理学療法×AI:10年で代替される業務と残る力

何がAIで代替されやすい?

  • スクリーニング/トリアージ:問診票の自動要約、危険徴候のフラグ、受診先の振り分け

  • 定量評価の前処理:姿勢・歩行解析(スマホ/ウェアラブル動画の関節角度推定、歩数・対称性・荷重量の自動抽出)

  • 記録・事務:SOAP自動ドラフト、ICFコード候補、保険請求のチェック

  • セルフエクササイズの処方と順守管理:個別化メニューの自動生成、フォーム判定、進捗に応じた負荷調整・リマインド

  • 教育コンテンツ作成:患者向け図解、リスクコミュニケーション資料の自動生成

何が“人でしかできない”か?

  • 治療同盟の構築:恐怖回避思考の是正、行動変容の動機づけ(MI)、価値観・文脈に寄り添う判断

  • 触診・徒手評価/介入の妙:微細な組織特異的フィードバック、痛み・抵抗のニュアンスを汲む調整

  • 臨床推論の統合:多疾患併存、薬剤・心理社会因子・生活環境を踏まえた優先度づけ

  • 安全管理と倫理的判断:急変対応、虐待/自殺リスク察知、目標設定における価値判断

時間軸の見通し(10年スパン)

  • 1–3年:記録自動化・遠隔モニタリング・AI姿勢/歩行スクリーニングが普及。現場負担軽減が主眼。

  • 3–7年:個別化運動処方(痛み・疲労・睡眠・活動量の連結最適化)、転倒/再発予測モデルの実装。

  • 7–10年:ロボティクス・神経調節デバイスとAIの統合、家庭/施設での半自律的リハが進展。ただし臨床意思決定と対人支援はPTが核

仕事の中身はこう変わる

  • “やる”から“設計する”へ:AIが計測・記録・反復指導を担い、PTは目標設定・優先度付け・合併症管理・教育・行動変容に集中。

  • データ駆動の臨床:可視化ダッシュボードで睡眠/活動量/痛み日誌/EMG/関節角度を統合し、セッションごとに負荷をチューニング。

  • チーム横断ハブ:整形外科・ペイン・精神科・栄養・産業医と連携し、AIレポートを読み解き介入へ翻訳。

置き換えられにくいPTになるためのスキル

  1. コミュニケーション×行動科学:MI、CBT要素、ペインエデュケーション

  2. データリテラシー:可穿戴センサー/映像解析の指標を読み、臨床意思決定に組み込む

  3. プロトコル設計:目標設定→介入→評価→再計画の“臨床アルゴリズム”を作り運用

  4. 専門性の尖り:術後リハ、スポーツ復帰、慢性痛、神経リハ、呼吸/ICU、ウィメンズヘルス等のニッチ

  5. デジタル・プロダクト活用:遠隔リハ、患者用アプリの実装/選定、院内ワークフロー整備


結論

AIは評価の定量化・事務軽減・遠隔支援でPTを大きく助けますが、人間理解・触診の妙・行動変容を導く力は代替困難です。
**「AIに使われる側」ではなく「AIを設計・監督する側」**に回ること——それが今後10年に必要となるスキルです。