膝蓋骨脱臼症のリハビリ治療

膝蓋骨脱臼症の概要

1.正常な位置(大腿骨下方)
2.膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨(膝のお皿)が本来の位置から外れる状態で、ほとんどが外側へ脱臼します。

膝蓋骨には大腿四頭筋が付着していますが、その中でも外側広筋は膝蓋骨を外側へ引く力が強く、硬くなりやすい一方、内側広筋は弱化しやすい傾向にあります。
このアンバランスが膝蓋骨を外側へ偏位させ、脱臼につながります。

  • 好発年齢:10代女性

  • 典型的受傷機転:バスケットボールやバレーボールなどのジャンプ着地時に外側広筋が強く収縮

原因と病態

  • 外側偏位が進行すると内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)が断裂し、膝蓋骨が外側へ脱臼

  • 発症時は疼痛・熱感・腫脹・発赤・機能障害などの炎症所見

  • MPFL損傷後は**20〜50%で再脱臼(反復性脱臼)**となり、膝関節の不安定性が残存

先天的・形態的リスク因子

  • 生まれつき関節が柔らかい(靱帯弛緩性の高い)女性

  • 膝蓋骨や大腿骨の形態異常

  • Q角の増大(大腿四頭筋と膝蓋靭帯のなす角度)

Q角の目安

  • 男性:約11.8°

  • 女性:約15.8°

Q角が大きいと、大腿四頭筋と膝蓋靭帯の牽引方向がずれて、内側膝蓋大腿靭帯へ過剰なストレスがかかり損傷しやすくなります。

手術の適応について

 

  • 適応:再脱臼を繰り返す、スポーツや日常生活に強い不安定感がある場合

  • 術式例:自家膝屈筋腱などを用いた内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)再建術
     →外側に偏位した膝蓋骨を元の位置に整復・安定化

リハビリテーション

膝蓋骨脱臼では、外側広筋・大腿筋膜張筋・外側膝蓋支帯など外側組織の硬さが外側偏位を助長します。
そのため、

  • 外側組織のストレッチ・リリースで柔軟性を改善

  • 内側広筋の強化で膝蓋骨の内側牽引力を高める

  • ニーイン(膝の内側倒れ込み)抑制:ランジなど膝関節屈曲動作で膝が内側に入らないよう指導


Q&A

Q1. 膝蓋骨脱臼はなぜ外側に多い?
A. 外側広筋は硬くなりやすく、内側広筋は弱化しやすいため、牽引バランスが崩れて外側偏位しやすくなります。

Q2. Q角が大きいと危険なのはなぜ?
A. 大腿四頭筋と膝蓋靭帯の牽引方向がずれて、内側膝蓋大腿靭帯に過剰なストレスがかかるためです。

Q3. 脱臼後に注意することは?
A. 再脱臼(反復性脱臼)を防ぐため、外側組織の柔軟性確保と内側広筋の強化が重要です。

Q4. 手術はどんなときに行う?
A. 再脱臼を繰り返す、スポーツや日常生活で強い不安定感がある場合にMPFL再建術などを行います。


最終更新:2025-09-17