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肩関節周囲炎,五十肩のリハビリ治療


肩関節周囲炎/五十肩のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

肩関節周囲炎の概要

肩関節周囲炎は、別名で五十肩(又は四十肩)、有痛性肩関節制動症と呼ばれることもあり、痛みや拘縮の原因がはっきりとわからない場合に付けられる診断名です。

主に肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などの変性に伴って炎症が起きることで発生します。症状の継続期間はとても長く、平均で1-3年と報告されています。

肩関節周囲炎

診断名についての解釈

五十肩(四十肩)の定義ですが、①肩に痛みと運動障害がある、②年齢が40-50代、③明らかな原因がない、の三条件を満たすものを総称して呼んでいます。

60歳以降の場合は、肩関節周囲炎または有痛性肩関節制動症という診断名が付けられる場合が多いようです。

しかし、これらの名称はすべて原因が特定できない場合に付けられるもの診断名であり、原因のわからない疾患に対しては有効な治療を提供することはできません。

そのため、現在ではできる限りに原因を特定して診断名をつける流れになってきており、安易に肩関節周囲炎と診断する医者は少なくなってきています。

肩関節痛に対する診断チャート

肩関節周囲炎の特徴

患者の85%は40-50歳代で占められることが、「五十肩」と呼ばれる所以となっています。

生涯の発症率は2-5%で、男女比は3:7で女性に好発します。再発は稀で、対側の罹患率が20-30%と高いことが特徴です。

発症時は思い当たる受傷機転がなく、急に肩が痛くなり、徐々に可動域制限が全方向に進行していきます。

とくに肩関節外旋が制限されやすく、筋力低下を伴わないことが特徴です。

肩関節周囲炎の危険因子

発症に関わる危険因子として、①糖尿病、②肩関節術後、③甲状腺疾患、④高脂血症、⑤職業(デスクワーク)などが挙げられています。

しかしながら、肩関節周囲炎は原因が解明されていない部分も多く、なぜ発症に至ったのかも不明な場合が多いです。

そのため、前述した危険因子に該当していたとしても、残念ながら有効な予防法が確立されているわけではないのが現状です。

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腱板損傷と鑑別する

臨床的に混合されやすい腱板損傷との鑑別するポイントについて、以下の表にまとめました。

  肩関節周囲炎 腱板損傷
年齢 40-50代 全年代(60歳以降)
男女差 女性に多い 男性に多い
好発部位 非利き腕 利き腕
対側の発生率 20-30% 少ない
烏口突起の圧痛 90%に出現 11%に出現
肩関節外転 shrug sign 陽性 60-120度で痛み
拘縮 とても強い 少ない
軋轢音 なし あり
球技の既往 ない場合が多い ある場合が多い

肩関節周囲炎では中年の発症が多いのに対して、腱板損傷は高齢者で多く発症しています。理由として、棘上筋腱が加齢と共に変性しているためです。

若年での発症は、野球の投球動作といったように急激な負担が腱板筋に加わることで損傷する場合もあります。

そのため、若年者の腱板損傷は受傷機転が明確な場合が多く、球技などの既往歴があり、使用頻度の高い利き腕に発生しやすいです。

肩関節周囲炎では、烏口突起への圧痛が顕著に出現するだけでなく、肩関節全体にわたって圧痛を認めます。

また、患者の95%は肩関節外転時に代償運動として肩甲骨を拳上する「shrug sign」が出現します。

腱板損傷の場合は、棘上筋腱に炎症や断裂を起こしていることが多く、外転60 -120度のところでインピンジメントを起こし、痛みが生じます。

肩関節外転60-120度というのは、肩峰下と上腕骨大結節が最も接近する範囲であり、その間を通過する棘上筋腱が最も圧迫されるポイントでもあります。

そのため、その範囲を超えたあと(外転120度以上)の動きでは、圧迫が消失するために痛みが楽になります。

棘上筋腱がボロボロで滑り(動き)が悪い状態になっていると、、外転時に軋轢音(ミシミシといった音)が聞こえる場合もあります

腱板損傷、腱板断裂

痛みの原因(状況別)

1.運動時痛

  • 最も出現頻度が高い
  • 軽度の炎症によって疼痛閾値が低下し、機械的刺激が加わることで起こる

2.安静時痛

  • 強い炎症を起こしている状態
  • 機械的刺激がなくても炎症のみによって痛みを引き起こしている

3.夜間時痛

  • 臥位では烏口肩峰弓下間隙の狭小化が起こる
  • 周囲筋の緊張や癒着等に臥位による狭小化が加わって虚血性障害を起こす
  • 対策として肩にタオルなどを入れてポジショニングを整える
痛みの原因別分類

肩関節に拘縮が起きる理由

以下の写真は、肩関節に造影剤を注入して撮影したものになります。

正常肩では、関節内にはゆとりがあるので、左側の写真のように造影剤が垂れ下がったような状態になります。

しかし、肩関節周囲炎の場合は、関節内が窮屈な状態となっていますので、造影剤は下方に落ちていきません。また、骨異常は認めませんので注意が必要です。

 正常 肩関節周囲炎 
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引用画像(1)

最大接触圧の発生部位(n=9)

肩関節において大結節が挟み込みの原因となる場合は非常に多いですが、肩関節屈曲や水平内転の場合は小結節が原因となる場合が多いです。

動き 大結節 小結節
外転 9 0
屈曲 2 7
挙上内旋 9 0
挙上外旋 7 2
水平内転 5 4
水平外転 9 0

拘縮肩の制限因子

1.収縮性組織

  • 内旋:棘下筋、小円筋、棘上筋
  • 外旋:大胸筋、広背筋、大円筋、肩甲下筋

2.非収縮性組織

  • 内旋:後方関節包
  • 外旋:前方関節包、上・中関節上腕靭帯、烏口上腕靱帯
  • 屈曲:後下方関節包、下関節上腕靭帯
  • 外転:前下方関節包、下関節上腕靭帯

肩関節の拘縮を引き起こす原因として、おもに収縮性組織(基本的に拮抗筋)、非収縮性組織(緻密結合組織)に分けられます。

とくに重要なのは拮抗筋の過度な緊張であり、これらの緊張を緩和させることで著明な可動域の改善がはかれます。

ADL動作に必要な関節角度

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※肩甲骨面より前方が(+)、後方が(-)

保存療法のエビデンスレベル

グレードA(十分な科学的根拠がある)
なし
グレードB(科学的根拠がある)
運動療法は無介入より効果がある
初期の痛みはステロイド注射が有効
初期は疼痛のない自動運動で良好な結果が得られる
最終域でのモビライゼーションが有効
急性期の積極的なモビライゼーションは無効
温熱療法は浅部より深部へのアプローチが有効(マイクロ波など)

肩関節周囲炎の病期分類

1.凍結進行期(2-9ヶ月)
原因のない痛みと可動域制限
夜間は痛みが増強
2.凍結完成期(4-12ヶ月)
痛みは軽減するが可動域制限は残存
痛みは最終域でのみ生じる
3.寛解期(12-42ヶ月)
痛みが和らいで動きが改善してくる

リハビリテーション

病期別のアプローチ方法として、凍結進行期では、ステロイド注射やNSAIDで疼痛の緩和をはかり、疼痛のない自動運動及びリラクゼーションを実施します。

凍結完成期では、最終可動域でのモビライゼーション 、ヒアルロン酸注射と温熱療法の併用を実施します。

寛解期では、積極的な関節可動域運動を実施していきます。運動前に温熱療法やリラクゼーションで筋緊張の緩和をはかっておくと効果的です。

安楽姿勢

就寝時は、背臥位にて上腕の下にタオルを置いて、肩関節と肘関節が軽度屈曲位となるようにポジショニングすることでリラクセーションが得られます。

 仰臥位 側臥位 
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麻酔下マニピュレーション

癒着剥離を目的に麻酔下マニピュレーションが以前は推奨されていましたが、現在ではその効果の乏しさから実施される頻度は下がっています。

【論文】振り子運動とストレッチ体操を指導した凍結肩125 人を麻酔下マニピュレーション群(65 人)と対照群(60 人)に無作為に分類し,疼痛,ROM,ADL について,マニピュレーション施行日を基準にして,6週,3,6,12 か月に計測し比較した。
【結論】両群間で疼痛とADL の点ではどの時点においても差は認められなかった。ROM においては麻酔下マニピュレーション群がわずかに良好であり,自覚的な疼痛は両群とも同程度低減したが,どの時期にも両群に差はなかった。(Kivimäki J.2007.)

振り子運動(コッドマン体操)

振り子運動の効果については賛否がありますが、個人的には肩関節周囲炎に対する振り子運動は有効だと考えています。

理由として、可動域制限を引き起こしている要因は「筋緊張」であり、それを取り除いた姿勢で関節を動かすことは極めて重要だからです。

なので、ホームエクササイズとして指導する際は、実際に振り子運動を実施した際の筋緊張の変化を確かめて、なるべく筋肉がリラックスした姿勢で行えるように指導をします。

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【論文】凍結肩の患者50 人に振り子運動,反対側上肢を用いての低負荷でのストレッチを,スリング,抗炎症剤,ホットパックでの疼痛コントロールの後に行った。8 週間毎に可動域(内・外旋)の測定を機能的な可動域(反対側の可動域の20 度以内,両側性の場合,仕事・日常生活に支障を来さなくなるまで)が獲得されるまで行った。治療終了後に数年を経た時点略図により可動域を段階分けし,主観的症状を記入できるアンケートを依頼した。
【結論】全ての患者の可動域の改善が認められ,痛みを伴わずに日常生活が送れるようになっていた。機能的な可動域の獲得は平均14 か月(3~36 以上)かかった。治療終了後4 年経過しても再発はみとめられなかった。(Miller MD.1996.)

肩関節のマッケンジー体操

①頭と肩関節を後ろに引いて真っ直ぐ立ち、痛みのある上肢をもう片方の手でゆっくりと押してさらに伸展させます。動きを繰り返して徐々に可動域を広げていきます。
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②上記のエクササイズで可動域が拡大したら、椅子や机などに手をついて、上体を下げるようにしてさらにストレッチしていきます。
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③腕を背中に回し、手首を掴んで上方に持ち上る動作を反復します。慣れてきたらタオルなどを両手に持ち、さらに引き上げていきます。
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④タオルに両手を起き、身体を前に倒していきながらタオルを前に押していきます。痛みのない範囲で実施し、徐々に可動域を広げていきます。
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参考資料/引用画像


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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