり減って、骨同士がぶつかっているから痛いのだと説明している場合がありますが、これは正しくありません。

まず、関節軟骨には神経は存在せず、関節軟骨の下にある骨(緻密質)にも神経は存在しません。神経がないということは痛みを感じないということです。

骨は痛くないはずなのに骨折したら痛みが出る理由として、骨の骨幹部(関節面以外)は神経を豊富に含んだ膜(骨膜)で覆われており、そこが損傷されることで激痛が起こります。

骨膜で感じる痛みは人体で最大レベルの痛みともいわれており、それが結果的に骨は痛いという認識につながっています。

骨膜は関節面の手前で関節包に移行してしまうので、骨の関節面には骨膜がなく、痛みを感じる神経はないのです。

しかし、骨膜の延長組織である関節包は骨膜同様に神経を含んでいるため、関節包が刺激されることで痛みが生じます。

これらの理由から、実際に痛みを感じているのは関節包や関節周囲の組織(筋肉や靭帯)であり、それらが刺激を受けて痛みは起こります。

また、よく説明される原因として「骨棘があるから痛い」とする内容ですが、この表現もあまり正しくありません。

基本的に骨棘は関節窩を広げるために作られており、関節を安定化させるために働いています。

そのため、骨棘が悪さをしている場合は実はそれほど多くなく、骨棘があるから痛いというのは間違いの場合が多いのです。

なぜ立ち上がるときに痛いのか

変形性股関節症の症状として、立ち上がり時や歩き始めに痛みを訴えるケースが多く、これをスタート・ペインと呼びます。

なぜ運動開始初期に痛みが出現するかですが、これは関節内を満たしている滑液が循環しておらず、クッション性が失われているために起こります。

循環が滞っている理由としては、運動量の減少によって関節の動きが少ないことや、関節包に短縮が生じていることが挙げられます。

そのため、動き出す前に股関節をブラブラと動かして循環をよくすることで、動き出し始めの痛みを軽減することが期待できます。

スタート・ペインに関しては全ての関節で起こる可能性があり、とくに膝関節では頻繁に認められる症状になります。

部位別の疼痛と原因

股関節の痛みは主に、①太ももの付け根の前面(鼠径部)、②大転子後方の殿部、③大転子がある股関節側面に現れます。

鼠径部の痛みは膝関節が外向き(大腿骨外旋,骨頭前方偏位)にある状態の患者に現れやすく、前方偏移すると前方の鼠径部にある前関節包と内転筋群が強制的に伸張されることで痛みを生じます。

変形性股関節症では立位姿勢において股関節外転筋(中殿筋)による骨盤支持が難しいため、股関節内転筋群の収縮により骨盤を支持します。

その状態を続けることで内転筋群の攣縮(過緊張)が生じ、結果的に股関節の伸展・外転・外旋の関節可動域が制限を受けることになります。

殿部の痛みは膝関節が内向き(大腿骨内旋,骨頭後方偏移)にある状態の患者に現れやすく、後方偏移すると骨頭が後方にある関節窩を強く圧迫し、さらに後方に位置する外旋筋群が強制的に伸張されることで痛みを起こします。

股関節側面(大転子)の痛みは股関節に内転拘縮がある状態の患者に現れやすく、その状態は大転子に付着する中殿筋や小殿筋に伸張痛を起こします。

鼠径部や殿部の疼痛と比較したら、ある程度に変形が進行している患者で訴えるケースが多い部位です。

画像検査による診断

変形性股関節症の診断は、単純X線写真(レントゲン写真)のみで可能です。股関節の正面像と側面像(軸写像)を撮影して診断します。

確認すべきポイントは6つで、①関節裂隙の狭小化、②骨硬化、③骨棘、④骨嚢胞、⑤骨頭の扁平化、⑥骨萎縮をみます。その際に、痛みのない対側と比較することが重要です。

病期の分類においては、疼痛や関節可動域を含めて判定していきます。

病期 状態
前期 疼痛はあっても関節裂隙の狭小化はない
初期 関節裂隙の狭小化がある
進行期 関節裂隙の狭小化は著しく、骨硬化や骨嚢胞がある
末期 関節裂隙の狭小化は消失、骨頭は扁平化、関節可動域は著しく制限

臼蓋形成不全や骨頭変形などの解剖学的異常はあっても、痛みや関節裂隙の狭小化がない場合は変形性股関節症の診断とはなりません。

また、近年は関節裂隙の狭小化がない前期症状に、大腿骨頭の肥厚や寛骨臼の過被覆による股関節インピンジメントが痛みの原因の多くを占めていることが指摘されています。

病期分類はあくまで参考程度であり、手術の適応については疼痛の強さや日常生活動作の障害度で判断されます。

手術療法(人工股関節全置換術)

手術療法では、関節温存手術と関節置換手術が適応されます。

関節温存手術とは、骨を切って整えることにより、股関節の形や負荷のかかる方向を改善させる手術になります。

具体的な方法として、寛骨臼回転骨切除、骨盤骨切り術、内反骨切除、外反骨切除などがあります。

関節置換手術では、股関節の軟骨を切除して関節を固定する股関節固定術や、人工の寛骨臼と大腿骨頭に置換する人工股関節全置換術があります。

人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)の寿命は約20年で、再手術(再置換術)の困難さを考慮して適応は60歳以上とされています。

しかし、日常生活における障害の程度によっては、40歳以上で他に方法がない場合に限り、例外的に適応となる場合もあります。

人工股関節全置換術

THAは合併症の頻度も高いため、それらのリスクを理解したうえで手術を受けるかどうかは決めることが大切です。

合併症 発生率
深部静脈血栓症 20-30%
脱臼(再置換術後) 5-15%
脱臼(初回) 1-5%
術中大腿骨折 5%
神経障害 1%
深部感染 0.2-1.0%
致死性肺血栓塞栓症 0.5%未満

リハビリテーション

変形性股関節症の保存療法では、生活指導や薬物療法、温熱療法、運動療法が主なアプローチ手段になります。

運動療法を実施する上で、まずは痛みや機能障害の原因がどこにあるかを評価してから介入することが重要です。

以下にそれぞれのアプローチ方法について解説していきます。

関節包の炎症

炎症とは損傷した組織を修復するための作業のことで、①熱感、②疼痛、③腫脹、④発赤といった四大徴候が出現します。

炎症が起きている関節(組織)は安静時痛が起きたり、疼痛閾値の低下によって弱い刺激でも痛みを訴えることになります。

痛みが起きる理由は、組織が損傷しているからこれ以上の負担をかけてはいけないといった合図であり、生体の正常な防御反応です。

この時期に痛みを無視して関節に負担をかけ続けると、修復が失敗したり、炎症が長引いて関節が変形したりします。

関節の変形をできる限りに抑えて炎症を消失させるためには、患部に負担をかけすぎないことと、関節軟骨に栄養を与えることが必要です。

股関節に炎症が起きる原因のほとんどは、関節軟骨が摩耗して破片が関節内に浮遊し、それが滑膜を刺激することで起こります。

摩耗した関節軟骨を修復するためには、股関節のミルキングが必要であり、そのための効果的な方法が貧乏ゆすり(ジグリング)です。

ジグリングは患部である股関節に負担をかけることなく、関節液循環させることで栄養を行き渡らせ、効率的に修復を促せます。

関節包の短縮

股関節の痛みで関節包の関与が大きいことは前述しましたが、その中でも関節包のゆがみや短縮といった状態が悪影響を与えている場合は多いです。

では、なぜ関節包が短縮するかというと、そこには前駆症状として関節包の炎症が起きていることに由来します。

炎症の徴候として腫脹が起こりますが、治癒するにつれて徐々に腫れは減っていき、最終的にはやや縮んだ状態で治癒します。

それを瘢痕拘縮といい、関節包が短縮した状態となっています。短縮すると骨頭が動く際に本来の軌道から外れ、動きが制限したり軋轢音が置きます。

関節包には神経が多く存在しているため、軌道が変化することで挟まれたり、短くなっている部分が無理に伸ばされることで痛みが起こります。

股関節はその構造から前方の関節包が短縮しやすく、股関節の伸展や内転、内旋といった動作が制限されやすくなります。

関節包をストレッチするためには関節モビライゼーションを加えたり、骨頭を引き出す方向への運動を行うように指導します。

一般的に短縮した関節包を伸ばすと痛みが楽になりますが、炎症が存在していると痛みを訴えることになります。

そのため、関節包をストレッチするのは炎症が落ち着いてからとし、それまでは無理な運動をせずに治癒を待つことが大切です。

股関節周囲筋の攣縮

炎症が強い時期は股関節周囲の筋肉が防御性収縮に働いており、関節を動かして損傷部に負担が加わらないように制動しています。

通常は炎症が落ち着くと同時に緊張も落ち着いてくるのですが、痛みの経過が長いと治癒後も周囲筋に過度な緊張(攣縮)が残存します。

その場合は問題のある筋肉のリラクゼーションを図ることで、痛みを即時的に緩和することが可能となります。

注意点としては、炎症が残存している時期に無理やりに緊張を緩めると、損傷部の負担が増してしまい、痛みを強めてしまう場合があります。

そのため、関節包の短縮と同様に炎症が落ち着いてから積極的にアプローチするようにしていきます。

股関節周囲筋の筋力強化

股関節痛がある患者に対しては、積極的な筋力トレーニングが逆効果となる場合は多く、現在ではあまり推奨されていません。

理由としては、リハビリを受けに来られる患者の大半は痛みがあるため、その状態で筋トレをしても本来の出力が発揮できません。

また、強い筋収縮は損傷している組織への負荷を高めることが多く、痛みを悪化させることにつながりやすいです。

炎症や疼痛さえ消失したら運動量が向上し、自然と筋力は回復してきますので、まずはなによりも炎症や痛みの軽減が重要です。

それらの問題が解決してから必要に応じて筋力強化は行うようにし、高負荷や高頻度での運動はなるべく避けるように注意します。

ちなみに、CT画像を用いて股OA患者の股関節周囲筋の萎縮度合いを評価した研究では、大殿筋、中殿筋、小殿筋の順に萎縮率が大きかったことが報告されています。

また、末期股関節症の患者では、筋萎縮は体幹筋にまで及ぶことがわかっており、体幹へのアプローチの必要性が指摘されています。

歩行補助具を使用した免荷歩行

炎症を緩和するためには患部の安静が第一であるため、痛みがある場合は歩行補助具を利用した免荷歩行を推奨します。

以下に、代表的な歩行補助具と免荷の割合について記載します。なお、歩行器はつま先のみを接地した場合になります。

方法 免荷
歩行器 80%
松葉杖 67%
ロフストランド杖 33%
Q杖(四点杖) 30%
T杖(一本杖) 25%

若い人では杖の使用に抵抗があるかと思いますが、ノルディックポールなどは健康目的で使用している人もいるので抵抗感も少ないかと思います。

また、歩行補助具とともに大切なのが一日の歩行量です。どれだけ免荷していても、歩く量が多すぎると膝関節の負担は増してしまいます。

股関節の疲労感や違和感が出現した時点で量が多すぎるということなので、運動後や翌日に症状が出ない範囲で実施していきます。

装具を使用したアライメント矯正

股OAに対する装具療法の目的としては、①免荷、②荷重部位の変位、③脚長差の補正などがあります。

免荷に関しては大がかりな装具が必要となるために実用的ではなく、荷重部位の変位に関してもあまり功を奏さない場合が多いです。

脚長差に関しては2.5㎝までは調整する必要はないとされており、それ以上では靴底にフレアなどを使用して対応します。

異常歩行の種類と特徴

変形性股関節症に合併する異常歩行の多くは、筋萎縮が起こりやすい大殿筋や中殿筋の弱化、関節可動域の制限によって起こります。

異常歩行が持続すると新たな障害などを引き起こす原因にもなるため、できる限りに矯正するようにアプローチしていきます。

変形性股関節症で起こりやすい跛行に、トレンデレンブルグ歩行とデュシェンヌ歩行があります。これらの跛行は、股関節外転筋が弱化することで起こります。

トレンデレンブルグ歩行では、中殿筋の収縮が不十分となり、骨盤を水平の位置に保持できないために、立脚期に反対側の骨盤が下がります。

変形性股関節症|トレンデレンブルグ歩行

デュシェンヌ歩行では、立脚期に体幹を側屈させることで、弱化している中殿筋にかかる負荷を逃がすようにします。

中殿筋はその重要性に対して廃用性萎縮が起こりやすい筋肉であるため、筋力低下が起こらないように鍛えておくことが大切です。

これらの異常歩行は内転筋の過緊張や拘縮などの影響も受けるため、場合によっては筋力以外にアプローチすることも必要となります。

変形性股関節症|デュシェンヌ歩行

股関節屈曲位歩行では、大殿筋の弱化および可動域制限にて股関節伸展位に誘導できず、腰椎前弯と骨盤前傾にて代償し、お尻が突き出た姿勢となります。

股関節屈曲位歩行

リハビリで悪化する恐れ

メルボルン大学の研究では、痛みを伴う変形性股関節症成人患者への理学療法は、痛みや機能性の改善には結びつかないことが示されました。

また、未実施群と比較して有害事象の頻度が若干高く、リハビリの有益性について疑問を呈する結果となっています。(JAMA誌2014年5月21日号掲載)

私もこれまでの臨床で何度か股OAを担当する機会がありましたが、重症例に関しては関節可動域の改善や異常歩行の修正は困難でした。

おそらく、無理矢理に機能面の改善を図ろうとした場合に、かえって悪影響を与える機会のほうが多いことが理由だと推察されます。

前述したように、股OAに対するリハビリの目的は疼痛(炎症)の消失と生活レベルの向上です。それは重症例ほど当てはまります。

どれだけ関節が変形していても関節自体に神経はありませんので、炎症コントロールと周囲筋のリラクゼーションを図ることで疼痛は軽減できます。

そこから炎症を悪化させない範囲で活動量を調節し、生活レベルを上げていくことで、重症例でも十分にリハビリの効果は発揮できるはずです。

國津秀治さんの股関節ブログ

股関節の痛みについて特化したブログを運営している「股関節の痛みの原因を治療する」というサイトは療法士なら必見のサイトです。

図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)という本を執筆しているPTなので、その内容も確かなものです。

股関節については、かなり理解していないと思うような結果が出せず、反対に悪化させてしまうリスクが高い疾患です。

そのため、國津さんの運営しているサイトで知識を深めていくことをお勧めします。

國津秀治のブログ/股関節理学療法士

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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