痛みの原因と特徴を組織別にわかりやすく解説

組織別に痛みの原因と特徴について解説していきます。

1.骨の痛み

膝関節の構造

よく変形性膝関節症などで「骨が変形しているから痛い」と説明されることがありますが、それは大きな間違いです。

基本的に関節部分の骨(関節軟骨)に神経は存在しないため、基本的にどれだけ関節軟骨がすり減って変形しても痛みは生じません。

しかし、関節軟骨の下部に存在する骨には血管が通過しているため、圧迫された状態が続くと虚血を起こし、鈍痛を生じることがあります。

基本的に骨で痛みを感じるのは「骨膜」であり、骨膜は骨幹部の外側に存在し、関節手前で関節包へと移行します。

骨膜は非常に神経が豊富であり、機械刺激が加わると激しい痛みを起こします。

骨膜の痛みは「骨折」や「骨膜炎」などで生じ、骨膜炎の代表例がシンスプリントになります。

2.関節包の痛み

関節包は骨膜が関節部で移行したものなので、骨膜と同様に神経を豊富に含んでいます。

関節包は外側の「線維膜」と内側の「滑膜」の二層構造となっています。

滑膜には血管が豊富に存在しており、関節液を分泌することで関節軟骨に栄養を与えています。

その滑膜に炎症が起きると関節液を過剰に分泌し、いわゆる関節内に水が溜まった状態となります。

滑膜の炎症は、主に関節軟骨が摩耗して剥がれ、その一部が関節内を遊離して滑膜を刺激することで生じます。

3.皮膚の痛み

最も身体の表層にある皮膚は、外部の刺激から身体を守るために神経を豊富に含んでいます。

とくに手の指先や唇などは触れる機会が多いため、神経も非常に密となっています。

骨膜や関節包、皮膚といった組織は痛みの場所が明瞭であり、強い鋭利痛を訴えることが特徴です。

これらは外傷による炎症が基本にあるため、人体は危険信号を確実に伝える必要があります。

損傷が治癒すると同時に痛みは治まるので、治療上の指標としては極めて重要な所見となります。

4.筋・筋膜の痛み

筋肉の痛みについては、①筋損傷、②付着部の牽引痛、③筋攣縮(血流障害)に分けて考える必要があります。

筋損傷は外傷や肉離れなどで生じ、筋実質部(筋線維)を損傷することで起こります。

骨にしてもそうですが、基本的に外側部分(膜)に神経が高密度に存在しているため、筋肉も膜の部分で強い痛みを感じます。

筋肉の膜(筋膜)は5つに分類することができます。

種類 特徴
①浅筋膜 皮下組織の中に存在して全身を覆う最も浅層の筋膜
②深筋膜 浅筋膜の下に位置して筋を連結して全身を覆う膜
③筋外膜 複数の筋周膜を包んで筋肉を覆う膜
④筋周膜 複数の筋内膜を包む膜
⑤筋内膜 複数の筋原線維を包む膜

浅筋膜に関してはほぼ筋肉とは関係なく、「fascia」を筋膜と訳したことによる弊害なので、考えるべきは深筋膜までになります。

深筋膜までの筋膜を中心とした損傷が生じると筋損傷として痛みが起こりますので、外傷後は注意してアプローチしてください。

次に付着部の牽引痛ですが、筋肉は関節付近(関節包)に付着しているので、筋肉の過緊張や筋膜の滑走不全が存在すると付着部に牽引ストレスが加わります。

問題のある場所よりも離れたところに痛みが生じるので、関連痛などとして表現されることもあります。

最後に筋肉の血流障害(虚血)による痛みですが、これは炎症の痛みではないため、重くだるい鈍痛が特徴です。

例えば、肩こりなどは血流障害が主因であるため、原因の筋肉をマッサージすることで即時的に血流が改善して痛みが楽になります。

5.腱の痛み

筋肉は大きく分けて筋組織と腱組織に分けられますが、筋組織は柔軟性に富んでいますので、そのまま骨に付いても力が上手く伝達していきません。

その弱点を補うために筋肉は付着部のちかくに移るにつれて徐々に硬くなっていき、腱となって骨に付着します。

筋肉は赤色に、腱は白色に見えますが、これは血流量に左右されます。

腱組織は筋組織に対して血流が乏しいため、一度損傷すると治癒しにくいのが特徴です。

発生初期には重くだるい感覚が出現しますが、それを無視して使い続けると炎症が起こって痛みが生じます。

原因が炎症なのでステロイド注射を実施するとすぐに痛みが楽になります。

6.靱帯の痛み

靱帯は関節の制動に働くため、その構造は極めて強靱となっています。

靱帯の痛みは腱の痛みとよく似ており、どちらも血流が十分ではないので損傷することで痛みが長期となるケースは多いです。

代表的なものに足関節捻挫がありますが、1年以上経っても痛みが続いている場合もあり、足関節捻挫後遺症と呼ばれます。

そのようなケースでは、筋膜の障害(滑走不全)が存在していることが多いため、靱帯の痛みと混同しないように注意が必要です。

7.内臓の痛み

内臓由来による痛みの場合は、血流障害が基本にあるため、深部に鈍い痛みを感じることになります。

食後にランニングをしたら横腹が痛くなるのは、胃の消化に必要な血液が供給されずに痙攣を起こしているからといわれています。

姿勢を変えても痛みが変化しないことが特徴で、食事に伴って痛くなったり、月経時に痛みが強くなるといった場合もあります。

各臓器で特徴的な関連痛領域や機能低下が存在しますので、そのあたりも勉強しておくと役立ちます。

8.神経の痛み

痛みはすべて神経を伝わって脳に情報が送られていますので、ここでは神経が直接的に圧迫を受けた場合の痛みについて解説していきます。

直接的に圧迫される代表的な疾患が腰椎椎間板ヘルニアですが、通常、正常な神経を圧迫しても痛みは起こらず、しびれが生じます。

強い痛みがある場合は神経に炎症が起こっている可能性があり、その際は軽い刺激でも激痛を訴えることになります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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