鎖骨の場所と付着する筋肉について

鎖骨の概要

鎖骨(clavicle)は、胸骨と肩甲骨を連結する緩やかなS字状を描く長骨です。上肢を形成する骨格の中で、上肢帯と体幹を直接連結する唯一の骨であり、肩甲骨を支持して上肢の可動性を確保する重要な役割を担います。

【鎖骨の語源について】 古代中国で囚人の体に穴を開け、鎖をこの骨につないで逃走を防止したことから「鎖骨」と名付けられたという逸話が有名ですが、これは俗説の域を出ません 。英語では「Clavicle」といい、「窓の鍵(留め金具)」を意味し、そのS字状の形状に由来しています 。日本では、杉田玄白の筆頭弟子である大槻玄沢が、『解体新書』を改訂する際に「鎖を閉ざす骨」という意味で「鎖骨」と名付けたとする説が最も信憑性が高いとされています 。

鎖骨の場所|人体模型


鎖骨が構成する関節

鎖骨は内側と外側で2つの関節を構成し、肩甲骨や上肢の動きをコントロールしています。

  • 内側端(胸骨端):胸骨柄と連結して胸鎖関節を構成します。胸鎖関節は鞍関節に分類され、関節内部に関節円板を有するため運動性に富んでいます。前・後胸鎖靭帯、鎖骨間靭帯、肋鎖靭帯によって強固に補強されています
  • 外側端(肩峰端):肩甲骨の肩峰と連結して肩鎖関節を構成します。肩鎖関節は平面関節であり、関節自体の運動性は乏しいですが、肩鎖靭帯や強靭な烏口鎖骨靭帯(菱形靭帯・円錐靭帯)によってしっかり固定され、鎖骨の動きを肩甲骨に確実に伝達します

各部位の名称と役割について

鎖骨には様々な靭帯や筋肉が付着するため、特有の隆起や粗面が存在します。

1.上方から見た鎖骨
鎖骨上面|各部位の名称
2.下方ら見た鎖骨
鎖骨下面|各部位の名称
部位
機能・特徴
起始 / 停止・付着
肩峰関節面
肩甲骨肩峰と関節形成
肩鎖関節を構成、肩鎖靭帯が付着
胸骨関節面
胸骨柄と関節形成
胸鎖関節を構成、前・後胸鎖靭帯が付着
肩峰端(外側端)
外側の膨隆部
三角筋前部線維(起始)、僧帽筋上部線維(停止)
胸骨端(内側端)
内側の膨隆部
大胸筋鎖骨部線維(起始)、胸鎖乳突筋(起始)
肋鎖靭帯圧痕
鎖骨下面内側にある粗面
肋鎖靭帯が付着
鎖骨下筋溝
鎖骨下面外側にある溝
鎖骨下筋(停止)
円錐靭帯結節
鎖骨下面外側後方の隆起
烏口鎖骨靭帯(円錐靭帯)が付着
菱形靭帯線
鎖骨下面外側前方の粗面
烏口鎖骨靭帯(菱形靭帯)が付着

鎖骨の主な機能的役割

  • 上肢の運動域の拡大:胸鎖関節を支点として鎖骨が円錐運動を行い、肩甲骨の位置を変えることで、肩関節の可動域を大きく広げています
  • 筋の起始・停止基盤の提供:三角筋、大胸筋、僧帽筋など、肩関節の運動に関わる多くの巨大な筋肉の付着部となります
  • 血管・神経の保護:鎖骨と第1肋骨の間隙(肋鎖間隙)を通る腕神経叢、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈などの重要な血管や神経の通り道を構成し、これらを保護します
  • 力の伝達と支持:強靭な烏口鎖骨靭帯を介して、体幹からの支持力を肩甲骨や上肢へ伝えます

Q&A

Q. 鎖骨はなぜ骨折しやすい?
A. 鎖骨はS字状に湾曲した細い骨であり、皮下直下に位置しています。そのため、転倒して肩から落ちたり、手をついたりした際の外力が直接伝わりやすい構造になっているためです 。小児や若年者のスポーツ外傷でも頻度が高い骨折です。

Q. 鎖骨の動きは肩関節運動にどう影響する?
A. 上肢を挙上する際、鎖骨は胸鎖関節を支点として挙上、後退(後方牽引)、および後方への軸回旋を行います 。この鎖骨の動きが肩甲骨の上方回旋や後傾などの動きに同調することで、腕を上までスムーズに挙上することが可能になります 。もし鎖骨の動きが制限されると、肩甲骨の動きも阻害され、肩の可動域制限につながります。

Q. 鎖骨の臨床的重要性は?
A. 鎖骨と第1肋骨の間(肋鎖間隙)という非常に狭いトンネルには、腕神経叢や鎖骨下動・静脈が走行しています 。なで肩などの不良姿勢による鎖骨の下制や、鎖骨骨折後の変形治癒などによりこの隙間が狭くなると、神経や血管が圧迫・牽引されます 。これが「胸郭出口症候群(肋鎖症候群)」の原因となり、上肢のしびれ、冷感、鈍痛などを引き起こすため、鎖骨のアライメントや運動性は非常に重要です 。


最終更新:2026-07-19