この記事では、長腓骨筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
長腓骨筋の概要
長腓骨筋は下腿外側の浅層を走行しており、腱は外果の後方を通過して足底を回り込むようにして内側楔状骨と第1中足骨底に停止します。
長腓骨筋は足関節の外反に作用し、さらに外側縦アーチと近位横アーチの形成にも貢献しています。
足関節外反に作用する筋肉は、長腓骨筋以外に短腓骨筋と第三腓骨筋があり、3つをまとめて腓骨筋群(または単に腓骨筋)と呼びます。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 浅腓骨神経 |
髄節 | L4-S1 |
起始 | 腓骨頭、腓骨の外側面の近位2/3、筋間中隔 |
停止 | 内側楔状骨、第1中足骨底 |
栄養血管 | 腓骨動脈 |
動作 | 足関節の外反,底屈 |
筋体積 | 105㎤ |
筋線維長 | 4.3㎝ |
速筋:遅筋(%) | 37.5:62.5 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
足関節外反 |
足関節底屈 |
1位 | 長腓骨筋 | ヒラメ筋 |
2位 | 短腓骨筋 | 腓腹筋 |
3位 | 第三腓骨筋 | 長腓骨筋 |
長腓骨筋の触診方法
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写真では、足関節を外反させて長腓骨筋を収縮し、外果の後方を通過する長腓骨筋腱を隆起させて触診しています。
筋腹は下腿最外側部、腓骨頭から下腿近位3/4までに触知でき、前縁は長趾伸筋、後縁はヒラメ筋と筋間を形成します。
触診は短腓骨筋とともに筋腹を腓骨に押し当てるようにして行います。
下腿の断面図
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下腿中央を断面でみた場合、長腓骨筋は腓骨の外側に貼り付くように位置していることがよくわかります。
触診する場合は、まず外側でヒラメ筋に触れて、その前側にある長腓骨筋との境目を探りながら診ていくとわかりやすいです。
短腓骨筋や第三腓骨筋は下腿中央より下部に位置しているため、断面図には描かれていません。
ストレッチ方法
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座位にて足関節を内反させて、外果を床面につけるようにしながら伸張させていきます。
筋力トレーニング
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立位の姿勢をとり、前方に重心をかけるようにして踵を上げていきます。
その際に、親指に体重をのせることで外反作用が働き、より腓骨筋に負荷を与えることができます。
足底のアーチ
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部位 |
支持する筋肉 |
内側縦アーチ | 前脛骨筋 |
後脛骨筋 | |
長母趾屈筋 | |
長趾屈筋 | |
母趾外転筋 | |
外側縦アーチ | 長腓骨筋 |
短腓骨筋 |
長腓骨筋と短腓骨筋は足底の外側縦アーチを支持しており、それらの筋肉が弱化しているとアーチが崩れる場合があります。
外側縦アーチが低下している場合は、荷重が足底外側に変位してしまい、足関節内反捻挫を起こしやすくなります。
また、第5中足骨頭部に胼胝(たこ)を形成していることが多いです。
アナトミートレイン
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長腓骨筋はSPL(スパイラル・ライン)の筋膜経線上に位置しています。
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また、腓骨筋はLL(ラテラル・ライン)の筋膜経線にも属しております。
歩行時の筋活動
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腓骨筋は立脚中期(MSt)から立脚終期(TSt)まで活動し、この期間は下腿三頭筋といった底屈筋と同様の働きをみせます。
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立脚中期より長腓骨筋が働くことで足部が外反(回内)していき、母趾から蹴り出していけるような軌道を描くことができます。
ヒトでは立位でのバランスをとる際に足関節構を利用しており、足部周囲の脛骨筋や腓骨筋が働いて身体を微調整しています。
そのため、常に微妙な収縮が入ることから、これらの筋肉は赤筋線維の割合が非常に豊富となっています。
関連する疾患
- 内反捻挫後遺症
- 足関節不安定症
- 腓骨筋腱脱臼
- 腓骨筋腱鞘炎 etc.
内反捻挫後遺症
足関節捻挫のほとんどは内反捻挫であり、内反強制されることで内反を制動するための腓骨筋群や外側靱帯などの周囲組織が引き伸ばされて損傷します。
このときに腓骨筋群はトリガーポイントを発生させることで受傷者に内反位をとらせないようにし、短縮することで自己防衛をとります。
周囲組織の治癒が完了したあとでも、トリガーポイントが形成されたままにあると、いつまでも足関節外側に痛みを訴えます。
足関節不安定症
腓骨筋群に残されたトリガーポイントは、腓骨筋群を引き伸ばし、機能不全を起こします。
そうすると立脚中期から後期にかけて足部の外反が生じにくくなり、足関節は不安定となって内反捻挫を繰り返しやすくなります。
そのため、内反捻挫の予防には腓骨筋群のトレーニングが必須となります。