棘上筋(supraspinatus)

マイナビコメディカル

この記事では、棘上筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

棘上筋の概要

棘上筋の起始停止

棘上筋は肩甲骨の棘上窩から起始し、上腕骨の大結節上部と関節包に停止しています。

上腕骨頭を深層で覆う回旋筋腱板(①棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋)を構成する筋肉のひとつです。

棘上筋は肩関節(肩甲上腕関節)を挙上する際に、骨頭を関節窩に引きつけて安定性を保つ役割を担っています。

もしも三角筋のみが働いて肩関節を外転させると、上腕骨頭が上方に変位して肩峰下インピンジメントを引き起こす原因になります。

肩峰下インピンジメント(肩峰と上腕骨頭が衝突)が起こると、その隙間を通過している棘上筋腱や肩峰下滑液包が損傷します。

従来の考え方では、棘上筋は大結節の上部に停止するとされていますが、近年は小結節の一部にも付着していることがわかっています。

基本データ

項目

内容

支配神経 肩甲上神経
髄節 C5-6
起始 肩甲骨の棘上窩
停止 上腕骨の大結節上部、肩関節包
栄養血管 肩甲上動脈
動作 肩関節の外転、外旋(後部線維)、内旋(前部線維)
筋体積 89
筋線維長 4.3
速筋:遅筋(%) 40.759.3

運動貢献度(順位)

貢献度 肩関節外転
1 三角筋(中部)
2 棘上筋
3 前鋸筋
4 僧帽筋

棘上筋の触診方法

自己触診:棘上筋

写真では、棘上窩で棘上筋の筋腹を触診し、肩関節を外転方向に力を入れることで収縮を感じとるようにして触知しています。

棘上筋の表層は僧帽筋上部線維に覆われていますので、実際は間接的な触診であり、できる限りに僧帽筋の緊張を抑えて行うことが大切です。

ストレッチ方法

棘上筋のストレッチ

ストレッチ側の手を身体の後ろに回して、もう片方の手で手首を掴み、そのまま引き寄せるようにして肩関節を内転させます。

筋力トレーニング

棘上筋の筋力強化トレーニング

1〜2kgの重り(ペットボトルなど)を手に持ち、肩が浮き上がらない範囲で肩関節の外転運動を反復していきます。

注意点としては、肩甲棘と上腕骨軸が一直線となった位置(scapular plane)に保つことで、棘上筋の走行を真っ直ぐにします。

通常は肩関節を水平内転30度させた位置になり、棘上筋が最も筋力を発揮しやすいポジションとなります。

アナトミートレイン

棘上筋:筋膜:DBAL

棘上筋はアナトミートレインの中で、DBAL(ディープ・バックアーム・ライン)に繋がっています。

筋膜の繋がりとしては、近位は肩甲挙筋と、遠位は上腕三頭筋と連結します。

DBALの一部に硬結が生じているケースでは、頚部・肩甲骨内側から上肢後内方・小指に向かっての痛みやしびれ感が生じます。

棘上筋が癒着しやすい場所

上の図は、肩甲骨後面に付着する筋肉を示したものですが、棘上筋は肩甲骨の棘上窩の広範囲から起始していることがわかります。

肩甲上神経

肩甲上神経が通過する肩甲切痕あたりは棘上筋と結合組織が癒着しやすく、神経が圧迫を受けると肩甲上神経麻痺を引き起こします。

肩甲切痕部の障害では、肩甲上神経の支配筋である棘上筋と棘下筋の筋力低下や萎縮がみられます。

完全に麻痺するとドロップアームテストが陽性となり、肩関節の外転や外旋に著しい筋力低下が起こります。

棘上筋は停止付近が最も拘縮が発生しやすく、ここに癒着が生じると棘上筋を伸ばしたときに筋肉の張りはないのに腱が張った状態となります。

また、患部を下にした側臥位をとると棘上筋が伸張ポジションとなるため、寝返りなどの痛みで起きるなどの夜間痛が生じます。

肩関節周囲炎(五十肩)では肩前方に炎症が生じることで、烏口上腕靱帯と肩甲下筋上部線維または棘上筋前部線維と癒着しやすくなります。

肩甲下筋上部線維と癒着すると肩関節下垂位での外旋制限が、棘上筋前部線維と癒着すると内転制限が発生します。

棘上筋が関連する疾患

  • 腱板損傷(棘上筋腱断裂)
  • 腱板炎
  • 肩峰下インピンジメント症候群
  • 肩関節不安定症
  • 肩甲上神経麻痺 etc.

腱板損傷(棘上筋腱断裂)

腱板損傷:棘上筋断裂

腱板の中で最も損傷しやすいのが棘上筋腱で、肩関節を挙上する際に肩峰骨頭間に挟み込まれやすいことに起因します。

腱板の部分的な断裂(小断裂〜中断裂)なら肩関節の挙上は保たれるため、基本的には保存療法で経過をみていきます。

棘上筋腱が完全断裂し、さらに棘下筋腱まで広範囲に断裂しているケースでは、肩の挙上が困難となるため手術が適応となります。

棘上筋にトリガーポイントが存在すると肩周囲に痛みが生じるので、腱板断裂と鑑別するために棘上筋の硬さや圧痛の有無を確認します。

腱板炎

腱板炎

腱板炎や肩峰下滑液包炎においては、棘上筋の収縮による疼痛が強いため、腱板損傷と同様に挙上制限が起こります。

ただし、痛みを抑えることで問題は解決されるため、痛み止めの注射(ステロイド注射)で症状が劇的に改善します。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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