片脚立位テストの方法と参考タイムについて

片脚立位テストの概要

片脚立位テストは、TUG(Timed Up and Goテスト)とともに運動器不安定症の指標のひとつとされ、日本整形外科学会より高齢者への実施が推奨されている検査方法です 。

簡易的に実施でき、かつ易転倒性との関連性が高いことから、高齢者の身体機能評価で幅広く用いられています。また、再検査信頼性(ICC=0.81〜0.91)や検者間信頼性(ICC=0.85〜0.94)が高く、非常に妥当性のあるバランス指標であることが報告されています 。

単に時間を計測するだけでなく、協調性やバランス能力の観察、さらには中殿筋などの筋機能やマッスルインバランスを評価する目的でも実施されます 。一般的に、高齢者のテストは開眼で実施します 。


事前に準備する物

  • ストップウォッチ
  • すぐに掴まれるモノがある場所
  • (必要に応じて)姿勢の崩れをフィードバック・観察するための鏡

実施方法の詳細

  1. 靴または素足で、ある程度の固さがある滑りにくい床に立つ。
  2. 転びそうになったら即座に掴まれるモノがあるそばで実施する(転倒には要注意)。
  3. 両手を腰に当て、片脚を床から5cmほど挙げてからタイムを計測し始める。
  4. 挙げた足が床に接地するか、立ち足がずれた時点で終了とする。
  5. 左右それぞれ2回ずつ測定し、最もいい記録を選ぶ(評価の目的によっては30秒を上限とする場合や、最長60秒とする場合があります)。

※上記の実施方法は、日本整形外科学会、日本運動器リハビリテーション学会、日本臨床整形外科学会が協議し、2006年4月に定義・診断基準を公表したものです。


観察のポイント

タイムだけでなく、姿勢の崩れを観察することが重要です。中殿筋の弱化や大腿筋膜張筋の過緊張があると、トレンデレンブルグ徴候(骨盤の側方偏位が2.5cm以上起こる、あるいは挙げた側の骨盤が下がる)が現れます 。また、バランスを取るための体幹の側屈、膝の内反・外反、足関節の過剰な回内(扁平足や外反母趾)などが起きていないかどうかも評価のポイントになります 。


参考タイム(Cut-off値)と転倒リスク

  • 一般的な目安: 開眼時の正常は30秒以上、閉眼での正常は10秒以上とされています。閉眼で5秒以下の場合は失調症などの機能低下が疑われます。
  • 年代別の基準: PTジャーナルの2009年10月号「高齢者の運動機能と理学療法」では、片脚立位保持時間は60歳代前半で20歳代の20%、80歳代で5-6%に低下すると報告されています。
  • 転倒リスク: 閉眼時は5秒以下、開眼時では20秒以下で有意に転倒リスクが高まることが報告されています。また、別の報告では、保持時間が5秒未満の場合、3年間における転倒リスクが約2.13倍に高まるとされています。
  • 運動器不安定症の定義: 日本整形外科学会の見解では、開眼時の片脚起立時間が15秒未満であり、かつ運動機能低下をきたす疾患を罹患しているものを「運動器不安定症」と定義しています。

その他の報告(年代別の調査結果)

■ 埼玉医科大学の調査(2007年)

高齢者977名を対象に、開眼片脚立位時間を調査した結果は以下になります。

年齢 時間
65-69歳 44秒
70-74歳 31秒
75-79歳 21秒
80歳代 11秒

75歳代での転倒群平均は男性で18.4秒、女性で16.8秒。非転倒群平均は男性で23.9秒、女性で24.6秒と有意差を認めています。運動器不安定症と診断される「15秒」というカットオフ値は、この調査で考えると75歳代の転倒群に相当する数値でした。

■ コツコツウォーク2006の調査

671名を対象にした調査では、開眼片脚起立時間が15秒未満であった者の割合を年代別に報告しています。

年齢 15秒未満
10歳代 5.2%
20歳代 5.9%
30歳代 10.4%
40歳代 7.6%
50歳代 9.9%
60歳代 12.8%
70歳代 26.8%
80歳代 55.0%

30歳代では10人に1人が15秒以下であり、運動器不安定症の予備軍と考えられます。加齢の影響が顕著になるのが70歳代からで、80歳代では2人に1人が15秒未満という結果となっています。


リハビリテーション・エクササイズとしての片脚立位

片脚立位は評価としてだけでなく、バランス能力を向上させ転倒を予防するための運動としても有効です。鏡を見ながら体幹をまっすぐに保ち、足裏の中心に体重を乗せるように意識する運動学習が推奨されます。


「一分間の片脚立位は一時間の歩行に相当する?」

一分間の片脚立位をとることは、一時間の歩行量に相当するなんて噂を聞いたことがある人は多いと思いますが、これにはやや誤解があります。

詳しく書くと、一分間の開眼片脚立位を1日に3回(左右で計6回)実施すると、股関節に加わる運動負荷量は53.3分の歩行をした場合と同じであるという意味です。

この運動で約60%に大腿骨の骨密度が改善したと報告されていますが、改善度合いは微々たるものです。なので、片脚立位運動単独に過剰な期待を持たず、歩行や他のバランス運動などを組み合わせて実施していくことが重要です。


最終更新:2026-07-11