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腸腰筋(大腰筋,腸骨筋,小腰筋)

腸腰筋に関する充実したデータ(ストレッチ、筋力トレーニング、マッサージ方法など)をここでは閲覧できます。目次は以下になります。

腸腰筋の概要

腸腰筋(iliopsoas)は、①大腰筋、②腸骨筋、③小腰筋の総称になります。

脚を付け根から振り出す動作が腸腰筋の主な働きであり、歩行や走行時に重要な役割を担います。

骨盤と鼡径靭帯の間隙には、大腰筋や腸骨筋、大腿神経、外腸骨動静脈といった重要な組織が通過しています。

そのため、腸腰筋に腫脹などの障害が生じた場合、大腿神経や動静脈が圧迫されて、神経麻痺や血流障害などを生じてしまいます。

鼠径部の通過組織

①大腰筋の概要

大腰筋(psoas major)は体幹と下肢をつなげる唯一の筋肉であり、股関節屈曲といった機能だけでなく、脊椎の生理的弯曲を保持するといった役割も担います。

若い黒人男性の大腰筋は同世代の白人男性の3倍の断面積があるという報告もあり、大腰筋の大きさは短距離ランナーに黒人が多い理由と考えられています。

 1.前方から見た大腰筋
大腰筋|正面
 2.側方から見た大腰筋
大腰筋|側面
 3.後方から見た大腰筋
大腰筋|後面
支配神経 腰神経叢の前枝
髄節 L1-4
起始 ①浅頭:第12胸椎から第4腰椎の椎体側面および椎間円板側面
②深頭:全腰椎の肋骨突起
停止 大腿骨の小転子
栄養血管 腸腰動脈の腰枝
動作 股関節の屈曲、外旋(わずか)、腰椎前弯の形成、脊柱の安定化、骨盤前傾
筋体積 266㎤
筋線維長 10.0㎝
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
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大腰筋は股関節の伸展にも働く

大腰筋は股関節の屈曲筋ですが、実は股関節伸展にも働く筋肉になります。

強く脚を後方に蹴るような動作では、胸を張って腰椎を伸展(前弯を増加)させ、同時に骨盤を前傾させる必要があります。この動きはまさに大腰筋の作用です。

また、もうひとつ大腰筋には真逆に作用することがあるのですが、それは腰椎前弯の減少効果です。通常は大腰筋が収縮すると腰椎は前弯します。

しかし、骨盤が前傾しすぎると腰椎の位置が前方に出すぎてしまうため、反対に後方に押し戻すようなモーメントが発生します。

若い女性などでは骨盤の前傾が強すぎる人も多いので、大腰筋を鍛えることでアライメントを矯正することができる場合があります。

大腰筋の個別ストレッチング

①体重を前方下肢に移動し、膝関節を屈曲しながら腰椎を伸展、股関節を伸展・外転していきます。腸骨筋との違いは、腰椎伸展位と股関節外転位で伸張するところです。
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②片膝立ちの姿勢をとり、両手を大腿前面に置き、体重を前方下肢に移動していきます。下肢を屈曲しながら腰椎を伸展、股関節を伸展していきます。
大腰筋,ストレッチ,方法,膝立ち

大腰筋の筋力トレーニング

①背臥位にてお腹をへこませた状態で、鍛えたい側の下肢を70度前後に挙上して姿勢を保持します。
 Active-SLR|大腰筋の筋力トレーニング
②いわゆる腹筋運動のひとつですが、起き上がる角度が高くなるほどに大腰筋の活動が大きくなります。そのため、後期に重点的な負荷をかけるようにして実施します。
sit-up|大腰筋の筋力トレーニング

大腰筋のマッサージ方法

大腰筋は腹筋群の深層に位置しているために触れることはやや難しいのですが、緊張が強い場合は腹部上から確認することも可能です。

患者に背臥位をとってもらい、治療する側の股関節と膝関節を45度屈曲位とします。腹筋群を緩めた状態で、臍の下外方4-5㎝に指を置いて押圧します。

大腰筋の浅層には腹筋群以外にも腸が存在しますので、円を描くように指先を移動し、臓器をそっと押しのけてから大腰筋を触知します。

強い緊張が感じられる場合は、軽い持続圧迫を加えてリリースしていきます。

大腰筋|浅層筋

②腸骨筋の概要

腸骨筋(iliacus)は股関節を屈曲方向に振り出す主力筋になります。

骨盤の腸骨内面に付着しており、腸腰筋の中で最も深層に位置しています。腸骨の前面にあたって折れ曲がり、滑車のようにスライドして動くことが特徴です。

 1.前方から見た腸骨筋
腸骨筋|正面
 2.側方から見た腸骨筋
腸骨筋|側面
 3.後方から見た腸骨筋
腸骨筋|後面
支配神経 大腿神経および腰神経叢の枝
髄節 L2-4
起始 腸骨窩および下前腸骨棘
停止 大腿骨の小転子の下方
栄養血管 内側大腿回旋動脈、腸腰動脈の腸骨枝
動作 股関節の屈曲、外旋
筋体積 234㎤
筋線維長 10.0㎝
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0

腸骨筋の個別ストレッチング

①ベッドに対して斜めに背臥位をとります。片膝を立て、ストレッチ側の下肢をベッド外側に垂らします。両手で膝を抱え、引き寄せながら股関節を最大屈曲します。
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②片膝立ちの姿勢をとり、両手は床に置き、体重を前方下肢に移動していきます。下肢を屈曲しながら腰椎は前腕しないよう留意し、股関節を伸展していきます。
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腸骨筋のマッサージ方法

腸骨筋は鼡径靭帯の下部で表層に出てきますので、大腿直筋や縫工筋の内側にて容易に触知することが可能です。

起始部を触知する場合は、患者に背臥位をとってもらい、術者は四指を腸骨の外側に当てます。腹筋群や腸を押しのけつつ、深く押圧していきます。

腸骨筋に強い緊張が感じられる場合は、大腰筋と同様に軽い圧迫を加えてリリースしていきます。

腸骨筋|浅層筋

③小腰筋の概要

小腰筋(psoas minor)は元々が大腰筋からの分束であり、半数以下の人にしか存在しない特殊筋になります。

腸腰筋膜に停止し、腸腰筋の腱を引っ張るので股関節の屈曲に作用します。

腸腰筋|小腰筋

引用画像(1)

支配神経 腰神経叢の枝
髄節 L1
起始 Th12-L1椎体の外側面
停止 腸恥隆起と付近の筋膜
栄養血管 腸腰動脈の腰枝
動作 股関節の屈曲

腸腰筋の運動貢献度(順位)

貢献度 股関節屈曲
1位 大腰筋
2位 腸骨筋
3位 大腿直筋
4位 大腿筋膜張筋

※大腰筋の貢献度が最も高く、小腰筋はあまり貢献しません。

腸腰筋の触診方法

下記の写真では、座位にて股関節の屈曲運動を行い、大腿直筋の内側で腸骨筋の収縮を触知しています。腸骨筋は純粋な股関節屈曲運動に作用します。

自己触診:腸骨筋

腸腰筋の歩行時の筋活動

腸骨筋は遊脚初期(ISw)に働き、この時期は股関節を屈曲させて下肢を振り挙げる動作に働きます。

大腰筋はその手前の脚を後方に蹴り出す動作で強く収縮します。そこで大腰筋が働くことで腰椎伸展位を保つことができ、体幹を直立に保持することができます。

ここが崩れると歩行速度は低下し、骨盤は後傾して脚が振り出しにくくなってつまずくといったことにつながります。

腸骨筋|腸腰筋の歩行時の筋活動

トリガーポイントと関連痛領域

腸腰筋のトリガーポイント(TP)はいくつか存在しており、大腰筋の場合は起始部に、腸骨筋の場合は起始部と鼡径靭帯の下部あたりに現れます。

鼡径靭帯の下部は腸骨筋が折れ曲がって走行している部分であり、負担のかかりやすい場所ともいえます。

通常のTPは停止部の筋腱移行部に現れやすいのですが、腸腰筋の場合は姿勢を保持するために負担のかかる起始部に出現しやすいのが特徴です。

関連痛領域は腹部から大腿の前面、上殿部から腰背部と身体の前後面に出現します。虫垂炎に似た痛みを引き起こす場合もあります。

腸腰筋のトリガーポイント
腸腰筋の関連痛領域

腸腰筋はDFL(ディープ・フロント・ライン)という筋膜経線上に位置する筋肉であり、このラインは前後面の深層を通過しています。

そのため、身体前面から後面にかけて上下に派生するような痛みが生じる場合があります。

アナトミートレイン|DFL|ディープ・フロント・ライン

筋力トレーニング

①端座位をとり、背筋を伸ばすような感覚で後傾している骨盤を前傾させていきます。
腸腰筋,筋トレ,方法.骨盤前傾,後傾
②膝から足までをフラットベンチに乗せ(又は挙上)、腹筋を使って頭を膝に近づけます。
腸腰筋,上体起こし,腹筋運動,筋トレ
③椅子に浅く腰掛け、両手で座面を掴みます。その状態から脚の曲げ伸ばしを行っていきます。
筋トレ|チェア・ニートゥチェスト|腸腰筋の筋力トレーニング

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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