肩甲上神経の概要(C5–C6[±C4])
- 肩甲切痕:上肩甲横靭帯の下のトンネルを通過し、腹側から背側に回り込んで棘上筋へ枝を出します。
- 棘窩切痕(スピノグレノイドノッチ):肩甲棘の外側で走行を内側に急激に変え、下肩甲横靭帯の下を通過して棘下筋へ至ります。
主な絞扼部と症候
絞扼される部位によって、麻痺する筋肉が異なるのが特徴です。
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絞扼部位
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名称
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典型像と特徴
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肩甲切痕
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肩甲切痕症候群
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棘上筋と棘下筋の双方が脱神経・萎縮します。外転初期と外旋の筋力がともに低下し、肩関節上部から後方への不明確な自発痛を伴うことがあります。
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棘窩切痕
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棘窩切痕症候群
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棘上筋への分枝の後に絞扼されるため、棘下筋のみが単独で萎縮・麻痺します。若年のオーバーヘッドスポーツ(バレーボールや野球など)で好発します。また、SLAP損傷(上方関節唇損傷)に伴う後上部の**傍関節唇嚢胞(ガングリオン)**による圧迫が典型的な原因です。
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斜角筋隙
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斜角筋症候群
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(胸郭出口症候群)上幹レベルの圧迫では肩甲上神経を含む複数神経で症状が出ますが、幹分岐後の下位では巻き込まれにくい傾向があります。
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発生メカニズム(解剖・運動学からの考察)
見落としを防ぐ鑑別ポイントと評価のコツ
視診と触診
- 棘上窩・棘下窩のボリューム低下や陥凹を確認します。
- 肩甲骨のマルポジション(下方回旋、前傾、外転)の有無を左右差で比較します。
徒手筋力テスト・疼痛誘発
- **棘上筋テスト(SSPテスト / empty canなど)と棘下筋テスト(ISPテスト / 下垂位外旋抵抗など)**を行います。
- 棘上筋の筋力は十分(SSPテスト陰性)であるにもかかわらず、棘下筋の筋力が極端に低下(ISPテスト陽性)している場合は、棘窩切痕での絞扼(棘下筋単独萎縮)を強く疑います。
- 肩甲骨を最大外転位や下制位へ他動的に操作し、肩甲上神経への牽引によって肩上部の関連痛が再現されるかを確認します。
画像診断の活用
- 超音波 / MRI:SLAP損傷に伴う関節唇近傍のガングリオン(多房性嚢胞性病変)の有無を確認します。
- MRIのT2強調像やSTIR像では、脱神経を来した棘上筋や棘下筋が高信号を示すため、神経障害の同定に有用です。
- ドロップアームテストは腱板断裂の鑑別に有用ですが、神経麻痺との鑑別にはエコー等の画像所見が不可欠です。
リハビリテーション
1) 負荷コントロール
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オーバーヘッド動作の反復や、肩甲骨が過度に外転・下方回旋するような牽引・圧迫肢位を回避します。急性期は痛みの出ない範囲でのROM維持に努めます。
2) 肩甲帯再教育(SICK肩甲骨対策)
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肩甲骨のマルポジションを修正することが極めて重要です。肩甲骨の上方回旋・内転・後傾を促通するため、前鋸筋、僧帽筋(中部・下部)を賦活させ、小胸筋などのタイトネスを改善します。胸椎の伸展可動性改善も神経の牽引ストレス軽減に寄与します。
3) 筋機能と神経滑走
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棘上筋・棘下筋は、低負荷・高回数で痛みのない範囲から収縮を促します。急性期の高負荷な外旋抵抗運動や反復投球は避けます。肩甲切痕・棘窩切痕周囲の軟部組織のモビライゼーションを行い、過度な牽引を避けながら神経滑走を促します。
4) 医療連携
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ガングリオンによる圧迫が明白な場合や、保存療法(肩甲骨運動の改善など)を行っても症状が軽快しない難治例では、嚢胞の穿刺吸引や、関節鏡視下での嚢胞切除および関節唇修復術が適応となります。
よくある質問(Q&A)
Q. 根支配はC5–6で正しい?
A. はい。主根はC5–C6で、まれにC4が参加することもあります 。
Q. 棘下筋だけがやせている。断裂?それとも神経障害?
A. 棘下筋の単独萎縮と外旋筋力低下は、棘窩切痕部での肩甲上神経絞扼を強く示唆します 。オーバーヘッドアスリートでは特に疑い、MRIや超音波エコーでガングリオン(傍関節唇嚢胞)の有無をチェックすることが重要です 。
Q. 斜角筋症候群でも肩甲上神経は障害される?
A. 斜角筋隙(上幹レベル)の圧迫なら、肩甲上神経を含めて上幹領域に影響が及び得ます。しかし、肋鎖間隙や小胸筋下など下位の胸郭出口では、肩甲上神経はすでに枝分かれしているため巻き込まれにくいです。
Q. いつから筋力トレーニングを始める?
A. 疼痛や神経への牽引・刺激所見が沈静化し、肩甲骨のアライメント(マルポジション)が修正されてから、低負荷・高回数で開始します 。過負荷な外旋や投球は段階的に復帰させます。
Q. 予後は?
A. 動作不良による牽引性ニューロパチーは、肩甲骨の運動を考慮したリハビリテーションにより数週〜数か月で改善する例が多いです 。ガングリオンによる圧迫の場合は、穿刺や鏡視下での嚢胞切除等による除圧で速やかに改善することもありますが、原因となる関節唇損傷が残存していると再発する可能性があります 。
最終更新:2026-06-30

