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牽引療法の治療効果と方法|適応と禁忌について解説


牽引療法の効果について解説していきます。

牽引療法の歴史

最古の記録では、ギリシャ時代のヒポクラテスらが、骨折や脱臼の整復および脊柱の円背の治療などに牽引療法を用いていたとの記述があります。

現在、物理療法として頻繁に用いられる電動式介達牽引装置は、1952年にJudovichが電動式頸椎間欠牽引装置を発表したことが始まりとされています。

そこから脊椎牽引は急激な人気を得て、牽引療法について多数の研究や報告がなされるようになりました。

拡大解釈をすると急性期外傷やヘルニアなどに対して実施されるベッド上での持続牽引や直達牽引なども牽引療法に含まれます。

また、治療者が徒手的に脊椎間を離開させるマニピュレーションなども牽引療法のひとつと言えるかと思います。

ここでは療法士が関わる物理療法を主題とし、使用頻度が高い電動式介達牽引装置を用いた介達牽引に焦点をあてて述べていきます。

牽引療法の概要

牽引とは、関節面を引き離す、または引き離す外力が加わることで周囲の軟部組織を伸張することを目的とした治療法になります。

電動式介達牽引装置を用いた介達牽引は、主に頸椎と腰椎に使用されており、臨床的にもそれらへのアプローチ手段として重要な位置を占めています。

脊椎牽引に対して期待される効果は、周囲軟部組織の伸張、椎体間や椎間関節の離開、筋スパズムの低下、血流の改善などが挙げられます。

禁忌は、急性の外傷や炎症、関節の過可動性や不安定性がある場合、牽引による症状の末梢への波及が起こる場合などです。

牽引療法を実施する前の処置

牽引療法の効果で、筋スパズムの低下が挙げられる場合は多いですが、実際は緊張の高い筋肉を無理矢理に伸ばすのは更なる緊張を生むことになります。

そのため、筋緊張の亢進が認められる症例では、牽引療法を実施する前にリラクゼーションを加えていき、緊張を緩和させた状態で実施したほうが効果的です。

周囲軟部組織の伸展性が低下している場合は、ホットパックを併用することで組織の伸展性を向上させることにより、効果的な離開が行えるようなります。

そのように状態をみながら実施前の処置を行わないことには、効果的な脊椎の離開は起こりませんので、事前にチェックしておくことが求められます。

頸椎介達牽引について

一般的に頭部の重量は体重の約8.1%であるため、物理的に考えて座位にて頸椎椎体間を理解するためにはそれ以上の垂直牽引力が必要となります。

また、それに加えて頸椎周囲筋の筋張力も考慮する必要があります。前述したように緊張が高いと離開を妨げますので、前処置が必要となります。

ColachisらはX線上で確かめられる椎間腔の広がりから、牽引強度として13.6㎏程度、屈曲角度は15°以上のものが適当と報告しています。

しかし、周囲軟部組織の伸張や血流の改善を目的としている場合は、それより軽い8㎏程度の負荷で十分となります。

牽引療法

引用画像(1)

適応疾患 禁忌疾患
頸椎症、椎間板ヘルニア 悪性腫瘍、化膿性脊椎炎
椎間板症、椎間関節障害 脊椎分離症、脊椎すべり症
頚肩腕症候群 胸郭出口症候群
頸椎捻挫の急性期以降 重篤な関節リウマチ

腰椎介達牽引について

腰椎牽引における牽引力は、下半身の重さ、床面との摩擦力、腰椎周囲筋の筋張力を合計した以上の力が必要となります。

有効に牽引力を腰椎部にかけるためには、スプリット・テーブルを使用して床面との摩擦力を軽減することが不可欠です。

通常、腰椎牽引は体重の1/4から開始し、1/2程度の範囲までで患者の訴えに応じて増減させることが推奨されています。

牽引療法2

引用画像(1)

適応疾患 禁忌疾患
椎間板ヘルニア 悪性腫瘍、化膿性脊椎炎
椎間板症、椎間関節障害 脊椎分離症、脊椎すべり症
坐骨神経痛 妊婦、肩関節障害がある場合

牽引療法を実施する上でのポイント

牽引療法に関する研究はいくつも存在しており、文献によっては効果判定が真逆の結果となっている場合も少なくありません。

セラピストに求められるのは、その牽引療法の効果や研究報告を幅広く知り、なにを目的にどんな効果を狙ってアプローチするかを考えることにあります。

周囲軟部組織の伸張や血流の改善を目的とする場合はそれほど大きな力は必要ありませんが、椎骨間の離開にはより大きな力が必要となります。

そのように考察していきながら、しっかりと目的とする効果を発揮できるように調整していけることが重要になってきます。

腰痛に対する脊椎療法の効果

脊椎牽引に対して期待される効果は、①椎体間や椎間関節の離開、②周囲軟部組織の伸張、③筋スパズムの低下、④血流の改善などが挙げられます。

最も重要なのは①の離開効果であり、これは徒手的にアプローチすることはできない部分で、牽引療法だけの特別な治療効果ともいえます。

報告によると、スプリット・テーブルを使用した場合は、後方腰椎間の離開には22㎏、前方腰椎間の離開には45㎏の牽引力が必要とされています。

また、一般的に椎間関節を十分に離開するためには、体重の50%以上の牽引力が必要だと考えられています。

椎骨間を離開するために必要なこと

椎骨間の離開を抑制する因子として、①床面との摩擦力、②腰椎周囲筋の筋張力、③周囲軟部組織の伸展性低下が挙げられます。

これらに問題が生じている場合は、椎骨間を効果的に離開することができず、場合によっては組織の損傷を招くリスクもあります。

通常、腰椎牽引にはスプリット・テーブルが使用されますが、これは床面との摩擦力を最小限に抑える効果があります。そのため、摩擦力についてはセラピストが特に注意する必要はありません。

次に腰椎周囲筋の筋張力ですが、腰痛がある症例では、ほとんどの場合に周囲筋の過度な緊張が認められます。なので、牽引前にできる限りのリラクゼーションを行い、弛緩させておく必要があります。

周囲軟部組織の伸展性低下については、主に関節包や靭帯などの拘縮が関わっているため、こちらも実施前に弛緩させる必要があります。方法としては、温熱療法やストレッチングなどが用いられます。

以上の事前準備を行うことにより、牽引療法による椎骨間の離開は最大限の効果を発揮することができるようになります。

椎骨間の離開で改善する腰痛症

腰痛症の85%は非特異的腰痛といわれており、明確な原因部位を診断することが困難とされています。

原因を特定しないままに全ての腰痛症に牽引療法を適用したとしても、効果が出ないのは当たり前の話なのです。

牽引療法で効果があると考えられる疾患は、①椎間板症(椎間板膨隆)、②軽度の椎間板ヘルニア、③椎間関節障害の三つです。

これらの原因を特定する方法については、「非特異的腰痛症について」という記事に詳しく書いていますので、そちらを参考にしてみてください。

牽引療法には椎間板の整復効果がある

椎体間の離開が起きると、椎間板内圧の低下によって吸引力が生じ、椎間板の転位部分を中心に向かって引き戻すことができます。

これは多くの研究によって証明されており、牽引後に腰痛やその関連症状が緩和する最重要な効果といえます。

前述したように、牽引後は筋スパズムの低下や血流の改善も同時に起こっているため、その効果によっても腰痛の緩和は起こります。

どちらの効果かを正しく鑑別するためには、実施後にどれだけの期間にわたって効果が持続したか、神経症状に変化は起きたかを評価する必要があります。

もしも椎間板膨隆や椎間板ヘルニアの整復が起きているのであれば、効果の持続時間は長く、神経症状の改善効果も認められるはずです。

ガイドラインでは効果なし?

腰痛症のガイドラインでは慢性腰痛に対する牽引療法は効果なし、腰椎椎間板ヘルニアのガイドラインでは牽引療法の効果は不明と書かれています。

それらの理由から、牽引療法は効果がないものと考えている医師やセラピストは非常に多いのが現状です。

しかし実際は、効果があると考えられる実施対象に細かく絞っておらず、離開が効果的に起こるような事前準備も行われてはいません。

その状態で無差別に牽引療法を実施しても効果はありませんし、ガイドラインのような結果になることは当然といえます。

正しく使用することで牽引療法には確かな効果が認められます。椎骨間の離開に関しては、唯一の効果的なアプローチ手段になります。

以上のことを理解していただき、今後は脊椎牽引を実施するようにしていただくと高い効果を実感できるようになるかと思います。

お勧めの一冊

引用画像/参考資料

  1. 株式会社日本メディックス

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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