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肩関節周囲炎,五十肩のリハビリ治療

肩関節周囲炎のリハビリ治療に関する目次は以下になります。

肩関節周囲炎の概要

別名で五十肩や四十肩、凍結肩、有痛性肩関節制動症、癒着性関節包炎とも呼ばれ、一様な経過をたどる良性で非依存性の疾患です。

肩関節周囲炎は自然軽快することが知られており、その期間は早くて6ヶ月、平均で1〜3年になります。

一般的に、発症から2〜3ヶ月で炎症はピークに達し、強度の炎症にて夜間や安静時にも痛みが伴うようになります。

炎症を起こしている組織は刺激を避けるために疼痛閾値を下げ、さらに周囲筋を防御的に収縮させて動かさないように働きます。

時間が経過して徐々に炎症が軽減していくと痛みは和らぎますが、これまで主に炎症を起こしていた関節包には肥厚や癒着が生じます。

そうすると関節可動域制限の原因が初期は筋肉の防御性収縮だったのに対して、中期以降は関節包性の問題に切り替わっていきます。

最終的には、1〜3年ほどをかけて関節包の肥厚や癒着が改善していき、自然にでも治癒していくことができます。

病期分類

純粋な肩関節周囲炎(原発性)は、一様に以下の経過をたどります。

第Ⅰ期:凍結進行期(2-9ヶ月)
炎症)強度
疼痛)徐々に増加、夜間や安静時にも痛みが発生
組織)関節包を主とした周囲組織の炎症、筋肉の防御性収縮
制限)筋肉の防御性収縮
第Ⅱ期:凍結完成期(4-12ヶ月)
炎症)中等度から軽度
疼痛)徐々に軽減、安静時の痛みは消失、夜間や運動時の痛みは残存
組織)筋肉の防御性収縮、関節包の伸張ストレスやインピンジメント
制限)筋肉の防御性収縮+関節包の肥厚
第Ⅲ期:寛解期(12-42ヶ月)
炎症)ほぼ消失
疼痛)変化に乏しい、運動時の痛みは残存
組織)関節包の伸張ストレスやインピンジメント
制限)関節包の肥厚

関節包炎の起こりやすい場所

肩関節周囲炎では、肩関節外旋位でのすべての自由度に制限を与えるため、前方の関節包に炎症が起こりやすいと考えられます。

疼痛部位を尋ねると肩関節前方に痛みを訴えやすく、その場合はより強く前方の関節包炎を疑うことができます。

癒着性関節包炎が存在する場合はシュラグサインが陽性となり、肩関節外転時に肩甲骨の挙上を認めます。

関節包の癒着や肥厚のみでは筋力低下が起こらないため、痛みのない範囲での筋力測定も鑑別には有効です。

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腱板損傷と鑑別する

臨床的に混合されやすい腱板損傷との鑑別ポイントについて、以下の表にまとめました。

  肩関節周囲炎 腱板損傷
年齢 40-50代 全年代(60歳以降)
男女差 女性に多い 男性に多い
好発部位 左右差なし 利き腕
対側の発生率 20-30% 少ない
単純X線写真 異常なし AHIの狭小化
痛みの部位 主に肩前面 主に肩外側
烏口突起の圧痛 90%に出現 11%に出現
肩関節外転 シュラグサイン陽性 60-120度で痛み
拘縮 とても強い 少ない
筋力低下 なし あり
軋轢音 なし あり
球技の既往 ない場合が多い ある場合が多い

肩関節周囲炎が40-50代の中年者に多いのに対して、腱板損傷は高齢者や若年者に多いのが特徴です。

高齢者では棘上筋腱が加齢で変性しているために損傷しやすく、若年者では野球などの投球動作で損傷しやすい傾向にあります。

そのため、若年者の腱板損傷は受傷機転が明確な場合が多く、球技などの既往歴があり、使用頻度の高い利き腕に発生しやすくなります。

肩関節周囲炎では関節包や腱板疎部の肥厚に加えて、烏口上腕靭帯にも肥厚が起こりやすいため、烏口突起の圧痛が認められやすいです。

腱板損傷では棘上筋腱に炎症や断裂を起こしている場合が多いため、外転60 -120度のところでインピンジメントを起こして痛みが生じます。

この角度は肩峰下と上腕骨大結節が最も接近する範囲であり、その間を通過する棘上筋腱が最も圧迫されるポイントでもあります。

そのため、その範囲を超えたあと(外転120度以上)の動きでは、腱の圧迫が消失するために痛みが楽になります。

原発性凍結肩と続発性凍結肩

通常、肩関節周囲炎は受傷機転がない原因不明の疾患ですが、まれに転倒などの外傷で肩を痛めるなどして続発的に発症する場合があります。

これを続発性凍結肩と呼んでおり、一般的な肩関節周囲炎の経過をたどらないことが特徴として挙げられます。

原発性凍結肩ではすべての方向で自動・他動の運動制限を認めますが、続発性凍結肩では制限の方向が限られている場合がほとんどです。

急性の炎症反応はありませんので、前述した肩関節周囲炎の第Ⅱ期や第Ⅲ期に類似した状態となります。

続発性凍結肩は自然治癒することがほとんどないため、痛みが長期にわたって残存している症例が多いです。

痛みの原因(状況別)

1.運動時痛

  • 最も出現頻度が高い
  • 軽度の炎症によって疼痛閾値が低下し、機械的刺激が加わることで起こる

2.安静時痛

  • 強い炎症を起こしている状態
  • 機械的刺激がなくても炎症のみによって痛みを引き起こしている

3.夜間時痛

  • 臥位では烏口肩峰弓下間隙の狭小化が起こる
  • 周囲筋の緊張や癒着等に臥位による狭小化が加わって虚血性障害を起こす
  • 対策として肩にタオルなどを入れてポジショニングを整える
痛みの原因別分類

肩関節に拘縮が起きる理由

通常、肩関節周囲炎は骨の問題が生じないために、レントゲン撮影をしても異常はみつかりません。

ただし、肩関節に造影剤を注入することで関節包の短縮を確認することができるため、診断には有効な手段となります。

正常肩では関節内にゆとりがありますので、造影剤は関節の下方(腋窩陥凹)に流れこみ、垂れ下がったような状態に写ります。

しかし、肩関節周囲炎の場合は腋窩陥凹の容積が減少しているため、造影剤が下方に落ちていきません。

腋窩陥凹
 正常 肩関節周囲炎
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引用画像:古東整形外科

拘縮肩の制限因子

1.収縮性組織

  • 内旋:棘下筋、小円筋、棘上筋
  • 外旋:大胸筋、広背筋、大円筋、肩甲下筋

2.非収縮性組織

  • 内旋:後方関節包
  • 外旋:前方関節包、上・中関節上腕靭帯、烏口上腕靱帯
  • 屈曲:後下方関節包、下関節上腕靭帯
  • 外転:前下方関節包、下関節上腕靭帯

肩関節の拘縮を引き起こす原因として、おもに収縮性組織(基本的に拮抗筋)、非収縮性組織(緻密結合組織)に分けられます。

肩関節周囲炎の第Ⅰ期は、炎症に伴う収縮性組織による制限がメインなので、関節可動域制限は大きいことが特徴です。

ただし、原因筋のリラクゼーションを図ることにより、即時的に大きく可動域を拡大できるといった側面もあります。

肩関節周囲炎の第Ⅱ期は、非収縮性組織による制限がメインなので、関節可動域制限は最終域のみで生じ、軽度から中等度であることが多いです。

関節包が原因の場合は、最終域でのモビライゼーションにより、グイグイと短縮している部分を伸ばしていく作業が必要になります。

ADL動作に必要な関節角度

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※肩甲骨面より前方が(+)、後方が(-)

保存療法のエビデンスレベル

グレードA(十分な科学的根拠がある)
なし
グレードB(科学的根拠がある)
第Ⅰ期:疼痛緩和にステロイド注射が有効
第Ⅰ期:疼痛のない範囲の自動運動が有効
第Ⅰ期:関節モビライゼーションは無効
第Ⅱ期:関節モビライゼーションは有効
第Ⅱ期:深部に作用する温熱療法が有効

第Ⅰ期:リハビリテーション

第Ⅰ期(凍結進行期)は、患者が激しい疼痛を訴えて日常生活に支障をきたしているため、まずは炎症の軽減が必要となります。

抗炎症作用の強いステロイド注射が著効するため、疼痛を一時的に緩和させる目的で注射療法が選択されます。

飲み薬として非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)も同時に処方され、医師はこの2つを軸として炎症をコントロールしていきます。

リハビリでは、炎症症状が強く出現している時期のため、積極的なアプローチをしても改善することはほとんどありません。

むしろ炎症や拘縮はピークに向かって進行しているので、一般的な経過をたどっているなら日に日に悪くなっていきます。

その場合、リハビリをして悪くなったと言われることも多いため、病期について正しく説明しておくことが重要となります。

第Ⅰ期に疼痛のない範囲での自動運動が有効とされているのは、関節周囲で防御性収縮に働いている筋肉の緊張緩和に貢献するためです。

疼痛を伴うマッサージや関節モビライゼーションなどは周囲筋の防御性収縮を強めてしまい、逆効果に働いてしまうので注意が必要です。

この時期は積極的な介入ができないため、外来の頻度は週1回程度で構いません。

肩関節周囲組織の拘縮を少しでも予防するためには振り子運動(コッドマン体操)が有効で、在宅訓練として指導しても良いです。

方法としては、身体を前に倒した姿勢(できれば90度屈曲位)で手首に約2キロの重りを付けて、肩をブラブラと前後に揺らします。

その際にできる限りリラックスした状態を保ち、なるべく肩の周囲筋に力が入らないように注意します。

振り子運動|コッドマン体操

就寝時のポジショニングについて

肩関節周囲炎では夜に痛みで目が覚めたり、朝起きたら肩が痛くなるといった訴えが多く聞かれます。

原因としては、小胸筋の緊張亢進にて仰臥位で上腕骨頭が前方突出し、結果的に肩関節が伸展位に保持されます。

伸展位になると烏口肩峰弓下間隙が狭小化し、肩関節の血流が乏しくなって虚血状態を起こします。

さらに肩関節周囲炎では関節包が肥厚しているため、血流はより顕著に障害されてしまい、結果的に夜間痛を増悪させます。

対処法として、就寝時は上腕骨の下にタオルを置き、肩関節と肘関節が軽度屈曲位となるようにポジショニングします。

寝返りでズレてしまう場合は、毛布やタオルを上肢にグルグルと巻いてガムテープで止めたり、三角巾をつけて寝るといった方法も有効です。

肩関節の安楽姿勢:仰臥位1
肩関節の安楽姿勢:側臥位1

第Ⅱ期:リハビリテーション

第Ⅱ期(凍結完成期)は、炎症症状が落ち着いてきた時期であり、関節包の肥厚や腋窩陥凹の容積減少による可動域制限が主となります。

この時期はまだ炎症性疼痛による周囲筋の防御性収縮が認められる場合も多いため、まずはリラクゼーションを中心に実施します。

具体的な方法としては、対象の筋肉に対して軽いマッサージを行なったり、軽い抵抗下で筋収縮を反復させるように誘導していきます。

周囲筋の緊張が緩んだことを確認し、そこから関節包の肥厚や短縮が存在する方向への関節モビライゼーションを行っていきます。

関節包は深部に存在しているため、ホットパックでは十分に温まらないので、マイクロ波などを使用することが推奨されます。

第Ⅲ期:リハビリテーション

第Ⅲ期(寛解期)は、炎症由来の疼痛がほぼ消失しているため、周囲筋の防御性収縮もほとんど認められません。

なので、従来のようにリラクゼーションにかける時間を削れますので、その分を関節の最終域で行うモビライゼーションに切り替えます。

具体的な方法としては、肩関節屈曲制限なら後方関節包の短縮が制限因子となるので、最終域に保持した状態から骨頭を後方に押し込みます。

そうすることで徐々に関節包が伸びてくるので、しばらく繰り返したあとに肩関節屈曲をしてもらうと運動が楽になり、可動域も拡大します。

この時期からは在宅でのストレッチングも行うように指導し、普段から積極的に動かしていただくようにしていきます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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