非特異的腰痛症について正しく理解する

非特異的腰痛症(いわゆる腰痛症)のリハビリ治療について、わかりやすく解説していきます。

腰痛の原因を探る診断チャート

腰痛の簡易診断チャート①
腰痛の簡易診断チャート②

腰の痛みを検査する場合は、まずは単純X線撮影を行い、骨折などの所見が見当たらないか、脊椎に変性がないかを確認します。

次に神経症状の有無を確認し、もしも感覚障害や筋力低下、反射異常など、神経障害が認められるようならMRI撮影を行います。

単純X線では神経や軟部組織が映りませんので、MRI撮影にて神経の圧迫(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症)があるかを確認します。

画像検査で問題が認められず、腰痛を起こしている原因組織が特定できない場合には非特異的腰痛症となります。

整形外科疾患以外の腰痛症

前述した診断チャートは、あくまで一般的な整形外科疾患に伴う腰痛であることを仮定した場合の鑑別方法です。

しかし実際には、がんの脊椎転移や内臓障害(腎臓や膵臓)でも腰痛は起こるため、それらの疾患は確実に鑑別する必要があります。

そのために提唱されている方法がレッドフラッグサインであり、以下の7つの項目のどれかに該当するようなら精密検査を行います。

  1. 20歳以下または55歳以上
  2. 時間や活動性に関係のない腰痛
  3. 広範囲に及ぶ神経症状
  4. 原因不明の体重減少
  5. 癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
  6. 1ヵ月以上改善のない腰痛
  7. 発熱

上記に該当する場合は、重篤な疾患が隠れている可能性が考えられるため、血液検査が必要となります。

非特異的腰痛症の概要

医師の診察および画像検査(X線やMRIなど)で腰痛の原因が特定できるものを特異的腰痛症、特定できないものを非特異的腰痛症といいます。

腰痛の約85%は非特異的腰痛症に分類されることから、ほとんどの腰痛症は原因組織が特定できない状況にあります。

非特異的腰痛症の80%以上は3ヶ月以内に自然寛解することが知られており、臨床的には「命に危険のない疼痛」と考えられています。

しかし、一旦痛みが落ち着いたとしても、1年以内の腰痛の再発率は約80%と非常に高いことが報告されています。

割合

腰痛の85%が原因不明な理由

腰痛の85%は原因不明といわれていますが、何故これほどまでに原因がわからないのでしょうか。

その理由のひとつに精密な検査が実施されない背景があります。

医師が腰痛患者に実施する検査は概ね決まっており、①問診、②画像検査(単純X線やMRI)、③徒手的な神経検査の3つです。

しかし、この3つの検査だけで特定できる腰痛症は全体の15%程度であり、その他の原因を特定することはできません。

なぜ残りの85%の腰痛の原因を精査して特定しないのかと思ったかもしれませんが、ここにも理由が存在します。

前述した検査で発見できる15%というのは、重大な症状を引き起こす可能性がある腰痛症であるため、確実に鑑別する必要があります。

それに対して、残りの85%の腰痛は重篤な症状を引き起こすことはありませんし、患者の80%は3ヶ月以内に自然治癒します。

そのため、医者が忙しい時間をつかって、わざわざ原因組織を特定する必要がないというわけです。

それが結果的に腰痛の85%は原因がわからないといわれる所以になっており、腰痛症を軽くみられることにつながっています。

腰痛の85%が原因不明な理由

骨盤の歪みと腰痛は関係ない

よくテレビで整体師が骨盤の歪みが腰痛の原因と得意げに語っていますが、実際は骨盤の歪みや脊椎の彎曲と腰痛に因果関係はありません。

そもそも、人間の体は左右対称にはできておらず、最大の臓器である肝臓などの重みによって、ほとんどのヒトの骨盤や背骨は歪んでいます。

歪みと腰痛の関係性については、今より50年以上も前から幾度となく研究されてきており、関係がないと結論づけられています。

なので、腰痛のすべてを骨盤や背骨の歪みのせいにしている治療家には注意が必要であり、整えたから治るという保証はどこにもありません。

腰痛と遺伝の関係性

シドニー大学の双子を対象とした研究では、慢性腰痛の有病率は遺伝的に有意であることが示されています。(遺伝率32%)

また、脊柱管の広さなども遺伝することがわかっており、親が腰部脊柱管狭窄症を発生しているケースでは、子供も先天的に脊柱管が狭小化している場合が多いようです。

身長の高い低いが遺伝するように、ヒトの骨格は親からの遺伝的な要因が大きいので、親と同じタイプの腰痛にならないように注意が必要です。

腰痛と遺伝

脊椎の椎間板は加齢により変性しますが、変性に関与する遺伝子CHST3が発見され、腰痛が遺伝することはさらなる根拠を持つようになりました。

遺伝の影響は必ずしも大きいものではありませんが、事前になりやすい病気を知っておくことで対策をうつことも可能です。

仕事環境で腰痛が出現する

腰痛の発生には遺伝が関係していますが、それよりも重要なのは環境要因です。

職業別の腰痛有病割合においては、作業中に中腰や体幹の回旋を伴う作業、定期的に姿勢を変えることのできない環境などが腰痛の発症頻度を高めることが報告されています。

椎間板内圧②

上の図は姿勢別の椎間板内圧を示したものですが、座位や前屈動作で内圧が上昇することがわかっています。

ただし、原則的には椎間板に神経や血管支配はなく(線維輪の後方表層にのみ神経終末はある)、腰痛の主な誘発組織にはなりません。

前屈で腰痛を誘発させる主な組織は腰部の筋膜であり、筋膜は日によって硬さが変化しやすいといった特徴を持ちます。

また、精神的ストレスや疲労なども筋膜の硬さを助長することになるため、身体を温めて睡眠を十分にとることも大切です。

腰痛の好発年齢(原因別)

若年者 中年者 高年者
椎間関節障害 椎間板ヘルニア 脊椎圧迫骨折
腰椎分離症 椎間板症 脊柱管狭窄症
強直性脊椎炎 ぎっくり腰 腰椎終板炎
筋筋膜性腰痛 心因性腰痛症 筋筋膜性腰痛
椎間板ヘルニア 仙腸関節障害 脊椎・脊髄腫瘍
筋筋膜性腰痛 内臓由来性連痛
血管由来性腰痛

脊椎の動きで原因部位を特定する

腰痛の原因を疼痛誘発動作から推測.002
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腰痛の原因を疼痛誘発動作から推測2.001
腰痛の原因を疼痛誘発動作から推測.019

vc

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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