変形性膝関節症のリハビリ治療

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変形性膝関節症(knee osteoarthritis:膝OA)のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

変形性膝関節症の概要

膝関節の基本構造

変形性膝関節症を簡単に説明すると、膝の関節軟骨が磨り減って、大腿骨と脛骨の隙間である関節腔が狭くなった状態を意味します。

膝関節のほとんどは内側の軟骨が摩耗していき、いわゆるO脚(内反変形)が進行していくことになります。

膝関節の内反変形には、歩行時のラテラルスラストが関与しています。

変形を助長させる原因

ラテラルスラスト

ラテラルスラストとは、歩行時の初期接地から荷重応答期にかけて急激な膝関節の内反動揺が起こる現象を意味しています。

その状態で歩き続けると膝関節内側に負担が集中し、内側の関節軟骨や半月板が摩耗していき、結果的に膝関節の内反変形を引き起こします。

ラテラルスラストはルーズタイプ(大腿骨内旋+後足部外反)に発生しやすい傾向にあります。

単純に足部が外反するだけでは膝関節も外反しそうですが、実際には歩行時に外反すると下部体幹が外方位となり、下肢は外方に傾斜していきます。

下肢が外方傾斜すると下腿(膝関節)には外旋方向への捻れが生じ、その積み重ねが外旋症候群を引き起こすことにもつながります。

さらに書くと、下腿が過外旋すると膝蓋下脂肪体への圧が強まり、さらに内側に押しやられることで拘縮していきます。

膝蓋下脂肪体が硬くなると膝関節伸展制限を起こすことになり、膝が伸びないと歩行中にさらに下腿が外旋するといった悪循環に陥ります。

外傷後の発生率増加について

内側半月板の切除後

半月板や靱帯を損傷すると関節の安定化機構が破綻し、荷重部位の変化(荷重の偏り)が起こり、関節軟骨の摩耗を助長します。

報告によると、半月板損傷で手術を実施し、10-15年後の膝OA発生率を調べた研究では、部分切除後で33%、全切除後ではなんと72%にも昇ったことが報告されています。

また、前十字靱帯断裂で再建術を実施し、10-15年後の膝OA発生率を調べた研究では、ACL単独損傷で62%、半月板を複合損傷した場合で80%の症例に発生していたことが報告されています。

この数字からもわかるように、半月板損傷や前十字靭帯損傷の既往は、変形性膝関節症のリスクを劇的に高めることになります。

変形による影響

変形性膝関節症では関節内の半月板や十字靭帯、関節軟骨が摩耗し、徐々に関節腔が狭小化していきます。

また、関節を安定させるために骨棘を形成して関節面を拡げたり、軟骨損傷部から関節液が骨に侵入して骨が溶け、穴(骨嚢胞)が発生します。

関節軟骨が摩耗して剥がれてしまうと、その一部が関節内を遊離して関節包の内膜である滑膜を刺激して炎症を起こします。

滑膜は関節内に滑液を分泌する役割を担っていますが、炎症が起きると滑液を過剰に分泌して関節内に水が溜まり、関節水腫(いわゆる水が溜まった状態)を引き起こします。

また、炎症が長期間にわたって持続すると次第に滑膜は肥厚します。

関節内組織である関節軟骨や半月板の一部は滑液から栄養を補給していますので、滑膜の炎症や肥厚は組織変性を加速させる原因になります。

周辺組織が変性すると膝関節にかかる荷重圧を均等に分散できず、部分的な負担が高まって関節変形を助長します。

疼痛発生のメカニズム

痛みが発生する理由で、関節軟骨がすり減って、骨同士がぶつかっているから痛いのだと説明している場合がありますが、これは正しくありません。

まず、関節軟骨には神経が存在せず、関節軟骨の下にある骨(緻密質)にも神経はありません。

神経がないということは、つまりは痛みを感じないということです。

骨折したら激痛が起こりますが、それは骨幹部(骨の中央)の外層には骨膜が付着しているからであり、骨膜には神経があるからです。

骨膜は関節面の手前で関節包(外側の線維膜と内側の滑膜)に移行するので、関節面に骨膜はありません。

しかし、骨膜の延長組織である関節包には神経が存在しているので、関節包は膝関節痛の原因となりやすい組織です。

膝関節で痛みを感じやすい組織を調べた研究では、最も痛みを拾っている組織は膝蓋下脂肪体であることも報告されています。

膝蓋下脂肪体は膝蓋骨の裏や下方に貯留しており、膝関節の滑らかな動きを実現するために存在します。

変形性膝関節症の患者では、膝の変形によって膝蓋下脂肪体が柔軟に動くことができず、ストレスを受け続けて硬くなっています。

痛みは周囲の筋肉を緊張させ、さらに動きを制限することにつながっていくため、そのような悪循環に陥らないようにすることが治療では大切です。

画像診断でのチェック項目

X線像

膝関節のレントゲン|チェックポイント

MRI画像

膝関節のMRI画像|チェックポイント

診療ガイドラインによる推奨度

<推奨度A>(行うよう強く勧められる)

  • 非薬物療法と薬物療法の併用が有用
  • 有酸素運動、筋力強化、関節可動域訓練の実施かつ継続を奨励する
  • 体重過多には体重をより低く維持することを奨励する
  • 歩行補助具により免荷をはかる
  • 非ステロイド性抗炎症薬を最小有効用量で使用する
  • 重篤な症例には関節置換術が有効かつ費用対効果の高い

<推奨度B>(行うよう勧められる)

  • 中等度までのOAは膝関節装具で疼痛緩和、転倒リスクを低下させる
  • 外側楔状足底板が症状緩和に有効
  • 外用NSAIDsは経口鎮痛薬等への追加または代替薬として有効
  • ヒアルロン酸注射は有用な場合がある

<推奨度C>(行うことを考慮してもよいが十分な根拠がない)

  • 定期的な電話指導は患者の臨床症状の改善に有効
  • 温熟療法は症状緩和に有効
  • TENSは短期的な疼痛コントロールの一助となる
  • 副腎皮質コルチコステロイドIA注射は治療に使用してもよい
  • 関節洗浄および関節鏡視下デプリドマンの効果は意見が分かれる

リハビリテーションの考え方

変形性膝関節症のリハビリで重要なのは、どの組織が痛みの主因になっているかを見つけることです。

簡単な見分け方として、歩く時に痛いなら大腿脛骨関節の痛みであり、立ち上がる時に痛いなら膝蓋大腿関節の痛みである可能性が高いです。

大腿脛骨関節における疼痛誘発組織は滑膜と半月板であり、滑膜由来の痛みは膝関節に炎症が存在している場合に起こりやすいです。

膝蓋大腿関節における疼痛誘発組織は膝蓋下脂肪体であり、脂肪体の滑走が障害され、摩擦やインピンジメントが起きることで発生します。

膝関節の側面

炎症の軽減

膝関節に強い炎症が認められる場合は、炎症が落ち着くまでは歩行補助具を利用して免荷を図ったり、安静をとるように指示します。

基本的に強い炎症がある時期は歩行時痛があり、この時に痛みを拾っている主な組織は滑膜になります。

炎症性の痛みはステロイド注射や抗炎症薬が著効し、リハビリの効果はほとんどないため、炎症コントロールが重要です。

時間の経過とともに炎症は落ち着いていきますが、その後も長期にわたって軽度の炎症(腫脹や熱感)は残存し続けやすいです。

軽度の炎症の時期は歩行時痛が消失するため、そこからは痛みのない範囲で有酸素運動(ウォーキングなど)をすることが推奨されます。

ここは非常に重要なポイントであり、強度の炎症は安静が第一ですが、軽度の炎症は軽く動かしたほうが治りは早いのです。

なぜ運動で炎症が軽減するのかですが、その理由は筋肉から分泌されるマイオサイトカインという物質が関わっています。

マイオサイトカインは炎症を抑制する作用があり、筋肉が収縮することで分泌するといった特徴を持ちます。

そのため、他動運動よりも自動運動のほうが効果的となり、痛みのない範囲では重度の炎症でも軽い筋収縮をしてもらうほうが良いわけです。

炎症を抑えるための別の方法として、薬物療法や温熱療法、食事療法などが挙げられます。(記事:関節の炎症を抑えるための方法について

膝関節伸展制限の改善

変形性膝関節症では伸展・屈曲ともに制限が起こりますが、重要なのは膝関節伸展制限の改善です。

理由としては、膝OAを進行させる要因がラテラルスラストであり、これは歩行時の初期接地から荷重応答期に起こります。

初期接地では膝関節が伸展位(厳密には伸展-5度)となりますが、その際に伸展制限が存在すると内側広筋の出力が発揮できません。

内側広筋の出力が不十分となり、さらに屈曲位で膝が固定されていないため、動揺は増すことになるわけです。

具体的な治療方法としては、まずはどの組織が伸展制限に関わっているかを調べる必要があります。

これは簡単なので是非とも覚えておいてほしいのですが、膝関節を伸展した際にどの部分が痛むかを聞くだけでいいです。

膝蓋骨の下方が痛いなら膝蓋下脂肪体が、上方が痛いなら膝蓋上包が、膝窩が痛いならハムストリングスや腓腹筋が問題となっていることが多いです。

具体的なリリース方法については、膝蓋下脂肪体が原因の膝痛を治す方法に記載してあるので、そちらの記事をご参照ください。

大腿内側のリリース

膝関節内側の痛みを訴える場合に膝蓋下脂肪体が影響していることが多いと前述しましたが、もうひとつ重要なのが筋膜組織です。

筋・筋膜性膝痛を発生する多くのヒトに大腿内側のタイトがあり、DFL(ディープ・フロント・ライン)に緊張を認めます。

DFLには股関節内転筋群が属していますが、広筋内転筋腱板から起始している内側広筋も同時に緊張状態となります。

そうすると大腿骨は内旋しやすくなり、さらに筋膜が硬くなることで股関節内転の筋出力が低下することにもつながります。

これらはラテラルスラストを起こすことにもつながるので、治療では内側広筋や股関節内転筋群のリリース、股関節外旋ストレッチを実施します。

膝関節装具・インソール

O脚変形が起こる原因に膝内反動揺がありますが、それを抑えるために効果的とされるのが膝関節装具とインソールになります。

膝関節装具では外側支柱があるものを選び、内反動揺を抑えられるように調整することが必要です。

インソールは扁平足を矯正できるものが理想であり、中足骨を持ち上げるようなタイプが効果的といえます。

テーピング

変形性膝関節症は下腿の過外旋が影響してくるので、膝関節の捻れ(ニーイン・トーアウト)を修正することが必要です。

簡単な方法として、上の図のようにテーピングをしたあとに歩いてもらうことで、痛みが変化するかをみてもらいます。

それで疼痛が軽減するようなら膝関節の捻れが痛みの原因であることがわかるので、アライメントの崩れを矯正するように誘導します。

膝関節の免荷

内反変形を進行させないためには、炎症の早期沈静化と膝関節の動揺軽減が重要であり、その方法について記載してきました。

それらと同じぐらい大切なのが膝関節の免荷であり、そもそもの負担が減らすことで除痛や変形の進行を予防する効果が期待できます。

具体的な方法としては、①体重を減らす、②歩行補助具の使用などが挙げられます。

①体重を減らす

まずは減量についてですが、これはあまり深く説明する必要もないのでサクッと書きますが、基本は食事制限と運動です。

しかしながら、運動によるカロリー消費は僅かであり、そもそも痛みがある患者には積極的な運動は困難な場合も多いです。

なので基本は食事制限ですが、多くの場合は制限ができず、反対にストレスを溜め込んでしまう結果にもなりかねません。

単純に食事量だけを減らすと、筋肉が優先的に分解されてしまい、さらなる痛みの悪循環となることも危惧されます。

そのため、私はほとんど減量について話すことはありませんが、糖質制限で自分は痩せた経験があるとだけ伝えるようにしてます。

研究報告によると、減量による疼痛軽減の効果を実感するためには、最低でも体重の5%以上を減らすことが必要となります。

②歩行補助具を利用する

炎症を早期に沈静化するためには患部の安静が必要と書きましたが、膝に負担をかけないために寝たきり状態となるわけにはいきません。

そこで効果的な方法が歩行補助具の利用です。

減量のように時間もかかりませんし、即時的に痛みを軽減することができるのでとても有用となります。(患者によっては杖を嫌がることも多いですけど)

以下に、代表的な歩行補助具と免荷の割合について記載します。

なお、歩行器に関しては「つま先のみを接地した場合」になりますので注意してください。

方法 免荷
歩行器 80%
松葉杖 67%
ロフストランド杖 33%
Q杖(四点杖) 30%
T杖(一本杖) 25%

パターンとしては、①平行棒➡②歩行器➡③Q杖➡④押し車➡⑤T杖という順序で進めていくことが多いです。

杖を使用する場合は、まずは3動作歩行を習得してから2動作歩行に移行するようにして、徐々に負荷を上げていくようにします。

また、歩行補助具の選択と同じぐらい大切なのが一日の歩行量です。

どれだけ免荷したとしても、歩く量が多すぎると膝関節の負担は増加してしまい、炎症が増悪することになります。

携帯電話の万歩計の機能を利用するなどして、最初は1000歩程度から開始し、徐々に1500歩、2000歩と増やしていくとよいです。

量を増やしてよいかの目安としては、実施後に痛みが強くならない、または次の日に痛みが増悪していないかを確認してください。

その異常歩行には意味がある

変形性膝関節症による異常歩行の多くは、外部膝関節内転モーメント(KAM)を減少させるための疼痛回避歩行になります。

どういうことかと言いますと、内反膝の患者は膝内側に痛みがあるため、無意識のうちに膝内側に負担をかけないような歩き方となっています。

そのため、むやみやたらに正常歩行に近づけることが正しい選択とは限らず、むしろ修正することで悪化させてしまうリスクがあるわけです。

まずはそのことを十分に理解しておき、徒手療法などで周囲組織の問題を解決してから歩行へは介入するようにしてください。

膝に痛みがある方では、無意識に歩行速度を落としたり、歩幅を狭めることで膝関節へのストレスを減少させています。

力学的ストレスを考える場合、①荷重量、②荷重時間、③荷重面積の三つを考慮する必要があるのですが、速度や歩幅の調整もこの中に含まれます。

歩行速度を落とすことで衝撃(荷重量)を軽減し、歩幅を狭めることで荷重時間を短くしている場合も多いです。

手術療法の適応

日常生活に支障をきたすような重度の膝OAに対しては、アライメントを整えて痛みを取り除くことを目的に手術が適応されます。

主に実施されている手術法として、骨切り術(高位脛骨骨切除術)と全人工膝関節全置換術(TKA)があります。

TKAでは関節面である脛骨と大腿骨の骨端部を切除し、人工物に取り替えてしまう手術です。(詳細はTKAのリハビリ治療に記載)

全人工膝関節置換術|TKA

骨切り術では脛骨の骨幹端部あたりを骨切りし、中に人工骨などを挿入して関節のアライメントを調整していきます。

Thorlund氏らは中高年の膝OAに対する関節鏡視下手術(骨切り術)について、システマティックレビューとメタ解析をしています。

その結果、手術による痛みの改善効果は僅かであり、機能性に対する効果は認められないとの見解を示しています。

3〜24カ月の経過観察を実施した研究では、術後6ヵ月時点でVASは3-5㎜の改善と僅かで、術後24ヵ月時点では有意な改善は認めませんでした。

効果に対して、手術の合併症である深部静脈血栓症、肺塞栓症、感染症などのリスクを考慮すると骨切り術は支持できないと結論づけています。

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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