小趾対立筋(opponens digiti minimi F)

小趾対立筋の概要

小趾対立筋の起始停止

小趾対立筋は小趾球の最も深層に位置する小さな筋肉で、小趾外転筋(ときに短小趾屈筋)の一部からなり、小趾対立運動を担います。
小趾対立運動とは、小趾を母趾のほうへ近づける動きですが、実際にはできないため、ほぼ屈曲(底屈)の動きのみになります。

基本データ

項目 内容
支配神経 外側足底神経
髄節 S1-2
起始 5中足骨の骨底および長足底靭帯
停止 5中足骨の前方端の外側
動作 5中足骨を底側及び内側にわずかに引く

小趾対立筋の触診方法

  • 被検者の小趾を外転位にセット → そこから内転方向へ動かすよう指示。

  • 検者は内転に抵抗をかけつつ、第5中足骨近位~軸部外側で深部の収縮を探る(=小趾対立筋)。

  • その後、小趾MTP屈曲に抵抗をかけると**短小趾屈筋(表層)**が優位に触れ、収縮部位の違いを感じやすい。

ストレッチ方法

  • 基本:第5中足骨を把持し、リスフラン関節(中足‐楔/立方)を背屈+外転へ誘導。

  • 届きにくい場合:小趾球深部(第5中足骨軸部外側)へ優しくダイレクト圧を加え、持続伸張(30–60秒×数回)

筋力トレーニング

  • アイソメトリック:第5中足骨遠位を軽く背屈保持→そこから底屈+内方へ“寄せる”力を発揮。検者(または自分の指)で反対抵抗

  • セルフ抵抗:タオルの端を小趾側で軽く挟み、内側へ寄せる意識で押しつける(痛みゼロ~軽度で)。

クリニカル・パール

  • 小趾対立筋は個体差が大きい筋。触れづらい時は短小趾屈筋の活動を最小化(小趾MTP屈曲を入れすぎない)して探る。

  • 第5中足骨基部痛/外側アーチ低下を伴う例では、短小趾屈筋だけでなく小趾対立筋の収縮感覚を再学習させると安定しやすい。

  • シューズの小趾側トーオフセット不足前足部の窮屈さは、同部の過緊張・疼痛の温床。前足部の幅・ねじれ余裕を確認。


よくあるQ&A

Q1.短小趾屈筋との一番の違いは?
A.短小趾屈筋は小趾MTP屈曲が主役。**小趾対立筋は第5中足骨自体を“内・底側へ寄せる”**調整役で、アーチ支持に絡みます。

Q2.“対立”って本当に起きる?
A.足では関節形状の制約が大きく、手ほど明瞭な対立は不可。実際は微小な内転・底屈+前足部の回内/回外連動として現れます。

Q3.どんな人に鍛える価値がある?
A.外側アーチ低下、前足部外側痛、ラン/球技での蹴り出し不安定を訴える人。小趾球の接地感が改善するケースがあります。

Q4.痛みが出るときは?
A.急な抵抗運動・過度なダイレクト圧は中止。腫れ・発赤・鋭い痛みがあれば練習を休み、必要なら医療機関へ。