この記事では、腹横筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
腹横筋の概要
腹横筋は腹部で最も深層に位置している筋肉で、表層は腹斜筋や腹直筋などに覆われています。
腹横筋は内臓を収める腹膜の直上にあり、収縮することお腹をへこませて内臓や横隔膜を押し上げるため、息を吐く動きの主力筋になります。
そのため、横隔膜の拮抗筋は腹横筋といえます。腹横筋は腹部に付着していますが、脊柱の動きには関与しません。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | ①肋間神経(胸腹神経および肋下神経)(Th10-12)
②腸骨下腹神経(L1) ③腸骨鼠径神経(L1) |
起始 | ①第7-12肋軟骨の内面、胸腰筋膜の深葉
②鼠径靭帯、腸骨稜の内唇、上前腸骨棘 |
停止 | 剣状突起、白線、恥骨(恥骨結節、恥骨櫛) |
動作 | 下位肋骨を引き下げる、お腹を凹ませて腹腔内圧を上昇、努力性呼気 |
拮抗筋 | 横隔膜 |
腹横筋の触診方法
上前腸骨棘の2横指内側に指先を当て、下腹部をへこませると、深部で筋の収縮を触知することができます。
表層は外腹斜筋と内腹斜筋に覆われていますので、それらの筋の上から間接的に触知している状態となります。
筋力トレーニング
仰臥位にてお腹をへこませるように力を入れて、その姿勢を5秒ほど保持します。
四つ這いからの上下肢の挙上運動では、腹筋群と背筋群を共同収縮にて姿勢を保持します。
肘とつま先で姿勢を保持する方法では、主にアウターの腹筋群(腹直筋・腹斜筋・腹横筋)をより集中的に強化できます。
呼吸でお腹が膨らむ原理
呼吸を簡単に説明すると、横隔膜が収縮することで胸郭が拡がり、胸腔内圧が下がることで肺に空気が送り込まれます。
そうすると横隔膜の下部(腹腔)にある臓器が下方に押し下げられ、腹腔が変形してお腹が前方へ突き出た状態となります。
ここまでが吸気の流れですが、その後は収縮した横隔膜が弛緩することで胸郭が狭まり、胸腔内圧が上がることで肺から空気が出ていきます。
一般的に呼吸は横隔膜を主とした収縮弛緩運動で行われますが、そこに腹横筋の収縮が入ることでお腹がへこみ、臓器が押し上げられます。
そうすると上部の横隔膜もさらに押し上げられ、胸腔内圧が上がるため、息を大きく吐き出すことができます。
また、腹腔内圧が上がることによって胸腰筋膜や前方の筋膜が緊張し、腰椎の剛性が高まることで腰部への負担を減らせます。
関連する疾患
- 腰椎椎間板症
- 腰椎椎間板ヘルニア etc.
腰椎椎間板症との関係
ローカル筋(腹横筋)が働くことで5つの腰椎がひとつのユニットとして機能することができ、それを「one unit theory」と呼びます。
しかし、腹横筋が機能していないケースでは、下位腰椎に挙動が集中したヒンジ運動となり、下位腰椎の障害を招くことにつながります。
以上のことから、フラットバックのような姿勢だけが腰椎椎間板障害を起こすのではなく、腹横筋が働いていない腰椎前弯が増強した不良姿勢においても障害を起こす可能性があります。