主訴は寝返り時の強い殿部外側痛で、起き上がってしまうと疼痛はほぼ消失し、歩行時には全く痛みを伴わない症例について考察します。
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症例情報
基本情報 | 80代女性 |
運動時痛 | 寝返り(左右)、臥位での体動時 |
疼痛部位 | 左殿部外側、圧痛は認められるが完全な再現痛はなし |
姿勢分類 | カイホロードシス傾向 |
力学的推論
運動時痛は再現が可能で、ベッドで寝返りをすると強い殿部痛があり、その状態が3週間ほど持続している。
立ってしまうと痛みは完全に消失し、歩行時痛もなし。
この時点では、臥位と立位で力学的なストレスがどのように変化するかは不明だが、明確な再現痛が存在することから心理学的な面は除外する。
組織学的推論
左殿部外側に痛みの訴えがあり、疼痛部位も「この辺り」と指すことが可能。
中殿筋後方に圧痛が存在しているが、普段の疼痛を再現できておらず、さらに股関節の運動では痛みを誘発できない。
筋・筋膜性疼痛の可能性を除外して、仙腸関節について検討。
仙腸関節障害はカウンターニューテーション型が多く、歩行時に痛みを認めるケースが多い。
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今回の症例は、姿勢がカイホロードシス傾向であり、骨盤前傾位となっているために仙腸関節はニューテーションをとりやすい。
歩行時痛は全くないことからも、関節の不安定性があるのではなく、圧縮ストレスに伴う仙腸関節障害の可能性が考えられた。
臥位で上前腸骨棘の高さをチェックしてみると、患側の位置のほうが高く、ニューテーション方向に働いていることが示唆された。
以上のことを考慮して、徒手的に左寛骨を前傾誘導した状態で寝返りをしてもらうと、疼痛なく動くことが可能であった。
治療についての考察
臥位での体動時痛が主訴であったが、そこには仙腸関節の圧縮方向への力学的ストレスが関与している可能性が考えられた。
治療は、①寛骨後傾筋・仙骨前傾筋のリラクゼーション、②寛骨前傾筋の筋力強化、③下部体幹前方位の修正を中心に実施していく。
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