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寒冷療法の治療効果と方法|適応と禁忌について解説


寒冷療法の効果について解説していきます。

寒冷療法の歴史

寒冷療法は古代より行われてきた治療の手段であり、急性外傷による腫脹や痛みの軽減に氷や雪、冷水が使用されていたのが始まりになります。

一方、神経・筋に対する影響としては、19世紀初めにWallerが尺骨神経に対する寒冷療法により感覚鈍麻が生じ、痛みも消失することを明らかにしました。

また、1965年にLehmkahlは寒冷療法が筋紡錘活動を低下させ、痙性の抑制につながることを報告しています。

寒冷刺激による生体の生理学的影響

効果 内容
循環の変化 一次的血管収縮、二次的血管拡張、血流量の減少、局所新陳代謝の低下、毛細管透過性の減少
局所新陳代謝の低下 エネルギー消費の低下、酸素摂取量の低下、炎症性侵出物質の抑制
神経・筋系への影響 神経伝導速度の低下、中枢への感覚性インパルスの減少、γ運動神経の活動低下
疼痛の軽減 疼痛閾値の上昇、筋スパズムの低下、過緊張の抑制、発痛物質賛生産の減少
筋収縮能の低下 筋紡錘活動の低下、筋温の低下(深さ3㎝まで)
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一次的血管収縮と二次的血管拡張について

局所の寒冷刺激により、皮膚の温(冷)受容器が活性化され、皮膚表層の毛細血管(平滑筋)が収縮します。

これに続いて交感神経の働きにより、毛細血管や立毛筋の収縮がみられます。血管収縮に伴い血流の抵抗が増大し、血液粘性も高まり、血流量は減少します。

さらに、冷却された血液が視床下部を刺激し、全身の血管収縮を引き起こします。これが一次的血管収縮の流れになります。

長時間の寒冷刺激後は、反対に血管拡張を引き起こす現象が起こります。

これは、冷却された血液によって視床下部が刺激されたことにより、体温低下を防ごうとする生体の防御反応の一種だといわれています。

しかし、1997年にKnightらは二次的血管拡張によって血流量が通常の状態よりも増加することはないと報告しており、臨床的にはあまり重要視する必要はないと提言しています。

また、皮膚に発赤が認められるのは二次的血管拡張による影響ではなく、酸素ヘモグロビン解離の低下によって、血中の酸素化ヘモグロビン濃度が高まるためだといわれています。

関節可動域の改善

疼痛や筋肉の過緊張に伴う関節可動域制限に対しては、寒冷刺激による疼痛閾値の上昇、γ運動神経の活動低下に伴う緊張抑制により、即時的に可動域の拡大が期待できます。

寒冷刺激は温熱刺激よりも深達性が高いので、深層筋に対してはホットパックよりもアイスパックのほうが効果は期待できます。

ハムストリングスにホットパックとアイスパックを実施して比較検討した調査では、実施後のSLR可動域は後者の方が優れていたとの報告もあります。

関節可動域の制限因子が拘縮(結合組織の粘弾性低下)に起因している場合は、寒冷刺激での改善効果はなく、温熱療法のほうが効果的と考えられます。

疼痛に対する効果

打撲や外傷などにより局所に疼痛が発生したときは、最初に局所の冷却を行うことが推奨されています。

これは局所の炎症を抑えるとともに、疼痛を軽減することができるという経験的な知識によって、古代より受け継がれてきた治療法のひとつです。

疼痛閾値の上昇に関するメカニズムは、ゲートコントロール機構での刺激抑制および筋緊張の低下、感覚神経伝導速度の低下、外傷後浮腫の減少に起因します。

寝違えにも非常に効果的で、寝違えは有痛性の筋緊張亢進の典型例であり、寒冷療法を用いることで表層筋の疼痛や筋緊張を抑制できます。

筋緊張に対する効果

Lightfootらは、脊髄損傷者の下腿三頭筋を対象として45分間のアイスパックを施行した結果、皮膚の表面温度は15.4℃に下降したことを報告しています。

また、ヒラメ筋のM波は振幅の低下と潜時の延長が認められ、アキレス腱反射が低下したと報告しています。

筋緊張の抑制は痙縮筋にも有効で、5分ほどの短時間適用でも即時的な緊張低下と、深部腱反射の低下を起こします。効果の持続時間は15分以下です。

30分以上の長時間適用では、クローヌスの減少または消失が認められ、受動的伸張に対する筋の抵抗が減少します。効果の持続時間は1時間ほどです。

筋緊張が低下するメカニズムは、最初にγ運動ニューロンの活動が低下し、その後に求心性の筋紡錘とゴルジ体の活動が低下することに起因します。

とくに長時間の冷却後は後者の効果が持続するため、実施後に1時間経過しても緊張が抑制できることになります。

局所新陳代謝の低下

寒冷刺激は、細胞の化学反応に影響を与えます。約10℃の温度低下で、細胞における化学反応や代謝率は半減します。それに伴いエネルギー消費も減少します。

また、化学反応率の低下は、組織における酸素摂取量を低下させることにより、結果として組織の治癒を抑制させます。

しかし、この作用によって炎症期では二次的な組織破壊の原因となる酵素(ライソソーム)の放出を抑制することができ、結果的に治癒を促進させるとされています。

筋力の変化について

文献によると、5分以下のアイスマッサージを実施した直後は等尺性筋力が増強することが報告されています。

このメカニズムについては、α運動ニューロンの活動亢進や、遂行への心理的モチベーションの増大が影響していると推察されます。

対照的に、30分以上の冷却を実施した直後には等尺性筋力は減少し、それから1時間後には冷却前より筋力が増強するとことが報告されています。

長時間の冷却後の筋力低下のメカニズムは、筋肉の血流減少、運動神経伝導の遅延、筋の粘弾性の増加、軟部組織の硬直の増加が挙げられます。

寒冷療法の分類

対流冷却法 扇風機などにより熱を奪う方法
蒸発冷却法 揮発液を湿布して気化熱により熱を奪う方法
伝導冷却法 水、冷水などを直接又は容器に入れて冷却する方法

寒冷療法の臨床的意思決定

急性期で炎症所見が認められれば、寒冷療法にて炎症症状の緩和、疼痛の軽減、二次的な組織破壊の防止とを目的として使用されます。

慢性期の疼痛は温熱療法を選択する場合が多いですが、それは長期炎症による結合組織の伸張性低下が主となっているからです。

そのため、慢性期であっても筋肉の過緊張に伴う痛みが主である場合は、寒冷刺激のほうが効果的である場合はあります。

治療部位が局所である場合はクリッカーが適応され、広範囲である場合はアイスパックや寒冷部分浴などが効果的です。

寒冷療法の種類

アイスパック

アイスパックの材料はシリカ塩を特殊処理したゲル剤であり、これを冷凍庫などの冷却器で冷やしてから、タオルなどに巻いてから使用します。

使用が簡単で広範囲に使用できることから、疼痛の緩和や筋肉の過緊張を抑制するために頻繁に使用されます。治療時間は通常20-30分です。

短所としては、治療中に治療領域を確認することができない、治療時間が長い、バックの重さがかかるなどがあります。

アイスマッサージ

臨床でよく使用されるアイスマッサージは、クリッカーを用いて治療部位を軽く圧迫する方法です。

回しながらすり込むように実施していき、使用時間は通常5分ほどで局部の感覚が鈍麻したら終了とします。

温度緩衝作用と消炎作用を考慮し、消炎剤軟膏を塗布することで過度の冷却による凍傷を予防できます。

適用中に治療領域を観察することができ、小さくて不整な領域にも使用できることが長所です。短所は実施中にセラピストや患者が関与し続ける必要があることです。

寒冷部分浴

寒冷部分浴の適用は上下肢の末梢部で、上肢では肘より末梢部、下肢では膝より末梢部に使用します。

指先などの細かい関節部を冷やすには、アイスパックよりも効率的に冷却が可能となります。

筋緊張の抑制や疼痛の軽減を目的に使用され、前者では通常20分ほど、後者では20秒間浸しては取り出してを繰り返して局所の充血が確認できたら終了とします。

塩化エチルスプレー

塩化エチル製剤を治療容器に封入した噴射式のスプレーで、局所の除痛に使用されます。これはプロ野球などのスポーツで打撲があったときに用いられます。

急性疼痛に塩化エチルスプレーをしようすることにより、約70%に疼痛の解消と関節可動域の改善を認めたとされています。

噴射する際は、治療部位から30㎝の距離をおいて近づけたり離したりしながら施行します。部位の皮膚が白くなる手前で終了します。

長所は、超急性期に使用できることであり、セラピストが実施する物理療法では使用されることはありません。

寒冷療法の適応と禁忌

<適応>

  • 急性期の炎症の軽減、局所の疼痛軽減
  • 有痛性筋スパズムの軽減、中枢神経疾患の筋緊張軽減
  • 褥瘡治癒促進
  • 筋再教育訓練、短時間の寒冷刺激によりα運動神経の活動性を上昇

<禁忌>

  • 心臓及び胸部、心臓又は呼吸器疾患のある患者に広範囲の寒冷を行う場合
  • 末梢循環障害、開放性外傷
  • 知覚鈍麻、寒冷過敏症(レイノー現象、寒冷アレルギーなど)
  • 炎症性腎疾患、結節性動脈周囲炎、クロム親和性細胞腫

多発性硬化症の症状管理

多発性硬化症患者の症状は、暖かい環境や活動時に生じる全身的な加温により憎悪することになります。

そのような患者に対しては全身の冷却がよく反応し、電気生理学的な計測値と臨床的な症状と機能の改善をもたらすとされています。

近年では冷却機能のある上衣は冷却機能のない上衣と比較して、疲労、筋力、姿勢安定性の改善をもたらすことが示されています。

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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