概要
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SCMは耳の後ろの乳様突起から胸骨・鎖骨へ走る首の筋。
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トリガーポイント(TP)は本人が首で痛みを感じにくい一方、頭頸顔面へ広範な関連痛や自律神経・感覚症状を起こす。
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触れるとリンパ節腫脹と誤認されやすい硬結・圧痛がある。
主な症状(4群)
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関連痛
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前頭部痛、頭頂・耳後部痛、眼球深部痛、顎・咽頭痛、時に胸骨痛。
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胸骨頭TP:眼球痛・嚥下時舌痛・頭痛・顎筋TP誘発。
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鎖骨頭TP:反対側前頭部痛、耳の深部痛・奥歯痛。
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平衡障害
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めまい、吐き気、姿勢保持困難、転倒傾向、失神様発作。
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片側の耳閉感・難聴(耳小筋緊張を介する)を伴うことあり。
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視覚障害
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かすみ・複視・色覚変化、結膜充血・流涙、眼瞼けいれん/下垂、文字が躍って読めない等。
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全身症状
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重量感覚の異常、前頭部の冷汗、鼻・咽頭の粘液過多、慢性咳。胸骨頭近傍のマッサージで乾いた咳が軽減することあり。
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形成要因
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頭部の固定・偏位姿勢(上向き作業、片側傾斜、電話を肩で挟む、猫背での着座、うつ伏せ読書)。
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胸式呼吸(吸気補助でSCMを使い過ぎ)。
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外傷(むち打ち、転倒)、重い物の持ち上げ、襟の締め付け、下肢長差・脊柱アライメント不良、咳・喘息・過呼吸、ストレスなど。
鑑別の要点
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僧帽筋・肩甲挙筋の痛みと混同しやすい。
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SCMは頭蓋・顔面・前頭部へ関連痛を飛ばしやすく、鎖骨頭は反対側前頭部という特徴。
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メニエール病様のめまい・耳症状や副鼻腔炎様の頬痛と誤診されることも。
セルフケア/治療
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つまみ揉み:乳様突起の後ろから鎖骨へ向け、SCMの胸骨頭と鎖骨頭を分けて母指と指でつまみ、痛気持ち良い圧でゆっくり解す。再現痛があればTPヒットの目安。
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姿勢・呼吸の修正:
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画面は目線、顎引き、猫背回避。
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横隔膜優位の腹式呼吸へ(胸で大きく吸い上げない)。
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やめたい習慣:片側傾斜で長座、ベッド読書、うつ伏せ寝、肩と耳で受話器を固定。
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症状が強い・神経症状が持続する場合は専門家へ。
触診・確認ポイント
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SCMは前頸部で**2本の索状(胸骨頭/鎖骨頭)**として触れる。
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つまむと前頭部に既知の痛みが再現・増悪するならTPの可能性高。
ひとことで:SCMのTPは「前頭部~顔面の謎の不調」「めまい・耳や目の症状」の隠れ因子。姿勢と呼吸の見直し+優しいつまみ揉みが第一選択です。