股関節前方の痛みの原因とリハビリ治療

股関節前方に起こる痛みの原因とリハビリテーションによる治療方法について解説していきます。

①股関節前方不安定症

股関節前方不安定症に伴う恥骨筋由来の鼡径部痛は、膝関節が外向きにある変形性股関節症の患者に発生しやすいことが特徴です。

理由として、がに股で歩くと股関節は外転・外旋位となり、恥骨筋は常に伸張位に保持された状態となるからです。

伸張位にある筋肉は出力を発揮しにくく、その状態で歩き続けると負荷が加わることにより損傷しやすくなります。

そのため、歩行時は股関節を屈曲させて恥骨筋を緩める疼痛回避動作がみられ、身体を伸ばす(股関節を伸展する)と痛みが起こります。

治療方法としては、恥骨筋の負担を軽減するために歩容を修正したり、形成されたトリガーポイントをリリースします。

②腸腰筋の攣縮

変形性股関節症に伴う腸腰筋由来の鼡径部痛は、膝関節が内向きにある患者に発生しやすいことが特徴です。

変形性股関節症では先天的に臼蓋形成不全などを持っており、骨頭に対して関節窩が浅く、関節の動きが不安定になっています。

そのような不安定性を補うために腸腰筋や内転筋群が収縮し、股関節を屈曲・内旋させて骨頭を関節窩に押し付けています。

股関節の伸展運動では腸腰筋に伸張ストレスが生じるため、攣縮や短縮があると疼痛を誘発することになります。

治療方法としては、腸腰筋をマッサージして緊張を緩め、そこから軽く伸長位に保持してストレッチしていきます。

③FAI(股関節インピンジメント症候群)

股関節前方の痛み:股関節インピンジメント症候群

FAIは、大腿骨頚部の肥厚や寛骨臼の過被覆などの骨形態異常によって、両者がインピンジメント(衝突)を起こすことで発症します。

変形性股関節症の初期症状として発生しやすく、主に傷害を受けるのは前上方の股関節唇で、股関節を屈曲する際に挟み込まれて痛みが生じます。

そのため、症状は股関節の屈曲制限と鼡径部痛であり、無理矢理に屈曲させると損傷を助長するので注意してください。

30〜40歳代と比較的に若い年齢で発生し、原因の根本には先天的な骨形態異常が存在するため、治療では進行を予防することが大切です。

具体的には、股関節の深い屈曲運動(疼痛誘発運動)を避けるようにし、大腿骨と関節唇の衝突がない動きを指導します。

④大腿骨頭壊死症

股関節前方の痛み:大腿骨頭壊死症

大腿骨頭壊死症には、原因がはっきりしている症候性大腿骨頭壊死症と、原因不明の特発性大腿骨頭壊死症のふたつがあります。

前者には骨折などの外傷やダイビングによる血管の空気塞栓、放射線治療の副作用などとして発症します。

後者は原因不明ではありますが、多量のステロイド投与によるものや、アルコール性のものが報告されています。

発症初期は単純X線写真ではわからない場合も多いため、確定診断のためにMRIや骨シンチグラフィ検査などが必要となります。

治療方法として、大腿骨頭の圧壊が少ない初期は保存的治療が選択され、荷重のかかる動作の制限や杖などの歩行補助具の使用を行います。

2〜3年で骨頭壊死部分が修復される可能性もあるため、手術を回避するために生活指導を徹底します。

⑤股関節内転筋炎

股関節内転筋炎は運動習慣があるヒトに発生しやすく、股関節を柔らかくするために無理なストレッチするなどして起こります。

治療方法としては、損傷した組織が治癒するまでは運動を避けるようにし、炎症や痛みが落ち着くのを待ちます。

その後は疼痛の原因筋をマッサージして緊張を緩め、そこから軽く伸長位に保持して徐々にストレッチしていきます。

⑥脱腸

高齢者で股関節の付け根に痛みを訴える場合は、脱腸(鼠径ヘルニアまたは大腿ヘルニア)の可能性があります

脱腸は腹壁が老化して弱り、腸が飛び出すことで起こります。鼠径部に明らかな膨らみがあるので視診でわかります。

治療方法としては、ヘルニアは自然治癒しませんので、根治のためには手術療法が必要となります。

ただし、命に関わる病気ではないため、痛みがない場合は無理に手術をする必要はありません。


vc

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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