腱板が断裂していても肩は上がるのか?

高齢者の肩をMRIで撮影してみると、その40%以上に大小なりの腱板断裂が認められるといわれています。

そのため、整形外科の外来では腱板断裂の診断名でリハビリのオーダーが出ることは非常に多いわけです。

腱板を構成する筋肉は、①棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋の4つを指しており、腱板断裂のほとんどは棘上筋腱です。

腱板断裂の種類

棘上筋腱が部分的に断裂した状態を「部分断裂」といい、完全に断裂した状態を「完全断裂」と呼びます。

場合によっては、棘下筋腱まで損傷していることもあり、棘下筋腱の1/3以上が断裂している状態を「広範囲断裂」といいます。

報告によると、完全断裂でも肩関節挙上が可能となるケースはありますが、広範囲断裂になると挙上は困難となる場合がほとんどです。

そのため、広範囲断裂では腱板をつなげる手術が必要となり、保存療法だけでは不十分と一般的には考えられています。

しかしながら、以前に担当させていただいた70代後半の患者では広範囲断裂にも関わらず、最終域までの挙上が可能でした。

その患者の特徴としては、非常に痩せ型であり、肩甲骨の上方回旋の可動性が十分に確保されていました。

ただし、ペインフルアークサイン(外転60〜120度の範囲でのみ肩の痛みが生じる)は陽性であり、患者の主訴は動作時痛でした。

腱板の機能不全によって肩峰下インピンジメントは生じていますが、そこを通り抜けられるだけの機能は残存していたと予想されます。

上腕骨頭の上方変位をできる限りに抑制するためには、①三角筋の過剰収縮を防ぐ、②下方関節包の拘縮を取り除くことが重要です。

三角筋の過剰収縮を抑制するためには、連結する僧帽筋が十分に働いており、肩甲骨がスムーズに上方回旋する必要があります。

前述した患者は痩せているために上肢が細く、軽いために持ち上げるための筋力がそれほど必要なかったことも影響しています。

下方関節包や後方関節包に拘縮が存在すると、肩関節を挙上するうえで上腕骨頭が押し上げられて上方に変位します。

そのため、関節包を中心とした周囲組織の柔軟性を高めることが、インピンジメントを最小限に抑えて肩関節の挙上を可能とさせます。

このようにいくつの条件が整っていたことが、広範囲断裂でも最終域までの挙上を可能にしていたのだと分析しています。

上肢の重さは治療でどうこうできる問題ではありませんので、リハビリでは調整できるところに対して最大限のアプローチを実施してください。


vc

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中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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