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頚椎症性脊髄症(頚髄症)のリハビリ治療【ガイドライン参考】


頚椎症性脊髄症(頚髄症)のリハビリ治療に関して、ガイドラインを参考にしてわかりやすく解説していきます。目次は以下になります。

頚髄症の概要

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頚椎症性脊髄症とは、脊髄の通り道である頸椎脊柱管が、頸椎の加齢的変化(後方骨棘や椎間板膨隆)により狭小化され、頸部の脊髄(頚髄)を圧迫することで起こります。

頚髄から分岐した神経根を圧迫する「頚椎症性神経根症」と比較すると強い痛みを伴うことは少ないですが、予後が不良な場合が多く、手術に至るケースも少なくありません。

5年以上の経過観察では、明らかに頚髄症が悪化した人は全体の約1/4で、残りの3/4は大きな変化がなかったと報告されています。

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頚髄症の症状

脊髄が直接的に圧迫されるため、圧迫されている領域以下すべての神経障害が出現します。よって、障害は上肢のみにとどまらず、下肢にも出現します。

脊髄は中枢神経であるため、障害されると障害部位より下位の中枢性麻痺が起こります。また、神経根まで圧迫している場合は、障害部位のレベルで末梢性麻痺が生じます。

例えば、C5/6の椎間板膨隆による圧迫が原因の場合は、C7以下の中枢性麻痺が現れます。椎間板が神経根まで圧迫している場合は、C6の神経根症状が出現します。

中枢性麻痺 末梢性麻痺
筋緊張
深部反射
病的反射
筋萎縮
筋線維束攣縮

頚髄症の中枢性麻痺では、上肢筋の緊張亢進にて箸を上手く使えなくなる(巧緻動作障害)、下肢筋の緊張亢進にて歩きにくくなる(痙性歩行)といった症状が起こります。

末梢性麻痺では筋緊張は低下し、深部腱反射も減弱または消失しますので、神経症状を確認しながらどのレベルにどちらの障害が出ているかを確認することが必要です。

好発部位は、①C5-6、②C6-7、③C4-5なので、とくにそのあたりの神経症状を診ていきます。

神経根 C5 C6 C7
腱反射 上腕二頭筋反射↓ 腕橈骨筋反射↓ 上腕三頭筋反射↓
筋力低下 三角筋 上腕二頭筋 上腕三頭筋
感覚障害 上腕外側 前腕外側,母指,示指 示指,中指
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頚髄症は後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症などでも同様の症状が出現するため、必ず画像診断にて原因部位を特定しておくことが必要になります。

脊椎|側面|黄色靭帯|後縦靭帯

巧緻動作の確認テスト

上肢の巧緻動作を簡単に確認するテストとして、上肢を挙上した状態からグーとパーを繰り返す動作を10秒間反復する「10秒テスト」があります。

基準値として、10秒間に反復回数が20回以下なら巧緻動作障害を疑うことができます。数え方として、グーで1回、パーで1回なので、一度の動作でカウントは2回となります。

グーパー体操 ten second test

手術①:脊柱管拡大術(椎弓形成術)

頚髄症に対する手術の適応は、麻痺が進行性であり、筋力低下や歩行障害、しびれなどにより日常生活に大きな支障をきたしている場合になります。方法は、脊柱管拡大術と頸椎前方固定法のふたつがあります。

脊柱管拡大術では、基本的に2椎間以上の多椎間で圧迫を受けている症例や、発育性脊柱管狭窄を伴う症例が適応になります。前方固定術のように椎間固定を実施しないため、隣接椎への負担が少なく、早期の復帰が可能となります。

頚髄の圧迫が除去されるために症状が軽快しますが、脊髄に不可逆性の損傷を呈していた場合は完全な回復が望めません。しかし、それ以上の圧迫損傷を予防できるといった利点もあります。

手術の方法として、片開き式脊柱管拡大術と観音開き脊柱管拡大術があります。術後合併症では、C5領域の神経損傷麻痺が約5%とされています。

手術が行えない症例として、頸椎後弯が強い患者では前方の圧迫がとれず、また後方手術により後弯の増強をきたす危険があるため手術適応とはなりません。

また、脊椎に不安定を呈する脊髄症も適応とはなりにくく、その場合は固定術が優先的に適応となります。

片開き式脊柱管拡大術 観音開き式脊柱管拡大術 
頚部脊柱管拡大術|片開き式 頚部脊柱管拡大術|観音開き式

手術②:頸椎前方固定術

脊柱管拡大術が後方からアプローチするのに対して、頸椎前方固定術は前方からアプローチするのが特徴です。

ヘルニアなどの圧迫病変を直接切除できるので合理的ですが、頚部前方は甲状腺や気道、食道、内頚動静脈、迷走神経などの重要な組織が集中しています。そのため、後方アプローチよりもリスクは高くなります。

通常は1,2椎間の限局性病変が適応となり、前方より椎間板や骨棘を切除し、移植骨による椎体間固定を行います。固定範囲が長くなる症例や不安定性が強い症例では、プレートによるインプラント固定を要する場合もあります。

頸椎椎間板ヘルニアに対する前方固定術

術後リハビリテーションの流れ

1.術後(術後から約1週間)
方法 脊柱管拡大術 頸椎前方固定術
装具療法 基本的に不要、頸椎カラー 頸椎カラー
運動療法 廃用予防、座位バランス、立位保持、移乗動作 廃用予防、座位保持
生活動作 頸椎の動きは控える、端座位レベルまで 頸椎の動きは控える、ドレーン使用
2.安静期(約1-2週間)
方法 脊柱管拡大術 頸椎前方固定術
装具療法 頸椎カラー(約2週)、抜糸 頸椎カラー
運動療法 立位バランス、バランスディスク 座位バランス、立位保持、移乗動作練習
生活動作 歩行器歩行、シャワー使用 歩行器歩行、トイレ使用
3.活動期(約2-4週間)
方法 脊柱管拡大術 頸椎前方固定術
装具療法 装具を外す 頸椎カラー(3カ月)
運動療法 歩行応用動作、頚部等尺性運動、頸椎ROMex 立位バランス、バランスディスク
生活動作 可能なら独歩自立 可能なら独歩自立、シャワー使用

保存療法のエビデンス

現状として、診療ガイドラインにおいても頚髄症に対して効果の認められるリハビリ方法は確立されておりません。

基本的に原因が頸椎の加齢的変化であるため、治療者が主に向き合うべき問題は根本的な解決ではなく、付随して起こる二次障害です。

そのため、療法士は如何にして患者が快適かつ活動的に過ごせるかを検討しなければなりません。麻痺の程度によっては食事動作が困難となったり、転倒の原因にもなるため、補助具などの使用も検討していきます。

牽引療法に関しては、効果があるとする報告もあるため、実施前後における状態の変化を確認し、必要に応じて適応の有無を判断するようにお願いします。

参考資料/引用画像

  • 日本整形外科学会発行のパンフレット「頚椎症」
  • 頚椎症性脊髄症の診療ガイドライン

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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