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肩関節周囲炎,五十肩のリハビリ治療


肩関節周囲炎/五十肩のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

肩関節周囲炎の概要

肩関節周囲炎とは、外傷などの原因がないにも関わらず、突然に発生した肩周囲の痛みと拘縮を指しています。

外傷もなく、画像検査(単純X線写真)でも原因が特定できないことから、肩関節のよくわからない痛みを総称して付けられた名称でもあります。

五十歳前後で発生しやすいことから「五十肩」とも呼ばれており、場合によっては「有痛性肩関節制動症」といわれることもあります。

痛みがある組織は肩関節周囲の筋肉や靭帯、滑液包、関節包の類であり、非常に多岐にわたることから周囲炎と呼ばれます。

症状の継続期間はとても長く、平均で1〜3年とも報告されています。

肩関節周囲炎

診断名についての解釈

前述したように肩関節周囲炎や五十肩という診断名は、あくまで原因組織が特定できない場合に付けられる仮の名称です。

ただし、原因が特定できない限りは有効な治療法を提供することができませんので、原則としては痛みの部位を特定することがまずは大切です。

触れもせずに症状と年齢を聞くだけで安易に五十肩や肩関節周囲炎と診断する医者は、あまり信用しないほうがよいです。

中には腱板損傷や上腕二頭筋長頭腱炎など、診断ができる疾患まで含まれていることもあるので注意が必要です。

肩関節痛に対する診断チャート

肩関節周囲炎の特徴

患者の85%は40-50歳代で占められることが、「五十肩」と呼ばれる所以となっています。

生涯の発症率は2-5%で、男女比は3:7で女性に好発します。再発は稀で、対側の罹患率が20-30%と高いことが特徴です。

発症時は思い当たる受傷機転がなく、急に肩が痛くなり、徐々に可動域制限が全方向に進行していきます。

とくに肩関節外旋が制限されやすく、筋力低下を伴わないことが特徴です。

肩関節周囲炎の危険因子

発症に関わる危険因子として、①糖尿病、②肩関節術後、③甲状腺疾患、④高脂血症、⑤職業(デスクワーク)などが挙げられています。

しかしながら、肩関節周囲炎は原因が解明されていない部分も多く、なぜ発症に至ったのかも不明な場合が多いです。

そのため、前述した危険因子に該当していたとしても、残念ながら有効な予防法が確立されているわけではないのが現状です。

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腱板損傷と鑑別する

臨床的に混合されやすい腱板損傷との鑑別するポイントについて、以下の表にまとめました。

  肩関節周囲炎 腱板損傷
年齢 40-50代 全年代(60歳以降)
男女差 女性に多い 男性に多い
好発部位 非利き腕 利き腕
対側の発生率 20-30% 少ない
烏口突起の圧痛 90%に出現 11%に出現
肩関節外転 shrug sign 陽性 60-120度で痛み
拘縮 とても強い 少ない
軋轢音 なし あり
球技の既往 ない場合が多い ある場合が多い

肩関節周囲炎では中年者の発症が多いのに対して、腱板損傷は高齢者で多く発症しています。理由として、棘上筋腱が加齢と共に変性しているためです。

若年での発症は、野球の投球動作といったように急激な負担が腱板筋に加わることで損傷することが多いです。

そのため、若年者の腱板損傷は受傷機転が明確な場合が多く、球技などの既往歴があり、使用頻度の高い利き腕に発生しやすくなります。

肩関節周囲炎では烏口突起の圧痛が顕著に出現するだけでなく、肩関節全体にわたって圧痛が認められます。

また、患者の95%は肩関節外転時に代償運動として肩甲骨を拳上する「shrug sign」が出現します。

腱板損傷の場合は、棘上筋腱に炎症や断裂を起こしていることが多く、外転60 -120度のところでインピンジメントを起こし、痛みが生じます。

肩関節外転60-120度というのは、肩峰下と上腕骨大結節が最も接近する範囲であり、その間を通過する棘上筋腱が最も圧迫されるポイントでもあります。

そのため、その範囲を超えたあと(外転120度以上)の動きでは、圧迫が消失するために痛みが楽になります。

棘上筋腱がボロボロで滑りが悪い状態になっていると、外転時に軋轢音(ミシミシといった音)が聞こえる場合もあります

腱板損傷、腱板断裂

肩関節の炎症と鑑別する

肩関節周囲炎は受傷機転がない(原因なく突然に起こる)ことが特徴ですが、まれに転倒などの外傷で肩を痛めてから発症する場合もあります。

その場合は肩関節に腫脹が確認でき、安静時痛や夜間時痛、運動時痛などを訴えることになります。

肩関節周囲炎にちかい症状であり、日常的に動かすために痛み(炎症)が長引き、治るまでに数ヶ月以上を要することも多いです。

アルコールを飲むと寝てるときに痛みが強く出ると話される患者がいますが、それはお酒がさめる頃に二次的な血管収縮を伴うためと考えられます。

なので、なるべく肩周囲が冷えないようにし、治癒するまで負担を避けることが大切だといえます。

痛みの原因(状況別)

1.運動時痛

  • 最も出現頻度が高い
  • 軽度の炎症によって疼痛閾値が低下し、機械的刺激が加わることで起こる

2.安静時痛

  • 強い炎症を起こしている状態
  • 機械的刺激がなくても炎症のみによって痛みを引き起こしている

3.夜間時痛

  • 臥位では烏口肩峰弓下間隙の狭小化が起こる
  • 周囲筋の緊張や癒着等に臥位による狭小化が加わって虚血性障害を起こす
  • 対策として肩にタオルなどを入れてポジショニングを整える
痛みの原因別分類

肩関節に拘縮が起きる理由

以下の写真は、肩関節に造影剤を注入して撮影したものになります。

正常肩では、関節内にはゆとりがあるので、左側の写真のように造影剤が垂れ下がったような状態になります。

しかし、肩関節周囲炎の場合は、関節内が窮屈な状態となっていますので、造影剤は下方に落ちていきません。

肩関節を包んでいる膜(関節包)が肥厚することが原因であるため、単純X線写真では骨異常が認められません。

 正常 肩関節周囲炎 
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引用画像(1)

最大接触圧の発生部位(n=9)

肩関節において大結節が挟み込みの原因となる場合は非常に多いですが、肩関節屈曲や水平内転の場合は小結節が原因となる場合が多いです。

動き 大結節 小結節
外転 9 0
屈曲 2 7
挙上内旋 9 0
挙上外旋 7 2
水平内転 5 4
水平外転 9 0

拘縮肩の制限因子

1.収縮性組織

  • 内旋:棘下筋、小円筋、棘上筋
  • 外旋:大胸筋、広背筋、大円筋、肩甲下筋

2.非収縮性組織

  • 内旋:後方関節包
  • 外旋:前方関節包、上・中関節上腕靭帯、烏口上腕靱帯
  • 屈曲:後下方関節包、下関節上腕靭帯
  • 外転:前下方関節包、下関節上腕靭帯

肩関節の拘縮を引き起こす原因として、おもに収縮性組織(基本的に拮抗筋)、非収縮性組織(緻密結合組織)に分けられます。

とくに重要なのは拮抗筋の過度な緊張であり、これらの緊張を緩和させることで著明な可動域の改善が図れます。

ADL動作に必要な関節角度

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※肩甲骨面より前方が(+)、後方が(-)

保存療法のエビデンスレベル

グレードA(十分な科学的根拠がある)
なし
グレードB(科学的根拠がある)
運動療法は無介入より効果がある
初期の痛みはステロイド注射が有効
初期は疼痛のない自動運動で良好な結果が得られる
最終域でのモビライゼーションが有効
急性期の積極的なモビライゼーションは無効
温熱療法は浅部より深部へのアプローチが有効(マイクロ波など)

肩関節周囲炎の病期分類

1.凍結進行期(2-9ヶ月)
原因のない痛みと可動域制限
夜間は痛みが増強
2.凍結完成期(4-12ヶ月)
痛みは軽減するが可動域制限は残存
痛みは最終域でのみ生じる(動作時痛は軽減)
3.寛解期(12-42ヶ月)
痛みが和らいで動きが改善してくる

凍結進行期のリハビリテーション

発生初期(凍結進行期)では、ステロイド注射やNSAIDで疼痛の緩和をはかり、疼痛のない自動運動及びリラクゼーションを中心に実施します。

この時期に積極的なアプローチをしても改善することはまずありません。

むしろ拘縮や疼痛はピークに向かって進行しているので、日に日に悪くなっていくことが多いです。

リハビリをして悪くなったと言われることも多いため、病期について説明し、ピークを過ぎたら痛みが改善することをしっかり説明しておきます。

この時期は積極的な介入ができないため、外来の頻度は週1回程度でも良いかと思います。

肩関節周囲組織の拘縮を少しでも予防するためには振り子運動(コッドマン体操)が有効で、在宅訓練として指導しても良いです。

可動域制限を引き起こしている主因は筋肉の過緊張であるため、それを取り除いた姿勢で関節を動かすことが大切です。

方法としては、身体を前に倒した姿勢(できれば90度屈曲位)で手首に約2キロの重りを付けて、肩をブラブラと前後に揺らします。

その際にできる限りリラックスした状態を保ち、なるべく肩の周囲筋に力が入らないように注意します。

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【論文】凍結肩の患者50 人に振り子運動,反対側上肢を用いての低負荷でのストレッチを,スリング,抗炎症剤,ホットパックでの疼痛コントロールの後に行った。8 週間毎に可動域(内・外旋)の測定を機能的な可動域(反対側の可動域の20 度以内,両側性の場合,仕事・日常生活に支障を来さなくなるまで)が獲得されるまで行った。治療終了後に数年を経た時点略図により可動域を段階分けし,主観的症状を記入できるアンケートを依頼した。
【結論】全ての患者の可動域の改善が認められ,痛みを伴わずに日常生活が送れるようになっていた。機能的な可動域の獲得は平均14 か月(3~36 以上)かかった。治療終了後4 年経過しても再発はみとめられなかった。(Miller MD.1996.)

肩関節周囲炎では夜に痛みで目が覚めたり、朝起きたら肩が痛くなるといった訴えが多く聞かれます。

この原因としては、小胸筋の筋緊張が高くなっていることで、仰臥位時に肩が前方突出し、結果的に肩関節が伸展位に保持されます。

伸展位になると烏口肩峰弓下間隙が狭小化し、肩関節の血流が乏しくなって虚血状態を起こします。

さらに肩関節周囲炎では関節包が肥厚しているため、血流はより顕著に障害されてしまい、結果的に夜間時痛を増悪させます。

対処法としては、就寝時に上腕の下にタオルを置いて、肩関節と肘関節が軽度屈曲位となるようにポジショニングします。

就寝時はどうしても寝返りをしてズレてしまうので、毛布やタオルを上肢にグルグル巻きにしてガムテープで止めたり、三角巾をつけて寝るといった方法も有効です。

 仰臥位 側臥位 
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凍結完成期のリハビリテーション

凍結完成期は別名で拘縮期とも呼ばれ、痛みよりも関節可動域制限が主な障害となる時期です。

ヒアルロン酸注射と温熱療法の併用を実施し、リハビリでは周囲筋のリラクゼーションやストレッチ、関節モビライゼーションを実施していきます。

周囲筋に過度な緊張(攣縮)が生じている場合は、その状態でストレッチをしても痛みが出るだけで逆効果です。

なので、極力に攣縮を取り除いた状態に調整し、そこからストレッチや関節モビライゼーションを実施することが大切です。

最も制限されやすい下垂位での肩関節外旋の動きでは、肩甲下筋の上部線維に強い攣縮が起きていることが予測されます。

上部線維は触知がほとんど不可能なため、リラクゼーションをする際は対象の筋線維に軽い収縮を反復させる方法が効果的です。

具体的には下垂位での肩関節内旋を軽い抵抗下で反復させ、徐々に緩めていくように繰り返していきます。

より詳しい方法は「肩関節の下垂位外旋の関節可動域を改善するためのリハビリ方法」をご参照ください。

寛解期のリハビリテーション

寛解期では周囲筋の攣縮が落ちつているので、より積極的なストレッチや関節モビライゼーションが可能となります。

従来のように筋のリラクゼーションにかける時間を大幅に減らせるので、その分を関節の最終域で行うモビライゼーションに切り替えます。

具体的な方法としては、肩関節屈曲なら後方関節包の短縮が制限因子となるので、最終域に保持した状態から骨頭を後方にグイグイと押し込みます。

そうすることで徐々に関節包が伸びてくるので、しばらく繰り返したあとに肩関節屈曲をしてもらうと運動が楽になり、可動域も上がります。

肩関節周囲炎は勝手に治ることも多いですが、放置して治った人の多くに軽度の関節可動域制限が残っていたりもします。

これは治ったあとも関節包が短縮した状態のままであり、ある意味では後遺症のような状態であるともいえます。

肩の上がりが悪い患者には、以前に五十肩になったことがないか聞いてみるとよいかもしれません。

参考資料/引用画像

  • 日本整形外科学会発行のパンフレット「肩関節周囲炎/五十肩」
  • 東北大学整形外科教室

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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