まず結論
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抱っこで起きる腰痛は、前かがみ+反り(腰椎前弯)+片側荷重の複合で起こる「腰のオーバーワーク」が多い。
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手首痛は、手首を反らせたまま(背屈位)+親指側で支えるパターンが多く、いわゆるドケルバン病(親指側の腱鞘炎)っぽい痛みになりやすい。
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ポイントは**“支え方を変える”+“回数と時間を分ける”+“痛んだときのケア手順を決めておく”**こと。
① 抱っこで腰が痛くなるメカニズム
1. 子どもが前に離れている
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子どもが身体から5〜10cm前に離れるだけで、腰にかかるモーメントが一気に増えます。
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特に「抱っこしながらスマホ」「抱っこしながら歩き回る」で、体幹がわずかに前傾+腰だけ反る→腰椎の下のほうに負担。
2. 片側ばかりで抱く
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いつも左or右の腰骨の上に乗せると、骨盤が横にずれて(側方傾き)→腰で戻すので、腰方形筋〜中殿筋ががんばりっぱなし。
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腰痛だけじゃなくて、反対側の肩こりや股関節の詰まり感になることも。
3. 抱き上げ動作が前かがみ
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ベビーベッドやチャイルドシートから“ヒョイ”と前かがみで持ち上げると、腰だけで持ち上げるフォームになってしまう。
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本当は「しゃがむ→子どもを体に近づける→立ち上がる」の順。
② 手首が痛くなるメカニズム(親指側がズキッとするやつ)
1. 手首が反ったまま固まる
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子どものお尻を支えるとき、手首が**反り気味(背屈)**になっていると、手首の親指側(橈側)の腱に負担がかかる。
2. 親指と人差し指でつかみすぎ
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片手で脇を支えたり、服をつかんでると、親指側の短母指伸筋腱・長母指外転筋腱にテンションがたまって、いわゆるドケルバン風の痛みになる。
3. 長時間同じ高さで抱いている
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ずっと同じ高さで抱くと、手首・肘・肩の角度が固定→血流が落ちて痛みが出やすい。
③ 自分でできるチェック(3つ)
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左右どっちで多く抱いてるか言えますか?
→どちらか一方なら、それが腰・手首の“痛み側”になりやすい。 -
抱いてるときに手首は反ってる?まっすぐ?
→鏡かスマホで撮ると、だいたい反ってる。 -
子どもをくっつけて抱けてる?
→肘が伸びてる=体から遠い=腰に負担。
ここで“遠い・片側・反り手首”が1つでもあれば、以下のケアをやる価値あり。
④ 抱っこのやり方をこう変える(フォーム修正)
1. 体に「くっつける」が最優先
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脇〜胸のあたりにぎゅっと引き寄せて抱くと、腰の負担が一気に減る。
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ベルト型・スリングを使うなら、高めの位置に。低いと前かがみになる。
2. 両手抱っこを“基本”にして、片手抱っこは短時間に
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片手で抱くのは移動の一瞬だけにして、家の中では両手で。
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どうしても片手にするなら、1〜2分で反対に持ち替えるルールにする。
3. 立ち上がるときは「近づけてから立つ」
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先に子どもを自分の胸に寄せる
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そのあとに脚で立つ(腰で引き上げない)
⑤ 痛くなったときのセルフケア
腰用(1日2〜3回・各30秒)
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膝抱えストレッチ(片脚ずつ)
→仰向けで片膝を胸に近づける。腰が気持ちよく丸まるところで30秒。 -
骨盤前後傾(椅子でもOK)
→椅子に座って、背すじを丸める→反るを10回ずつ。動きを出しておくと抱っこで固まりにくい。
手首用(1日2〜3回・各20〜30秒)
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手首をまっすぐにして指だけ伸ばすストレッチ
→手首を反らせず、指〜親指の付け根をゆっくり伸ばす。 -
親指側(母指球)の軽いマッサージ
→痛いところを1〜2分優しく。ゴリゴリはNG。 -
夜だけサポーター
→日中はなるべく動きやすく、夜だけ軽く固定して休ませると回復しやすい。
⑥ やってはいけない・やりすぎ注意
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子どもをずっと片側の腰に乗せる
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手首を反らせたままスマホ+抱っこ
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痛いのに重い荷物(買い物袋・抱っこ紐+リュック)を同じ側にかける
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痛むところを強く押しすぎる・長く冷やしすぎる(冷却は最初の10分まで)
⑦ 受診したほうがいいサイン
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手首や親指側がズキッと強くて、家事ができないレベル
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親指を動かすと引っかかる・ロックする(ばね指っぽい)
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腰痛がお尻〜足まで響く・しびれがある
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発熱・腫れ・赤みなど炎症が強い
→これらは腱鞘炎が進んでいたり、腰は椎間板・神経痛の可能性もあるから、整形かリハビリのあるところで診てもらう。
FAQ
Q1. 抱っこ紐を使えば治りますか?
A. “低すぎる抱っこ紐”は逆に前かがみを増やします。高め+密着ができれば腰には有利です。
Q2. テーピングやサポーターは?
A. 手首は痛い時期だけ・夜だけが基本。ずっと巻きっぱなしだと筋力が落ちてぶり返します。
Q3. 痛くなってからどれくらいで良くなる?
A. 単純なオーバーユースなら1〜2週間で落ち着くことが多いです。クセ(片側抱っこ)を直さないとまた出ます。