椎間板の概要
椎間板は、上下の椎骨の間に存在する円形の線維軟骨で、衝撃吸収と可動性の確保という二つの重要な役割を持ちます。立位では、脊椎にかかる荷重の約80%を椎間板が、残り20%を椎間関節が受け止めています。
弾力性のある椎間板が介在することで、上下の椎骨はわずかに動くことができ、椎間関節と合わせて脊椎の柔軟性を実現しています。
構造的特徴
-
線維輪:外層に位置する線維性軟骨で、衝撃を支える構造体
-
髄核:中心部に位置するゲル状組織で、水分を多く含み、圧力を分散するクッションとして機能
上位腰椎では椎間板の高さは前後でほぼ同じですが、下位腰椎では前方が後方の約2倍の高さを持ち、腰椎前弯の形成に寄与しています。
神経支配と疼痛
通常、軟骨に神経は存在しませんが、椎間板では線維輪の最外層に豊富な侵害受容器があり、**脊椎洞神経(脊髄神経前枝)**からの支配を受けます。
-
炎症によりサイトカインが内層に侵入 → 線維輪内層や髄核に神経線維が侵入 → 椎間板性疼痛を引き起こすことがある
-
痛みは腰部中央に両側性に放散し、圧痛は認められず、画像や問診から推測する
片側性か両側性かは鑑別に有用です:
椎間板と椎間関節・椎体終板
-
椎間板が変性すると、**椎間関節にかかる荷重が16% → 最大70%**まで増加
-
線維輪最外層が損傷すると関節の「遊び」が増し、さらに荷重が集中
-
椎間板の上下には椎体終板があり、変性が進むと椎体終板障害を起こすこともある
→ 仰臥位で痛みが増し、座位や立位の方が楽という特徴がある
椎間板症を予防する
椎間板への圧力は座位や前屈位で強まる傾向にありますが、髄核は水分を多く含むことで衝撃吸収と圧分散に作用し、長時間に及ぶ荷重負荷に対しても抵抗性を示します。
その一方で、椎間板は剪断力(前方すべり)や捻転力(回旋運動)に対する抵抗性は乏しいため、亀裂や断裂などの損傷を受けやすいです。
外傷や変性などでプロテオグリカンが減少すると、椎間板の水分量が減少して弾力性が低下し、衝撃吸収能力も著しく低下します。
椎間板が変性した状態で長時間の座位などを行うと徐々に椎間板の水分量が低下し、腰痛を誘発することにつながります。
リハビリテーション戦略
基本方針
-
椎間板内圧を高めない姿勢をとる
-
長時間の座位や前屈を避ける
-
重いものを持つときは骨盤前傾を保持
姿勢調整
-
ランバーサポートや正座で骨盤前傾を保持。とくに座位は下位腰椎が屈曲位をとりやすいので姿勢に注意を払う
-
支柱付きコルセットで屈曲を防止
運動パターンの促通
-
ハムストリングスや腹直筋の柔軟性向上
-
長座位で骨盤前傾+ハムストリングス伸張
-
端坐位で骨盤前傾運動
-
-
腸骨筋の筋力強化
-
座位での交互股関節屈曲
-
-
多裂筋の筋力強化
-
四つ這いで対角の手足を同時にまっすぐ伸ばす
-
Q&A
Q. 椎間板症はどうやって診断するの?
A. 直接触れて圧痛を確認することはできません。問診(両側性腰痛・手のひらで広く示す)や画像診断で推測します。
Q. 椎間板症の予防には何が大切?
A. 正しい姿勢保持(骨盤前傾)、座位時間を減らす、腰椎屈曲・過伸展、回旋運動を避けることが大切です。
Q. フラットバックはどう直す?
A. ハムストリングスのストレッチ、腸骨筋の強化などで改善を図ります。
最終更新:2025-09-19
.jpg)



