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肩甲下筋

肩甲下筋に関する充実したデータ(ストレッチ、筋力トレーニング、マッサージ方法など)をここでは閲覧できます。目次は以下になります。

肩甲下筋の概要

肩甲下筋(subscapularis)は肩甲骨の前面に付着している大きな筋肉で、前外側を走行しながら上腕骨の前面へと付着しています。

その走行から上腕骨を内側に回転させる働き(肩関節内旋および水平内転)を持っています。

さらに上腕骨の回転軸から上方に位置する線維(上部線維)には肩関節外転の作用が、軸より下方に位置する線維(下部線維)には肩関節内転の作用があります。

分離して動かすことは困難であるため、臨床的には筋束の多い下部線維の作用(肩関節内転)が記載されていることが多いようです。

起始部(肩甲骨側)は6〜7つの筋束から構成されており、停止部(上腕骨側)に向かうにつれて収束していきます。起始部は胸郭に覆われているため、触診するためには胸郭と肩甲骨の間に指を滑り込ませる必要がありますが、その全てを触知することは困難です。

肩甲下筋に筋力低下(出力不全)が起こると結帯動作(後ろのポケットに手を伸ばす、トイレのときにお尻を拭くなど)が困難となり、上腕骨頭の前方偏位が起こります。また、攣縮(過度な緊張)がある場合は肩関節の外旋運動が制限されます。

 1.前方から見た肩甲下筋
肩甲下筋|正面
 2.側方から見た肩甲下筋
肩甲下筋|側面
 3.後方から見た肩甲下筋
肩甲下筋|後部
支配神経 肩甲下神経
髄節 C5-6
起始 肩甲骨の前面、肩甲下窩
停止 上腕骨の小結節、小結節稜の上部
栄養血管 頸横動脈、肩甲下動脈
動作 肩関節の内旋,水平内転
筋体積 319㎤
筋線維長 8.9㎝

腱板筋群と肩甲下筋の役割

腱板筋群(ローテーター・カフ)は、①肩甲下筋、②棘上筋、③棘下筋、④小円筋の4つの筋肉から構成されており、不安定な肩関節周囲を取り囲んで安定した支点を与えています。

腱板筋群の中で唯一、肩甲骨の前面から起始しており、広背筋や大円筋とともに肩関節内旋運動の主力筋として作用します。

肩甲下筋の深層線維は肩関節包に直接付着しており、関節包を通して棘上筋腱との連結を持つことになります。

腱板構成筋全体における最大発揮張力の割合は、肩甲下筋53%、棘下筋22%、棘上筋14%、小円筋11%となっており、内旋筋(肩甲下筋)と外旋筋(その他)の横断面積はほぼ等しく、これらが同時に張力を発揮することで肩関節は安定した支点を得ることができます。

棘上筋や棘下筋、小円筋がそれぞれ1本ずつの筋内腱からなる羽状筋であるのに対し、肩甲下筋のみは複数の筋内腱からなる多羽状筋になっています。

肩関節腱板筋

筋性部と腱性部

通常、筋肉の付着部は腱となっていますが、肩甲下筋は腱性に停止する部位と筋性のまま停止する部位に分かれています。

腱性に停止する部位は停止腱の近位部、筋性に停止する部位は遠位部となっており、その割合は腱性部が1/2~3/4を占めます。

筋性部のほうが柔軟性が高いため、伸張した際に伸び率が大きくなります。腱性部は柔軟性が低いため、伸張した際に制限の度合いが強くなります。

筋性部の多くは肩甲骨外側縁から起始する筋束に多いため、体表から触知することが可能です。この部分の柔軟性が失われている場合、肩関節の可動域制限(外旋制限)をきたしやすくなります。

肩関節のポジションと筋活動

肩関節の動きを診る際に、1st(下垂位)、2nd(外転90度)、3rd(屈曲90度)で確認しますが、肩甲下筋はそれぞれのポジションで筋活動が異なります。

ファーストは上部線維が伸張位となるために筋活動が大きく、セカンドでは下部線維が伸張位となるため筋活動が大きくなります。

サードでは上部線維と下部線維の両者が弛緩するため、他のポジションよりも筋活動は少なくなります。

これは筋肉がやや伸張位のほうが筋出力が発揮しやすいといった特徴を踏まえて確認していくことが重要です。

インナーマッスルの鍛え方

肩甲下筋などのインナーマッスルを鍛える場合は、できる限りにアウターマッスルの収縮が入らないことが前提となります。ですので、基本的には低負荷で高頻度の運動が推奨されます。

肩甲下筋の場合は、チューブを肘の高さに設置して握り、大胸筋や三角筋などの収縮が入っていないかを確認しながら引き寄せる動作を繰り返します。

アウターマッスルの収縮が強まる負荷量は人によって異なりますが、およそ2〜3㎏ぐらいといった軽い負荷にて実施していきます。

また、疲労が蓄積されたらアウターマッスルの代償運動が入ってきますので、その時点で運動は一度終了とします。

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肩甲下筋の運動貢献度(順位)

貢献度 肩関節内旋
1位 肩甲下筋
2位 大胸筋
3位 広背筋
4位 大円筋

※肩関節の水平内転にはほとんど貢献しません。

肩甲下筋の触診方法

肩甲下筋は肩甲骨前面に付着しているため、その大部分は触知することができます。そんな中でも、わずかながらに三箇所からの触診が可能となっています。

まずひとつめが停止部で、上腕骨小結節に指を当てた状態で肩関節の内旋運動をしていただくことで、付着建部の動きを触知することが可能です。

次に肩甲骨外側縁前面部で、大円筋と広背筋の内側より指を入れて、筋腹を腋窩から肩甲骨に押し当てるようにして触知していきます。その際に肩関節を屈曲位にしておくとより触れやすいです。

最後は肩甲骨内側縁部で、手を背中に回す動き(結帯動作)をとっていただき、肩甲骨を内転・内旋位に保持させた状態から、検査者は内側縁に指を入れ込む形で触知します。この場合は菱形筋の上から触知することになるので、そのことを念頭に置いて触れる必要があります。

下の写真では、上肢下垂位からの肩関節内旋運動(結帯動作)を実施して、上腕骨の小結節(停止部)にて肩甲下筋の停止腱部を触知しています。

肩関節外転位で外旋させることで下部線維を、下垂位で外旋させることで上部線維を伸張できるので、その違いを確認することも可能です。

自己触診:肩甲下筋

ストレッチ方法

①棒を両手で把持し(片手は肩・肘90度の位置)、肩関節を外旋及び水平外転させることで肩甲下筋下部線維を選択的に伸張していきます。
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筋力トレーニング

①脇を締めて肘を90度屈曲位とし、肩関節を内旋していきます。この際に、反対側の腕で内旋運動に対して抵抗をかけて実施します。
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肩甲下筋の痛みとトリガーポイント

肩甲下筋は全周性に圧痛を感じやすい筋肉ですが、上部線維は徒手的に触知することが困難であるため、肩甲骨外側縁から下部線維の一部と上腕骨小結節の停止腱部にて圧痛を確認できます。

痛みの領域は肩甲骨後面、肩関節外側、腋窩から上腕内側、手掌背部といった色々な部位に波及しやすいのが特徴です。

肩甲下筋のトリガーポイントと関連痛領域

マッサージ方法

患者には腹臥位をとってもらい、肩関節を45度外転位で肘関節を屈曲させ、その状態から肩関節を内旋させてポジションを整えます。

術者は手を肩甲骨の内側縁に当て、上外方に押圧します。筋肉の上から下に指先を滑らせ、できるだけ多くの筋線維に圧を加えます。

このプロセスを肩甲骨の周囲に沿って繰り返していき、停止部に至るまで実施します。

基本的に肩甲下筋は触知が難しく、圧痛も強い筋肉ですので、マッサージよりも軽い筋収縮を反復するほうが緊張は落としやすいです。

とくに肩関節周囲炎(五十肩)では肩甲下筋の攣縮(緊張の亢進)が強く、肩関節の外旋制限を引き起こしている場合が多々あります。

そのため、軽い筋収縮(肩関節内旋運動)と肩甲骨外側縁部からの指圧を交互に繰り返し、攣縮を改善させることで可動域を改善することが有用となります。

肩甲下筋

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筋肉の走行を見ながら触診やマッサージ方法を学ぶことができるベストセラー書です。付属のDVDで実際の流れを見て覚えることができるのでお勧めです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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