慢性腰痛では腰仙関節の固有感覚が低下している

慢性的に腰痛を持っている方(腰痛者)では、腰仙関節の固有感覚が低下している場合が多いのですが、それによってどのような問題があるかを解説していきます。

固有感覚が低下する要因

わかりやすいところで書くと、年を取ると運動神経は徐々に落ちていきますが、それは筋力の低下以外にも、固有感覚(位置覚や運動覚など)の低下が影響しています。

固有感覚が低下する原因は加齢以外にも、疼痛や血流障害、交感神経の過活動などによって起きることがわかっています。

腰仙関節においては、屈曲伸展の双方向、または屈曲方向のみの固有感覚の低下が起こりやすいことが報告されています。

腰仙関節

感覚低下後の再編成

固有感覚が低下した場合は、その他の感覚(視覚、前庭覚)や、他部位の固有感覚(腰痛の場合は特に足関節)が優先されることになります。

そうやって再編成された統合感覚によって身体をコントロールしていくことになるのですが、正常の状態と比較すると不十分であると言わざるを得ません。

そのため、動きに応じた関節の微調整が行えずに、一定の場所に負担が集中することになり、変性を加速させる原因となります。

慢性腰痛では関節の動揺が大きい

通常、腰痛者では痛みが出ないように体幹筋を過剰に収縮させて関節が動かないようにロックしているため、単純な姿勢(立位など)では動揺が少なくなっています。

しかし、過度な緊張状態では柔軟な重心移動が行えないため、不安定な支持面においては腰痛者のほうが動揺が大きくなります。

関節の動揺が大きくなると、関節以外の周辺組織(筋肉や靭帯など)にかかる負担も増加するため、新たな損傷を生むことにもなりかねません。

慢性腰痛化のメカニズム|悪循環

固有感覚を改善する方法

低下してしまった固有感覚を改善するためには、正常な運動パターンを再認識し、フィードバックしていくことが重要になります。

まずは安定した支持面から腰部の動きを引き出していくところから開始していき、徐々に不安定な支持面(バランスボールなど)での練習に移行していきます。

腰痛者では上図で示したような悪循環に陥っている場合も多いので、同時に認知や姿勢の歪みに対してもアプローチしていくとより効果的です。

SJFも腰仙関節に重点を置いている

関節アプローチの手技として有名なSJFでも、腰痛患者に対しては腰仙関節にアプローチすることが重要だと提唱しています。(AKAだと仙腸関節ですね)

これはロッキングして固有感覚が低下している関節に対して、動きを引き出していくことで腰痛に対する効果が認められるということになります。

なので順序としては、関節モビライゼーションで腰仙骨部の動きを引き出してから、安定した肢位での骨盤の運動(座位での前後傾など)を実施していきます。

そして疼痛もなく動きが引き出せたのを確認してから、ステップアップとして複雑な動きに移行していくことが推奨されます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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