筋・筋膜性頭痛の原因と治療について解説していきます。
筋・筋膜性頭痛の概要
肩コリ(首コリ)がひどい女性は頭痛を伴いやすいですが、その理由として、筋膜への過剰な牽引ストレスがあります。
筋肉が硬くなると筋肉を覆う筋膜まで引っ張られることになり、とくに頸部の筋肉は頭部の筋膜にストレスを与える原因となります。
そのため、頭部への直接的なアプローチ以外として、頸部の周囲筋(頸部脊柱起立筋、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋など)へのリリースも必要です。
筋膜は全身を覆っていますが、そこには明確なラインが存在しており、それによって頭痛が起きる場所も変化していきます。
以下に、筋膜の滑走不全が生じやすい場所とそのラインについて掲載します。
頭痛①:後方ライン
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一般的な頭痛のひとつであり、前頭部から後頭部までの疼痛、頭冠の疼痛、頭重感、頭皮の感受性が高いなどの症状がみられます。
上を向くことで頭痛やめまい感が強調されることがあり、前庭機能障害や脳神経障害がないケースでは筋膜障害を疑うことが必要です。
筋膜の滑走不全が起こりやすい場所として、外後頭隆起レベルでの頭外被筋膜、第5・6頚椎レベルの脊柱起立筋があります。
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後方ラインは前頭部まで強く影響を与えるので、生え際あたりの筋膜の高密度化や圧痛を確認しながらリリースしていきます。
前頭筋膜に硬さがあるケースでは、鼻がつまった感じを訴えることも多いです。
頭痛②:内方ライン
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内方ラインは後方ラインよりも正中に位置する筋膜ラインであり、後頭部痛やめまい、不安定感などが生じます。
筋膜の滑走不全が起こりやすい場所として、項靭帯、第7頚椎レベルの棘上靭帯があります。
頭痛③:外方ライン
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外方ラインの頭部や頸部に滑走不全が存在すると、側頭部の疼痛や拍動、片頭痛、眼が重い感じ、三叉神経痛、歯痛、顎関節障害などが生じます。
筋膜の滑走不全が起こりやすい場所として、甲状軟骨レベルでの胸鎖乳突筋の外側縁、側頭筋、咬筋があります。
頭痛④:外旋ライン
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外旋ラインの頭部や頸部に滑走不全が存在すると、側頭部痛や灼熱感を伴う片頭痛、頭皮の知覚過敏、めまい、耳鳴りなどが生じます。
筋膜の滑走不全が起こりやすい場所として、上耳介筋や肩甲挙筋が付着する第2頚椎や第3頚椎の横突起があります。
リハビリテーション
筋膜の高密度化している部位を見つけるためには、まずはどのような動きで痛みが生じるかを確認する必要があります。
例えば、頸椎後屈で痛みが生じる場合は、頸部後方(または頸部前方)の高密度化が疑われるので触診にて問題がないかを確認します。
具体的には、筋膜(結合組織)にざらつきや凹凸などの粗さがないか、筋線維に攣縮がないかを中心にみていきます。
活性化している高密度化の部分を押すことができたら、針で刺すような痛みを訴えることになります。
そこから周囲を念入りに触診していき、最大感覚部位(最も痛みが強い場所)を聴取しながら見つけていくことが大切です。
治療対象となる深筋膜の厚さは約1㎜で、斜め・縦・横方向の3層構造になっており、それぞれの方向へ柔軟に動きます。
高密度化した部分を効果的に解きほぐすことができる方法が筋膜マニピュレーションであり、筋膜の構造に着目した治療法になります。
筋膜治療で重要なのは収縮(攣縮)のリリースではなく、筋膜をゲル状に流動化することにあります。
そのためには、筋膜に最大限の摩擦を与えて熱を生じさせる必要があり、通常は一箇所に2〜10分の施術を要します。
そこに原因がある場合は、施術を開始してから2〜3分後に関連痛(普段感じている痛み)が出現することがあります。
具体的な方法としては、硬くて鋭い圧痛のある協調中心に対して、垂直方向に圧迫を加えた状態で上下・左右・斜めと細かく動かして滑走を促します。
痛みは10段階で7〜8ほどで訴える場合が多く、その痛みが半減するまで筋膜マニピュレーションを継続していきます。
通常は約4分ほどで半減し、手にも筋膜が緩んだ感覚が伝わってくるので、それが終了の合図になります。