まずは膝痛の原因(疼痛誘発組織)ですが、①筋・筋膜、②膝蓋下脂肪体、③滑膜(炎症性)、④半月板の4つに分類できます。
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今回はこの中でも、筋・筋膜性膝痛についてわかりやすく解説していきます。
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まずは膝関節内側に痛みが出るタイプですが、臨床的に鵞足炎とも呼ばれますが明確な炎症がないことも多く、状態を正確には表現できていません。
主な原因は大腿内側に位置する筋・筋膜の滑走不全に伴い、付着部への牽引ストレスに起因しています。
大腿内側の筋・筋膜の滑走不全を引き起こす原因としては、膝関節外反を抑制するために緊張することが挙げられます。
女性は膝関節外反(X脚)となりやすいですが、その理由に過度な大腿骨前捻角という構造的な問題があります。
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大腿骨前捻角が大きいと骨頭のハマりが浅くなるので、それを修正するために大腿骨は内旋位をとるようになります。
大腿骨が内旋するということは内股になるということであり、股関節は内転方向に動きます。
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身体というの正中を保つために関節が調整されるので、股関節が内転すると膝関節は外反します。
このバランスをという考え方は非常に重要であり、どの関節をどの方向に調整すべきかを具体的にイメージすることに繋がります。
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膝関節外反は足部からの影響も受けますが、足部に関しては内反している場合も、外反している場合も存在します。
両者の違いは足部の位置が関係し、足底の位置が内側に存在していると、先ほどの調整理論と同様にバランスをとります。
足底の位置が外側に存在していると足部外反のみでは膝の中心が内側まで調整されないので、膝関節外反まで引き起こします。
これも図で書くとイメージしやすいですが、おそらく初見だと理解しにくいと思うので、普段から正中に調整することを意識してみてください。
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次に膝関節内側痛の鑑別ですが、内側半月板性疼痛との鑑別が重要となります。
筋・筋膜性疼痛は若年者に多いことが特徴で、受傷機転がない若年者だと最初に疑うことができます。
圧痛は大腿内側の筋・筋膜に存在し、膝関節内側の裂隙には圧痛がないため、内側半月板と鑑別することができます。
また、前述したように膝関節が外反傾向をとりやすいのも筋・筋膜性膝痛(内方型)の特徴です。
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筋・筋膜性疼痛を治療するうえで知っておきたい知識として、筋膜上の機能的な繋がり示したディープ・フロント・ラインです。
股関節の内転筋群は腸腰筋や後脛骨筋と機能的な繋がりを持っているので、それらの筋肉の緊張は直接的に膝関節内側の痛みに直結します。
例えば、足部が外反していると足部の内反に働く後脛骨筋が緊張するので、それは結果的に膝関節内側の筋膜に牽引ストレスを与えます。
足部から調整したほうがいいのか、股関節から調整したんほうがいいのか、その判断は連結を理解していると考えやすいです。
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次に治療の方法ですが、痛みの原因は牽引ストレスなので、タイトになっている組織をリリースすることで痛みが緩和できます。
ただし、膝関節外反を抑制するために緊張している可能性が高いので、緩めると逆に外反を助長するリスクも考慮しなければなりません。
次に正中を保つためのバランス調整ですが、股関節内転が膝関節外反の原因なら、股関節外転の運動パターンの促通が必要です。
ただし、こちらも大腿骨前捻角が大きく、股関節の不安定さを補うために股関節が内転している可能性も考慮して対応していく必要があります。
患者教育については、原因の筋・筋膜にストレスのかかる動きを制限することを目的に指導していきます。
例えば、ウォーキングが主なストレスの場合は、しばらく中止にしていただくか、サポーターを使用するなどして膝関節の外反を抑制します。
ここまでが基本的なアプローチになるので、ぜひとも明日からの臨床に役立ててみてください。
ちなみに筋・筋膜性腰痛は内側だけでなく、外側にも前側にも、後側にも出やすいことが挙げられます。
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外方型は腸脛靱帯炎と診断されることが多いですが、こちらも炎症はほぼないので、鵞足炎と同様に状態を正確には表現できていません。
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前方型は膝蓋腱炎と診断されることが多いですが、こちらは痛みの出現場所や炎症の強さにバラつきも多いです。
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後方型はベーカー嚢腫と診断されることが多いですが、あまり水が溜まっていないケースもあります。
以上のように筋・筋膜性膝痛は場所によって様々な診断名を付けられがちですが、根本的な原因は牽引ストレスになります。
そのことを理解して、①組織リリース、②運動パターンの促通、③患者教育といった基本的なアプローチを行えば問題ありません。
治療は難しいですが、難しく考えすぎる必要はなく、自分なりにシンプルにまとめて臨床に取り入れてみてください。