尺骨の場所と付着する筋肉について

尺骨の概要

尺骨(ulna)は、前腕の小指側(内側)に位置する長骨で、橈骨(とうこつ)とともに前腕を構成します。近位端(肘側)が太く、遠位端(手首側)に向かって細くなる形状をしています。

  • 近位端(肘側)
    • 腕尺関節:上腕骨滑車と尺骨の滑車切痕からなる蝶番関節(らせん関節)で、主に肘の屈曲・伸展運動に関与します
    • 近位橈尺関節(上橈尺関節):橈骨頭と尺骨の橈骨切痕からなる車軸関節で、前腕の回内・回外運動に関与します
  • 遠位端(手首側)
    • 遠位橈尺関節(下橈尺関節):尺骨の関節環状面(尺骨頭)と橈骨の尺骨切痕からなる車軸関節です
  • 手関節における特徴
    • 尺骨は手根骨(月状骨や三角骨など)とは直接関節をつくらず、間に「三角線維軟骨複合体(TFCC)」という軟骨・靱帯組織が介在しています。手をついた際などに手関節に加わる荷重は、約80%が橈骨へ、約20%がTFCCを介して尺骨へと伝達されます

前腕の運動(回内・回外)における役割:前腕をひねる回内・回外運動において、尺骨は基本的には固定されており、橈骨が尺骨の周りを回旋するように動きます 。ただし厳密な生体力学的には、回内時に尺骨は完全に固定されているわけではなく、わずかに外側・後方へ移動(外転)しています 。

尺骨


各部位の名称と役割について

1.前方から見た尺骨
尺骨前面|各部位の名称
2.後方から見た尺骨
尺骨後面|各部位の名称
部位名
解剖的位置・特徴
主な付着・通過構造
滑車切痕
近位端前面の大きなへこみ
上腕骨滑車と関節を構成(腕尺関節)
橈骨切痕
近位の外側にある浅いくぼみ
橈骨頭と関節を構成(近位橈尺関節)。橈骨頭を囲む橈骨輪状靱帯が付着
肘頭
近位背側に大きく突出した部分
肘の伸展時、上腕骨の肘頭窩にはまり込む上腕三頭筋、肘筋が停止。尺側手根屈筋が起始
鉤状突起
近位前面に突出した部分
肘の屈曲時、上腕骨の鉤突窩にはまり込む。円回内筋(尺骨頭)、浅指屈筋(尺骨頭)が起始。内側側副靭帯が付着
尺骨粗面
鉤状突起の下方前面にある粗な面
肘を屈曲させる強力な筋肉である上腕筋が停止
回外筋稜
橈骨切痕の後縁から下方へ伸びる稜
回外筋が起始。外側尺側側副靭帯が付着
骨間縁
尺骨体の外側(橈骨側)の縁
橈骨との間をつなぐ強靱な前腕骨間膜が付着
尺骨体
前腕内側を走行する骨幹部
方形回内筋、尺側手根伸筋、長母指伸筋、長母指外転筋、示指伸筋、深指屈筋などが起始
尺骨頭
遠位端(手首側)のふくらみ
橈骨の尺骨切痕と関節を構成(遠位橈尺関節)
尺骨茎状突起
尺骨頭の内側後方にある細い突起
尺側手根側副靱帯や、手関節の安定に重要なTFCC(三角線維軟骨複合体)の基部が付着する

Q&A

Q. 尺骨は前腕でどちら側にある?
A. 手のひらを前に向けた解剖学的肢位において、小指側(内側)に位置します 。前腕の回旋運動では橈骨が尺骨の周りを回るため、尺骨自体はほとんど回らず安定した軸として働きます 。

Q. 尺骨と関節をつくる骨は?
A. 近位端では上腕骨(腕尺関節)および橈骨(近位橈尺関節)、遠位端では橈骨(遠位橈尺関節)と関節をつくります 。手根骨とは直接関節を作らず、TFCCという組織をクッションとして挟んでいます 。

Q. 尺骨にはどのような筋肉が付着している?
A. 大きな筋肉としては、肘を伸ばす上腕三頭筋が肘頭に停止し、肘を曲げる上腕筋が尺骨粗面や鉤状突起に停止します 。また、骨幹部(尺骨体)からは、指を曲げ伸ばしする筋肉(深指屈筋や示指伸筋など)や前腕を回す筋肉(方形回内筋など)が多数起始しています 。

Q. 手をついたときの衝撃は尺骨にどのくらい伝わる?
A. 手首に加わった力の約80%は親指側の橈骨に伝達され、小指側の尺骨にはTFCCを介して約20%が伝わります 。そのため、手をついて転倒した際は橈骨(橈骨遠位端骨折)が折れやすいという特徴があります 。


最終更新:2026-07-22