頸椎椎間関節障害のリハビリ治療

頸椎椎間関節障害のリハビリ治療に関して、わかりやすく解説していきます。

椎間関節の概要

脊椎は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨尾骨から成り、各椎骨は上位椎骨の下関節突起と下位椎骨の上関節突起から椎間関節を構成します。

椎間関節周囲には痛覚伝達に関与する神経線維や侵害受容器が豊富に存在するため、頸痛や腰痛の原因としては非常に多い場所です。

座位や立位においては、脊椎にかかる荷重の多くは椎間板が受け止めており、残りを椎間関節が担っています。

しかし、上記のMRI画像のように椎間板が変性している場合は、後方の椎間関節の負担が増加してしまいます。

椎間板が変性する原因

よくあるパターンとしては、胸椎の過後弯(猫背)に伴う頭部前方変位により、下位頸椎が過伸展することが原因として挙げられます。

椎間板は剪断力(前方すべり)や捻転力(回旋運動)に対して抵抗性が乏しいため、過伸展によって剪断力が増加した椎間板は変性します。

椎間板が変性しているレベルでは、後方の椎間関節の負担が増加することになるので、椎間関節障害のリスクが高まります。

危険な頚部痛を鑑別する

一部の頚部痛には危険性の高い疾患が含まれるため、それらを鑑別するために以下のレッドフラッグサインといった鑑別方法が示されています。

レッドフラッグサイン 考えられる障害
外傷性 骨折、脱臼
頸部手術の既往 神経損傷、インプラントの不具合
体重減少、夜間痛、20歳以下 悪性腫瘍
発熱 化膿性脊椎炎
激痛 骨腫瘍、石灰沈着性頚長筋炎
脊髄刺激症状 頚髄症

上記の症状に該当する場合は、必ず医療機関で精密な検査を行うことが必要となります。

首の痛みの8割は治る

神経症状を認めない頚部痛に関しては、3ヶ月以内に80%ちかい患者が自然治癒することが報告されています。

理由としては、首に痛みを起こす原因の多くは頚椎の椎間関節障害であり、炎症性の疼痛が生じていると考えられるからです。

痛みがあることでヒトは患部を安静に保ちますので、徐々に炎症は落ち着いていき、結果的に痛みが消失することにつながります。

椎間関節は伸展運動で負担が増加するため、痛みがある動作を避けることが早期に痛みを改善するためには必要です。

障害のある椎間関節を特定する

頚椎症による痛みの原因は主に椎間関節にありますが、頸椎は7つ存在しており、頸椎の上下は各々に椎間関節を形成しています。

さらに椎間関節は左右に存在しているため、どの高さの椎間関節レベルで、左右のどちらに障害があるかを特定する必要があります。

例えば、頚部を右側屈させると右側の椎間関節に負荷をかけることができるので、右側屈で痛みが出るなら右側の椎間関節障害を疑います。

どの高さの椎間関節に問題があるかを調べるには、後方からの棘突起を固定して、頚部を伸展してもらいます。

例えば、C5の棘突起を固定するとC5/6の動きを制限できますので、C5固定で痛みが消失し、C6固定で痛みがあるならC5/6の障害を疑います。

リハビリテーションの考え方

椎間関節障害のほとんどは3ヶ月以内に痛みが落ち着くので、それまでは疼痛を誘発する動作は避け、炎症を増悪させないことが大切です。

リハビリで重要なのは頸部痛が再発しないようにすることであり、そのためには不良姿勢を修正することが必要となります。

具体的な治療としては、①頭部前方位の修正、②斜角筋群を緩める、③椎間関節モビライゼーション、④コアを高めるなどが挙げられます。

①頭部前方位の修正

頭部前方位を修正するためには、猫背姿勢(胸椎の過後弯)をとらないように意識することが重要といえます。

例えば、デスクワークなどで座位をとることが多い人では、最初に「座り方」を指導していきます。

具体的には、①骨盤を前傾させる、②肩甲骨を後退・内転する、③顎を軽く引くといった3点を意識させ、その姿勢を30秒ほどキープしてもらいます。

頭部前方位となりやすい人のほとんどは骨盤前方位であり、お腹が前に突き出た弛緩姿勢となっています。

そのような人には「立ち方」も指導するようにし、普段から姿勢保持筋を使用した立位をとるように誘導していきます。

具体的には、①顎と股関節を軽く引く、②胸を軽く張るといった2点を意識させ、その姿勢を30秒ほどキープしてもらいます。

長時間の座位や立位などで疲労してくると不良姿勢をとりやすくなるので、休憩をこまめに挟むようにすることも大切です。

②斜角筋群を緩める

弛緩姿勢をとりやすい患者の多くで、アナトミー・トレイン(深筋膜の繋がりを示した図)におけるDFLの緊張が認められます。

DFL(ディープ・フロント・ライン)には斜角筋群が属しており、斜角筋が緊張していると下位頸椎の伸展を増強させる原因になります。

そのため、頸椎の椎間関節障害に対してDFL(主に斜角筋群)を緩めることは重要であり、過度な緊張が存在しないかを確かめる必要があります。

③椎間関節モビライゼーション

椎間関節の構造

椎間関節面にある骨や軟骨には痛覚受容器は存在していないので、実際に痛みを感じているのは関節包や脂肪組織、筋肉になります。

疼痛の発生機序としては、多裂筋の収縮不全や周囲組織の拘縮により、関節が正常の運動軌道から逸脱して関節包や脂肪体を挟み込むことで起こります。

例えば、C5/6間に椎間関節障害(脂肪組織などのインピンジメント)が存在する場合は、そこに付着する多裂筋深層線維の収縮不全が考えられます。

収縮を促すためには他動的に伸張と短縮を繰り返させるとよく、徒手的に椎間関節を軽く引き離してはゆっくり戻すような動きを加えていきます。

具体的な方法としては、患者に背臥位をとってもらい、施術者は頸椎を屈曲させた状態で牽引操作を行います。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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