胸鎖乳突筋のトリガーポイント(TP)

概要

  • SCMは耳の後ろの乳様突起から胸骨・鎖骨へ走る首の筋。

  • トリガーポイント(TP)は本人が首で痛みを感じにくい一方、頭頸顔面へ広範な関連痛や自律神経・感覚症状を起こす。

  • 触れるとリンパ節腫脹と誤認されやすい硬結・圧痛がある。

主な症状(4群)

  1. 関連痛

    • 前頭部痛、頭頂・耳後部痛、眼球深部痛、顎・咽頭痛、時に胸骨痛。

    • 胸骨頭TP:眼球痛・嚥下時舌痛・頭痛・顎筋TP誘発。

    • 鎖骨頭TP:反対側前頭部痛、耳の深部痛・奥歯痛。

  1. 平衡障害

    • めまい、吐き気、姿勢保持困難、転倒傾向、失神様発作。

    • 片側の耳閉感・難聴(耳小筋緊張を介する)を伴うことあり。

  2. 視覚障害

    • かすみ・複視・色覚変化、結膜充血・流涙、眼瞼けいれん/下垂、文字が躍って読めない等。

  3. 全身症状

    • 重量感覚の異常、前頭部の冷汗、鼻・咽頭の粘液過多、慢性咳。胸骨頭近傍のマッサージで乾いた咳が軽減することあり。

形成要因

  • 頭部の固定・偏位姿勢(上向き作業、片側傾斜、電話を肩で挟む、猫背での着座、うつ伏せ読書)。

  • 胸式呼吸(吸気補助でSCMを使い過ぎ)。

  • 外傷(むち打ち、転倒)、重い物の持ち上げ、襟の締め付け、下肢長差・脊柱アライメント不良、咳・喘息・過呼吸、ストレスなど。

鑑別の要点

  • 僧帽筋・肩甲挙筋の痛みと混同しやすい。

  • SCMは頭蓋・顔面・前頭部へ関連痛を飛ばしやすく、鎖骨頭は反対側前頭部という特徴。

  • メニエール病様のめまい・耳症状や副鼻腔炎様の頬痛と誤診されることも。

セルフケア/治療

  • つまみ揉み:乳様突起の後ろから鎖骨へ向け、SCMの胸骨頭と鎖骨頭を分けて母指と指でつまみ、痛気持ち良い圧でゆっくり解す。再現痛があればTPヒットの目安。

  • 姿勢・呼吸の修正

    • 画面は目線、顎引き、猫背回避。

    • 横隔膜優位の腹式呼吸へ(胸で大きく吸い上げない)。

  • やめたい習慣:片側傾斜で長座、ベッド読書、うつ伏せ寝、肩と耳で受話器を固定。

  • 症状が強い・神経症状が持続する場合は専門家へ。

触診・確認ポイント

  • SCMは前頸部で**2本の索状(胸骨頭/鎖骨頭)**として触れる。

  • つまむと前頭部に既知の痛みが再現・増悪するならTPの可能性高。


ひとことで:SCMのTPは「前頭部~顔面の謎の不調」「めまい・耳や目の症状」の隠れ因子。姿勢と呼吸の見直し+優しいつまみ揉みが第一選択です。