1. まず整理:レントゲン“異常なし”は「骨は大丈夫」ってだけ
-
一般的な股関節のレントゲンは骨の形と関節の隙間を見るもの。
-
でも実際に詰まりをつくるのは、骨のちょっとした当たり具合(FAI軽症)・臼蓋唇・腱や筋のすべり(スナッピングヒップ)・腰や仙腸関節からの関連痛など、レントゲンに写りにくいものが多い。PMC+2サイエンスダイレクト+2
-
なので「異常なし=気のせい」じゃなくて、「もう少し細かく分けて見ようね」という段階だと思ってOK。
2. “詰まり方”で4パターンに分ける
-
曲げて内側に入れると奥でつっかえる
→ FAIS(大腿骨と臼蓋の軽い当たり)や臼蓋唇に近い動きで症状が出やすいパターン。radiologyassistant.nl+2orthoinfo.aaos.org+2 -
前に上げるとポキッ・コトッと音がする
→ 腸腰筋や大転子でひっかかる“スナッピングヒップ(内側型・外側型)”が疑われる。Physiopedia+2NCBI+2 -
長く座ったあと立つと股の前がつっぱる
→ 股関節前面の軟部組織が短くなってる/骨盤前傾+大腰筋の使いすぎで“前が詰まりやすい”姿勢になってる。 -
お尻や腰から来てる感じで、股自体を動かすと余計つらい
→ 股関節そのものより腰椎・仙腸関節・殿筋トリガーポイントからの関連で股に出てるパターン。PMC+1
この4つのどれかに寄せて考えると手が打ちやすくなる。
3. FAI/臼蓋唇タイプのセルフチェック(①に当てはまる人)
-
椅子に座って、股関節を前に曲げて→内側にひねる(FADIR)
-
股の奥で「詰まる」「前に圧がかかる」「脚を戻すときに軽い痛み」が出る
→ この動きで症状が出るなら、FAIっぽい動きで当たってると推定できる。実際FAIはこの動きで症状が誘発されることが多い。radiologyassistant.nl+2Physiopedia+2
このタイプは**「曲げる角度と骨盤の位置」をいじると楽になる**ので、次の4章をやる。
4. まずやるべき3ステップ(痛みが軽くて“詰まり”だけの人)
(1) 骨盤を少し立ててから曲げる
-
猫背で股を曲げると、股関節の前が詰まりやすい。
-
椅子に座ってお尻の坐骨を立てる→そのまま脚を曲げると、可動がスッと増えることがある。
(2) 股関節前面のストレッチ
-
立位で片足を後ろに引き、骨盤を軽く後傾して前もも〜股の付け根を20〜30秒伸ばす
→ 腸腰筋や大腿直筋が短縮してると、前を常に押してしまって「詰まりやすい」状態になる。PMC+1
(3) お尻(中殿筋+深層外旋筋)の活性化
-
横向きで足を横に上げるサイドレッグレイズ
-
もしくはクラムシェル(膝だけ開く)
→ 殿筋が働くと股を「後ろに引きつつ外に開く」方向へ安定させるので、前の詰まり感が減りやすい。
これを1〜2週間やっても全く変わらないなら、次の“見落としやすいもの”を疑う。
5. 見落としやすい3つ
① 臼蓋唇(ラブラル)損傷っぽいもの
-
深部の痛み・引っかかり・コトコト音・片足立ちでの不安感がセットである
-
レントゲンで骨がきれいでも、MRI(できれば造影)で初めてわかることがある。Cleveland Clinic+2Sports-health+2
-
症状が続くなら、整形でもう一段階画像をお願いするか、股関節を見慣れてる施設に相談。
② スナッピングヒップ(腸腰筋・ITB)
-
前に上げたときに“引っかかる→外れる”みたいな感じ
-
音だけで痛くない人も多いが、炎症を起こすと前が詰まったように感じる。外側型はITBが大転子を乗り越える音が聞こえる。Physiopedia+2NCBI+2
-
痛むときは一時的に股の屈曲・脚上げの回数を減らして、腸腰筋ストレッチ+殿筋トレを優先。
③ 腰・仙腸関節・内臓からの関連
-
股を動かすと確かに痛いけど、腰を反る/ひねると同じ場所に来るときは、腰椎やSIJの関連痛を考える。PMC
-
股そのものにこだわりすぎず、腰と骨盤の評価も一緒に。
6. 受診・再相談の目安
-
股の前が急に腫れた・赤くなった・熱を持った
-
夜寝てるときも痛くて起きる
-
足がしびれる・股がカチッとロックして動かない
-
1〜2か月セルフでやっても詰まりが変わらない
→ これは「異常なし」で終わらせず、MRI/エコー/FAI用の追加X線をお願いするパターン。股は腰・骨盤・内臓とも絡みやすいので、引っかかるときは無理せず医師に戻る。PMC+1
FAQ
Q1. 股関節を“ポキッ”と鳴らすのはやめたほうがいい?
A. “鳴らすと楽になる”うちは過剰な緊張が取れているだけのこともあるけど、毎回同じ角度・同じ場所で鳴らないと動かないなら、腸腰筋や臼蓋唇の問題を隠していることもあるので控えめに。NCBI
Q2. ストレッチだけでよくなりますか?
A. 前が詰まるタイプは「前を伸ばすだけ」だとまた詰まりやすいです。殿筋や外旋筋を働かせて、股を後ろ・外に“逃がせる”ようにするのがセット。
Q3. ランニングはしてもいい?
A. 痛みが2/10以下で走り出し10分で悪化しないなら、距離を落として続けてもいいです。引っかかる角度がはっきりあるなら、その動きだけ一時的に制限。