膵臓の位置と関連痛領域について図で解説

膵臓の概要

膵臓の場所

  • 膵臓(pancreas)は後腹膜臓器。胃の“うしろ”で後腹壁に張り付き、右に十二指腸、左に脾臓があります。

  • おおむねL1–L2高。**膵頭(右)<膵尾(左)**の順に高く、左上へ約30°傾斜

  • 大きさ:長さ約15 cm、重さ約70 g。

構造と機能

膵臓の前方構造

膵臓の後方

  • 外分泌(約90%):腺房と導管系。消化酵素(蛋白・脂肪・糖質)+重炭酸膵管→十二指腸へ。

  • 内分泌(約1–2%):ランゲルハンス島。インスリン、グルカゴンなどを血中へ
    消化血糖調節の両方を担う“二刀流”の臓器。

症状と関連痛(目安)

膵臓の関連痛領域

  • 典型痛:みぞおち(心窩部)の深部痛が背部へ帯状に放散食後や仰臥位で増悪しやすい。

  • 左右差:膵体尾部の炎症は左上腹部〜背部の訴えが目立つことが多い。

  • 鑑別に注意:腰背部痛として訴える例もあり、筋骨格疼痛との取り違えに注意。

膵炎の主因

  • 胆石アルコールが二大原因。比率は地域差あり(「半数がアルコール」は一律ではありません)。

  • まずは飲酒制限/禁酒が必須。脂質過多も控える。

触診・圧痛点について(臨床メモ)

膵臓の圧痛点

  • 体表から膵臓そのものは触れません。脊椎周囲の圧痛(例:T7–T8付近)は補助的所見に過ぎず、診断根拠にはならない点に留意。

  • 手技介入は内科評価後に。急性膵炎疑いでは徒手刺激を行わないのが原則。

受診のめやす(レッドフラッグ)

次のいずれかがあれば直ちに医療機関へ

  • 突然の強い心窩部〜背部痛、持続する悪心・嘔吐

  • 発熱、黄疸、血圧低下、腹部膨隆

  • 飲酒後の激しい上腹部痛脂っこい食事で悪化する痛み

  • 尿や便の色の異常(褐色尿、灰白色便)

生活・リハの要点(慢性期の補助)

  • 禁酒低脂肪食小分け食

  • 体位で痛みが増す場合、やや前屈位左側臥位で軽減することあり。

  • 体幹の過伸展姿勢を避け、胸郭のやさしい可動性訓練は痛みが落ち着いてから


Q&A

Q1. 背中が痛い=膵臓の病気ですか?
A. 多くは筋骨格由来です。姿勢で変わらない帯状痛食後増悪・悪心を伴うなら受診を。

Q2. お酒をやめれば治りますか?
A. 原因がアルコールなら禁酒は必須ですが、胆石や薬剤など他原因も。自己判断せず受診を。

Q3. 市販薬で様子見してよい?
A. 強い上腹部〜背部痛や嘔吐があれば様子見せず救急へ。軽症でも繰り返すなら専門医へ。

Q4. どの科に行けば?
A. まずは内科/消化器内科。必要に応じて**画像検査(腹部エコー・CT)**が検討されます。


最終更新:2025-10-07