脳卒中のリハビリ治療に関する目次は以下になります。
脳卒中のリハビリについて
脳卒中では、損傷を受けた部位や程度によって症状が大きく異なるため、一概にリハビリ内容を決定することはできません。
ここでは、障害部位別の特徴と脳卒中ガイドラインにて効果が認められている治療法を中心に紹介し、急性期・回復期・維持期に分けてリハビリ方法を検討していきます。
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脳卒中のリスク因子
- 年齢が55歳以上、男性:44歳以下、85歳以上では性差なし
- 出生時に体重が2,500g未満、遺伝:肉親が脳卒中を発症していれば30%リスク増
- 高血圧:140/90mmHg以上
- 喫煙、糖尿、脂質異常、心房細動(脳梗塞発症リスク4-5倍) etc.
再発について
脳卒中の再発リスクはとても高く、全脳卒中発症例のおよそ25%を占めています。再発率は発症5年で26%、10年で39%と報告されています。
発症から年数が経つほどに再発リスクは低下することが知られており、発症から5年後からは初発と発生頻度は変わりないとされています。
再発を予防するためには、上記のリスク因子を抑えることに加えて、血圧コントロール(推奨値は120/80mmHg以下)、運動習慣を持つことなどが大切になります。
死亡率
脳卒中後の死亡率は、発症から30日以内で12%となっています。原因別で見ていくと、脳梗塞で6%、脳出血で16%、くも膜下出血で28%となっています。
5年生存率は約65%とされており、痴呆の有無によって生存率は大きく左右されることがわかっています。
冠状断から見た脳動脈の位置と潅流領域(栄養部位)
1.冠状断から見た場合 |
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2.水平断から見た場合 |
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3.矢状断から見た場合 |
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脳出血の好発部位と主症状
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被殻出血
対側の片麻痺や感覚障害、意識障害、失語症(優位半球)が出現する。被殻に栄養を供給するレンズ核線条体動脈の破裂によって起こる。
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視床出血
対側の片麻痺や感覚障害、意識障害、視床痛、不随意運動、失語症(優位半球)が出現する。
後視床穿通動脈および視床膝状体動脈の破裂によって起こる。脳室へ穿破すると正常圧水頭症、覚醒障害を起こすことがある。
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皮質下出血
対側の片麻痺や感覚障害が出現する。出血部位で症状が大きく異なり、優位半球では失語症や失行、劣位半球では左半側空間無視や病態失認が起こる。
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小脳出血
頭痛、嘔吐、回転性めまい、運動失調、構語障害が出現する。脳幹の圧迫で急激な意識障害が起こる場合がある。
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脳幹(橋)出血
運動失調(四肢麻痺)、呼吸障害、複視、嚥下障害、血圧低下などが出現する。脳幹は呼吸・循環など生命維持活動の中枢であるため、生命の危険がある。
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脳梗塞の好発部位と主症状
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血栓性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)
脂質が動脈内膜に蓄積して狭窄を招き、進行して閉塞した状態。脳動脈の血流量が正常時の1/3以下になると神経症候が明らかとなる。
血圧が下がることで閉塞状況は悪化して重症化する。皮質や島回、放線冠など広範な梗塞に及ぶことが多い。
塞栓性脳梗塞(心原性脳塞栓症)
心臓や動脈に生じた血栓が遊離して脳血管に流入して突発的に閉塞した状態。血栓性脳梗塞と比較して死亡率や予後が不良となりやすい。
皮質や島回、放線冠など広範な梗塞に及ぶことが多い。
発症後2-14日以内に閉塞血管の自然再開通が約40%に認められるが、この現象が出血性脳梗塞などの原因となる。血栓性より安静期間を長くとり、徐々に座位を獲得していく。
多発性脳梗塞(ラクナ梗塞)
血栓性脳梗塞の一種で、15mm以下の小梗塞が複数存在している状態。大脳基底核、視床、内包、放線冠、橋などの穿通枝領域に生じる。
脳血管性認知症や排尿障害、歩行障害、嚥下障害を伴うことが多い。比較的に状態が良好である場合が多く、階段状にゆっくりと進行していく。
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くも膜下出血
原因として最も頻度が高いのが脳動脈瘤の破裂で75%を占める。脳動脈瘤破裂の好発年齢は40-60歳、脳動静脈奇形は20-40歳となる。
日本ではやや女性に多く、近年は増加傾向にある。死亡につながる可能性も高いが、救命がかなった場合では予後良好な症例が多い。
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一過性脳虚血発作(TIA)
24時間以内に症状が完全に消失する一過性の血流障害。症状は突発性で2-15分ほど続いて回復するケースが多い。
症状は、一過性黒内障、構音障害、片麻痺症状、同名半盲、感覚障害、失語、平衡障害、複視、回転性めまい、嚥下障害などが出現しやすい。
脳梗塞、脊髄梗塞、網膜虚血症を発症する危険性が極めて高い状態である。
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急性期リハビリテーション(約1週間)
方法 | 内容 | ||||||
廃用予防 | ベッドアップ、ポジショニング、呼吸管理、関節可動域運動 | ||||||
起居動作 | 坐位保持、早期離床、早期歩行 | ||||||
運動療法 | 神経筋再教育、非麻痺側の筋力訓練、ADL練習、摂食・嚥下訓練 |
急性期の治療法
脳梗塞の発症後5時間以内の超急性期では、アルテプラーゼによる血栓溶解療法が適応されます。
無効の場合は、機械的血栓除去術が選択される場合もあります。
発症後1週間の急性期では、再発や病巣の拡大防止、合併症の予防が主な治療となります。
病型や病態によってリスクが異なりますので、医師とに確認しながら早期離床を進めます。
通常、リハビリの開始条件は「神経症状の進行がないこと」であり、内頚動脈系で24時間、椎骨動脈系で72時間に進行が認めなければ問題ないと考えられます。
ペナンブラによる回復効果
ペナンブラとは、「日食による本影の周囲の少し明るい半影」を意味する言葉です。脳卒中では、損傷を受けて壊死した部分の周囲を指します。
周囲は血流量が低下して機能不全に陥っていますが、まだ完全に死んだ訳ではありません。
そのため、徐々に血流量が戻ることによって元の機能を取り戻していきます。
発症初期に急激な回復をみせるのはペナンブラの影響であり、急性期の治療は虚血部分の回復が最重要の課題となります。
急性期における運動療法のエビデンス
グレードA(十分な科学的根拠がある) |
廃用症候群を予防し、早期のADL向上と社会復帰を図るために、できる限り早期からの積極的なリハビリを開始する |
リハビリテーションチームによる集中的なリハビリテーションを行い、早期の退院に向けた積極的な指導を行う |
立ち座りや歩行などの下肢訓練の量を多くすることは、歩行能力の改善に有効 |
発症後早期の患者では、より効果的な回復を促すために訓練量や頻度を増やす |
グレードB(科学的な根拠がある) |
急性期は、高血糖、低栄養、痙攣発作、中枢性高体温、深部静脈血栓症、血圧の変動、不整脈、心不全、誤嚥、麻痺側の無菌性関節炎、褥瘡、消化管出血、尿路感染症などの合併症に注意することが勧められる |
移動、セルフケア、嚥下、コミュニケーション、認知などの複数領域に障害が残存した例では、急性期に引き続き、回復期病棟でのリハビリを実施することが勧められる |
予後予測による目標設定、リハビリプログラムの立案、入院期間の設定などを行い、チームによる包括的なアプローチが推奨される |
グレードC(考慮してもいいが十分な科学的根拠はない) |
ファシリテーション〔Bobath法、Davis、PNF法、Brunnstrom法など〕は行っても良いが、伝統的なリハビリより有効であるという科学的な根拠はない |
肩関節亜脱臼の予防として、三角巾やスリングの使用を考慮しても良い |
経口摂取が困難と判断された患者においては、急性期から(発症7日以内)経管栄養を開始したほうが、末梢点滴のみ継続するよりも死亡率が少ない傾向があり勧められる |
トレーニング実施・中止基準
急性期のリハビリ方法
1.ポジショニング
廃用症候群(褥瘡、肺炎、拘縮、疼痛、浮腫など)の予防を目的に、体位変換と適切なポジショニングを実施します。
将来的に起こる可能性が高い拘縮(特に足関節底屈)、浮腫、肩の痛みなどを想定した肢位を選択します。
また、必要に応じて装具等での矯正も検討します。
2.呼吸管理
早期離床は、呼吸機能の維持や感染症の予防に効果的です。
人工呼吸器に依存している症例では、呼吸器系の感染症につながる場合もあるため、呼吸器のリズムに合わせて呼気介助を実施します。
一日に複数回は呼吸介助を行うことがあるため、療法士よりも看護師の役割が多いのが現状です。
3.ベッドアップ
座位保持を目指して段階的にベッドの角度を上げていく方法です。
開始前、直後、5分、15分、30分に自覚症状と血圧、脈拍や神経学的所見をトレーニング実施基準値と照合し、随時チェックしながら進めていきます。
基本的には、30度→60度→端座位→車椅子といった順序で負荷を上げてきます。各段階20-30分以上可能となったら次のステップに進みます。
近年は、初期から座位保持を実施して開始基準を適用する場合も多いため、座位保持で基準値から外れる場合のみ、段階的にベッドアップを行うことでもいいようです。
4.関節可動域運動
急性期では筋緊張が低下している場合も多く、低緊張では拘縮をきたす場合は少ないです。
しかし、将来に起こりうる二次的な障害に目を向けて、無理のない範囲で愛護的な可動域運動を実施することが推奨されます。
間違っても痛みを伴うような運動は控えてください。通常は、可動範囲の半分から7割程度で行います。
また、肩の場合は肩甲上腕関節には直接的な可動域運動は行わず、肩甲骨や頸部、体幹などからアプローチするほうが効果的です。
5.座位保持練習
坐位練習へ移行する基準として、血圧や脈拍などのバイタルが安定していること、神経症状の進行が停止していること、意識レベルがJCSで1桁であることが概ねの目安となります。
Andersonは、神経症状の進行が48時間なければ座位に移行するようにと述べています。
6.早期離床
症状が軽度の場合は、積極的に早期離床を促すことで状態の改善がはかれます。
歩行が困難な場合も、立ち上がり動作を100-200回ほど繰り返して、積極的に下肢筋力や耐久性を強化しておくことで、退院時の歩行動作の獲得に大きく影響を与えます。
7.その他
患者の状態が良好であれば、神経筋再教育、非麻痺側の筋力訓練、ADL・IADL練習、高次脳機能障害へのアプローチなども随時実施していきます。
基本的には、早期離床の早期リハビリが推奨されていますので、ペナンブラの回復を阻害しない範囲で開始していきます。
回復期リハビリテーション
脳卒中の回復期におけるリハビリについて解説していきます。
回復期(約9-12週間)のリハビリ内容
方法 | 内容 | |||||
装具療法 | 装具の作成(SLB,LLBなど) | |||||
徒手療法 | ROMex、ストレッチ、マッサージ | |||||
運動療法 | 膝立ち、歩行練習(装具完成後)、エアロバイク、麻痺側への荷重ex | |||||
生活指導 | 在宅復帰に向けたADL・IADL練習、復職訓練 | |||||
物理療法 | 電気刺激療法(TENS,FES) |
脳卒中の回復期について
回復期では、障害の全貌が明らかとなっていき、患者の予後についてもある程度の予測が可能となる時期です。
しかし、冒頭でも述べましたが、脳卒中の症状は多岐に渡るため、一律のプログラムを適用することはできません。
ここでは、症例が「Br.stageⅢ」で、歩行獲得を目指していると仮定しながら、一般的に用いられるプログラムの流れを記述していきます。
予後予測(基本動作自立時期)
入院時レベル | 起き上がり自立 | 移乗自立 | 病棟歩行自立 |
寝返りのみ自立 | 20日 | 38日 | 90日 |
起き上がりまで自立 | – | 32日 | 52日 |
移乗まで自立 | – | – | 26日 |
上記は脳卒中393名の歩行・基本動作能力に関する効果検証から示された指標になります。
入院時レベルは、回復期病棟に転院してきた時点でのレベルになりますので、発症からは2週間程度のタイムラグがあります。
また、ゴール設定をおこなう場合は、「認知症の有無」「尿意の有無」「非麻痺側の筋力」などが大きく影響してきます。
そのため、それらの症状を総合的に考慮してゴール設定は行います。
脳卒中 | 95% | 80% |
軽度 | 8.5週以内 | 3週以内 |
中等度 | 13週以内 | 7週以内 |
重度 | 17週以内 | 11.5週以内 |
最重度 | 20週以内 | 11.5週以内 |
上記は脳卒中患者1,197人を対象に調査されたADLがプラトーまでにかかる期間です。
機能回復は軽度ほどプラトーまでにかかる期間は短く、重度ほど長い傾向にあります。
総合的には、95%は12.5週で、80%は6週以内に頂点となります。神経学的回復はADLよりも2週間ほど早くピークを迎えます。
回復期における運動療法のエビデンス
グレードA(十分な科学的根拠がある) |
麻痺側上肢に対し、特定の訓練(麻痺側上肢のリーチ運動、メトロノームに合わせた両上肢の繰り返し運動、目的志向型運動、イメージ訓練など)を積極的に繰り返し行うことが強く勧められる |
グレードB(科学的な根拠がある) |
麻痺が軽度の患者に対しては、適応を選べば、非麻痺側上肢を抑制し、生活の中で麻痺側上肢を強制使用させる治療法が勧められる |
発症1か月以降も経口摂取困難な状況が継続している場合は胃瘻での栄養管理が勧められる |
グレードC(考慮してもいいが十分な科学的根拠はない) |
ファシリテーション〔Bobath法、Davis、PNF法、Brunnstrom法など〕は、行っても良いが、伝統的なリハビリテーションより有効であるという科学的な根拠はない |
痙縮により尖足があり、異常歩行を呈しているときに腱移行術を考慮しても良い |
麻痺側上肢の痙縮に対し、痙縮筋を伸長位に保持する装具の装着またはFES(機能的電気刺激)付装具を考慮しても良い |
回復期のリハビリプログラム
1.装具療法
歩行を獲得する上で問題となる頻度が多いのは、膝関節の支持性低下と足関節底屈の緊張亢進です。
膝折れが顕著で支持性の低下が重度の場合、または屈曲パターンが強い症例では、長下肢装具(LLB)を使用して膝関節を伸展位にロックします。
膝の支持性はあっても、足部の緊張が亢進して内反尖足となっている症例に対しては、短下肢装具(SLB)を選択します。
2.膝立ち・膝歩き
装具が完成するまでの間は、姿勢の矯正や股関節の支持性を高めるために膝立ち練習を中心に実施していきます。
負荷の高いトレーニングですが、その分だけ効果も絶大です。内反尖足があっても問題なく実施できるのが強みです。
膝立ちの保持が十分に可能となったら、ベッドの端や短いT字杖などを把持した状態で膝歩きに移行していきます。
床には小学校時代に使用したような固めのマットを敷くことで膝関節の負担を少なくできます。
3.関節可動域運動
脳卒中による麻痺で、最も注意したい二次障害が拘縮です。
痙性の抑制にはストレッチや可動域運動が有効であり、拘縮の可能性が高い部位に対して集中的にアプローチしていきます。
また、拘縮が発生するのは日常生活の中なので、リスクが高い症例に関しては生活指導も併行して指導していきます。
4.歩行練習
装具の完成後は、積極的に立位レベルでの運動に移行していきます。とくに麻痺側下肢への荷重練習は集中的に行ってください。
多くの場合、歩行が獲得できるかどうかは、患側への十分な荷重ができるかどうかにかかっています。
方法として、麻痺側を軸として健側下肢を台座へ挙上させます。
その際に、下肢はゆっくりと挙上してもらい、麻痺側の下肢伸展がしっかり出現するように誘導介助を実施します。
5.エアロバイク
通常のトレーニングに加えて、ぜひ取り入れていただきたいのがエアロバイクです。
エアロバイクは下肢の緊張を抑えることができ、歩行時の振り出しをスムーズにしてくれます。
麻痺側がペダルから外れてしまう患者に関しては、弾性包帯などで足部とペダルを固定すると上手く漕ぐことができます。
時間が確保できるなら、20-30分程度の実施が推奨されます。
6.物理療法
手関節背屈筋の筋力増強には、電気刺激が推奨されます。また、あらゆる痙縮に対し、高頻度のTENSを施行することも有効です。
麻痺側の肩関節可動域と亜脱臼の改善を目的としたFESも推奨されていますが、長時間の効果の持続は認められていません。
リハビリの実施基準
脳卒中患者では、約30%に無症候性の心筋虚血症がみられることより、心臓リハビリのガイドラインを活用することが推奨されます。
具体的には、脈拍で120回/分以下、血圧は250 /115mmHg以下、運動強度は5METs程度の範囲で実施していきます。
リハビリを開始して3週間以内は、これらの基準値を目安にしながらバイタルを注意深く確認していきます。
麻痺側上肢は積極的に使うべき
麻痺側上肢に対し、特定の訓練(麻痺側上肢のリーチ運動、メトロノームに合わせた両上肢の繰り返し運動、目的志向型運動など)を積極的に繰り返し行うことがガイドラインでは推奨されています。
随意性がまったくない症例では難しいですが、ある程度の動きが認められる場合は、生活環境を整えて麻痺側を使用するような工夫をしてください。
麻痺肢を積極的に使用すると、運動のやり過ぎで緊張が高くなってしまうのではないかとよく言われます。
しかし、運動によって緊張が亢進するという根拠はありません。むしろ、積極的な運動は麻痺側の緊張を抑えることがわかっています。
例えば、健側で上肢エルゴを10分ほど回すと、麻痺側の緊張が落ちていきます。他にも、歩行練習を30分以上続けると全身の緊張が落ちていきます。
維持期リハビリテーション
脳卒中の維持期(慢性期)では、より生活に即したリハビリの提供が求められます。
実際に、退院後に関わっていくのは外来リハビリや訪問リハビリ、デイケア、老人保健施設などが主になります。
維持期のリハビリでは、機能レベルでの回復よりも、能力や生活レベルでの向上を目指していくことが重要です。
復職を希望する場合は、就労能力を適切に評価し、その上で職業リハビリテーションの適応なども検討していきます。
慢性的に続いている維持期の外来リハに関しては、今後は廃止の方向で進んでおり、介護保険でフォローしていくことが決定しています。
介護保険においても、リハビリの目的はあくまで社会復帰ですので、漫然とした意味のないリハビリの提供は避けてください。
慢性期における運動療法のエビデンス
グレードA(十分な科学的根拠がある) |
回復期リハビリテーション終了後の慢性期脳卒中患者に対して、筋力、体力、歩行能力などを維持・向上させることが勧められる |
有酸素運動トレーニングもしくは有酸素運動と下肢筋力強化を組み合わせたトレーニングは、有酸素性能力、歩行能力、身体活動性、QOL、耐糖能を改善するので強く勧められる |
グレードB(科学的な根拠がある) |
退院後の機能低下を防ぐためにも、訪問リハビリテーションや外来リハビリテーション、地域リハビリテーションについての適応を考慮する |
骨量維持のため介助を要しても下肢に荷重をかけた立位や歩行が勧められる |
グレードC(考慮してもいいが十分な科学的根拠はない) |
在宅生活を維持、支援するための間欠入院によるリハビリテーションは行っても良いが、十分な科学的証拠はない |
介護者への訓練プログラム導入時期
患者だけでなく、介護者に対しても指導を行うことにより、退院後の患者の身体的改善に加えて、介護者の負担軽減やうつ病の減少効果が期待されています。
しかし、同プログラムを入院中から行うことの費用対効果を検討した結果では、通常ケアと変わらなかったことが報告されています。
この研究は既存の介護者への訓練プログラムを否定するものであり、とても興味深い結果となっています。
脳卒中直後は、家族としても精神的に不安定な状態であり、そのような状態でプログラムに取り組むことには無理があるのかもしれません。
介護者への訓練プログラムは、具体的な退院時期が決まってからでも遅くはないようなので、介入時期については注意が必要です。
参考資料/引用画像
- gooヘルスケア
- 脳卒中にならないためのリハビリテーション