尾骨に痛みを訴える患者を触診してみると、その多くに股関節内転筋群(薄筋や大内転筋)の圧痛が存在します。
尾骨に付着する筋肉としては、尾骨筋や肛門挙筋(腸骨尾骨筋および恥骨尾骨筋)、肛門括約筋があります。
これらは骨盤底筋群の一種であり、骨盤底筋群の過度な緊張状態は尾骨筋膜や尾骨そのものに負担をかける原因となります。
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昨今注目されている骨盤底筋群ですが、機能不全(弛緩)に陥ると腹圧性尿失禁を起こす原因となります。
筋肉というのは硬すぎても緩みすぎても問題となりますが、尾骨痛に関しては前者の影響が強いと考えられます。
部位的に骨盤底筋群(尾骨筋以外)に直接アプローチすることは難しいため、連結している筋肉から緩めていくことが大切です。
先ほどの画像からみてみると、深会陰横筋に隣接するのは大内転筋および薄筋、肛門挙筋に隣接するのは内閉鎖筋です。
この繋がりというのは、アナトミー・トレインにおけるDFL(ディープ・フロント・ライン)になります。
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アナトミー・トレインとは、トム・マイヤーズ氏が提唱した筋膜の外層を通じて機能的な力伝達の共通経路を説明しようとした理論です。
このライン上に骨盤底筋群も含まれるため、連結している筋のオーバーユースなどで過緊張をきたしていると問題が波及しやすい傾向にあります。
以上のことから、尾骨の痛みに対して股関節内転筋群にアプローチすることは効果的な可能性が高いです。
このラインはあくまで機能的(普段使われやすい)なものであり、絶対的なものではありません。
原因部位や身体の使い方によってはイレギュラーも存在しますが、まずは可能性の高いところから攻めてみてください。