アナトミートレイン(Anatomy Train)について

アナトミー・トレインの概要

アナトミー・トレインとは、トーマス・W・マイヤース氏が提唱した、筋膜の外層を通じて機能的な力伝達の共通経路を説明しようとした理論です 。 体内に張り巡らされた「レール」と呼ばれる筋膜経線は全部で12本存在し、これらは姿勢や運動を全身的にコントロールしています , 。それぞれのつながりを理解することで、経線上のどこかに問題が生じた際に離れた部位に障害を引き起こすメカニズムを紐解くことができ、筋膜治療や動作改善の臨床応用がしやすくなります 。


1.SBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)

2.SFL(スーパーフィシャル・フロント・ライン)

3.LL(ラテラル・ライン)

4.SPL(スパイラル・ライン)

5.SFAL(スーパーフィシャル・フロントアーム・ライン)

6.DFAL(ディープ・フロントアーム・ライン)

7.SBAL(スーパーフィシャル・バックアーム・ライン)

8.DBAL(ディープ・バックアーム・ライン)

9.FFL(フロント・ファンクショナル・ライン)

10.BFL(バック・ファンクショナル・ライン)

11.同側FL(同側ファンクショナル・ライン)

12.DFL(ディープ・フロント・ライン)


筋膜の繋がりを利用する

筋膜のつながりを理解しておくと、学校などでもよく実施される体前屈検査の数値を即時に上げることも可能です。

一般的に体前屈検査はハムストリングスの硬さが制限因子となりますが、それだけの影響ではありません。前屈動作には、身体の背面全体をつなぐ「SBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)」の柔軟性が深く関わっています,。SBLは、足底から始まり、腓腹筋、ハムストリングス、脊柱起立筋を通って、頭頂を越えて眉毛のあたり(眼窩上隆起)まで繋がっています,。

下の写真は足関節が中間位(背屈0度)である場合と、足関節が底屈位である場合の長坐体前屈検査を比較した画像です。

体幹前屈検査|ハムストリングの短縮|スーパーフィシャルバックラインFFD|ハムストリングの短縮|スーパーフィシャルバックライン

昔から身体がとても硬く、体前屈検査をすると全くといっていいほど床に手が届かず、ハムストリングスが突っ張ってしまう人がいます。しかし、長座体前屈において足関節を底屈位にする(または足指を底屈位にする)ことで、即時に手の届く範囲を伸ばすことができます 。

もしもこれをハムストリングスの短縮のみで考えてしまうと、足関節の位置が影響するというのは矛盾が生じます。他の例を挙げると、立位体前屈で足指を曲げた状態で行うことにより、即時に指床間距離(FFD)を伸ばすことができます。

これらを理解するためには、筋肉と筋肉の繋がり(筋膜による連結)を知る必要があり、それに最適なのがアナトミートレインになります。 ハムストリングスは前述したSBLに属しており、腓腹筋や足底腱膜(短趾屈筋など)と繋がるため、足関節や足趾を底屈させることでSBL全体の張力が緩み、前屈距離が伸びるのです , , 。

もちろんこれは体前屈検査の制限因子が「SBL」であった場合であり、それ以外の要素が強いようなら改善しません。しかしながら、多くのヒトで即時に改善を体感できるので、興味がある方はぜひ試してみてください 。

その他の方法としては、足裏にテニスボールなどを置いて、足底筋膜の深部にアプローチしながら2〜3分ほど転がす方法があります , 。 あまり速く・強くやりすぎると筋肉(短趾屈筋など)が緊張して逆効果となりますので、リラックスした状態で、第1〜5趾すべての球から後ろの踵の前端まで全領域に行きわたるように、ゆっくりと柔らかく動かしていくのがポイントです , 。また、SBLの終点である眉毛あたり(眼窩上隆起)をマッサージすることでも、立位前屈の範囲を拡大できることがあります 。

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これはあくまで筋膜上の一部分に着目しただけの方法に過ぎませんが、たったこれだけでも体前屈検査が劇的に改善することがあります , 。この理論を頭に入れておくことで、ライン上の筋膜の滑走不全を効率よく探し出し、リリースしていくことができるようになります。


臨床応用のポイント

  • 「柔軟性=局所のストレッチ」だけでは説明できない現象を理解できる ハムストリングスのみの伸張性を高めても効果があまりない現象も、SBL全体などの筋膜連結の観点で理解し、アプローチを広げることができます
  • ライン上の滑走不全を探し、適切にリリースすることで効率的な治療につながる 力伝達には強いつながりが必要であるため、経線上に滑走不全などの問題が生じると、離れた部位に障害を起こす原因となります。局所だけでなくライン上の問題点を探し出し、筋膜の癒着に起因する滑走障害をリリースすることが根本的な治療につながります
  • 姿勢評価・動作分析にアナトミートレインを取り入れると、より包括的なリハビリが可能になる 筋膜の張力バランスや代償動作をライン全体で評価することで、より広い視点に基づいたリハビリテーションを展開することが可能になります,

最終更新:2026-07-15