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鵞足炎のリハビリ治療

鵞足炎の病態と治療法(リハビリテーション)について解説していきます。目次は以下になります。

鵞足炎の概要

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鵞足は膝関節内側(脛骨近位内側)で、①縫工筋、②薄筋、③半腱様筋の三つの筋肉の腱が扇状に付着する部位の総称を指します。付着部の形態が鵞鳥の足に似ていることから「鵞足」と名付けられました。

鵞足は各筋肉の支配神経が異なっているというのもひとつの特徴で、縫工筋は大腿神経(L2,3)、薄筋は閉鎖神経(L3,4)、半腱様筋は脛骨神経(L5-S2)となっています。

膝関節の屈曲と伸展が繰り返されることにより、鵞足は前後に移動し、深層に位置する膝の内側側副靭帯と摩擦が起こります。

摩擦から腱を守るために鵞足と内側側副靭帯の間には「鵞足滑液包」と呼ばれるクッションが存在していますが、刺激が限度を超えると鵞足滑液包や鵞足、靱帯が損傷して炎症が起こります。

炎症が起きると少し擦れるだけで痛みが起こるようになり、重度の場合は安静時にも痛みを感じるようになります。その状態を鵞足炎と呼びます。

鵞足炎は膝関節の屈伸を繰り返し続ける動作で起こるため、スポーツ習慣者(とくにマラソン選手やサッカー選手)に多く発生します。自覚症状は鵞足部の疼痛および圧痛で、膝関節の動きに伴う軋轢音や腫脹がみられることもあります。

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鵞足滑液包について

鵞足滑液包は縫工筋の下方(深層)に位置することから、縫工筋下滑液包と呼ばれる場合もあります。位置的には、半膜様筋の停止部の遠位に存在します。

滑液包とは、滑液の詰まった平たい袋のことで、皮膚や筋肉、腱、靱帯などと骨と擦れる部分に存在し、衝撃を吸収して滑りを良くするように作用しています。

内側側副靭帯の停止部(遠位部)で、後方半分あたりを覆うようにして存在しています。そのため、内側側副靭帯の前方が摩擦の影響を受けやすく、損傷しやすい傾向にあります。

ちなみに半膜様筋は鵞足に対して、腱(停止部)が脛骨のより近位にあるので鵞足には含まれませんが、その走行や配置から深鵞足と呼ばれることもあります。

半膜様筋の腱部は、膝関節上部(大腿骨遠位内側)にて半膜様筋下滑液包が存在しており、摩擦を受けやすいポイントになります。そのため、脛骨内側よりも大腿骨内側で圧痛が強い場合は、半膜様筋の滑液包炎を疑います。

外反膝(X脚)と鵞足炎

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鵞足炎を引き起こしやすい原因のひとつに外反膝があります。膝が外反すると鵞足が引き伸ばされるため、鵞足と内側側副靭帯の摩擦力が増加します。

そうすると鵞足滑液包が損傷するリスクが高く、周囲の組織に炎症が起こりやすくなります。

膝関節が緩い(動揺性がある)状態はサポーターなどで補助が可能なので、症状を確認しながら適応の有無を検討します。

変形性股関節症と鵞足炎

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変形性股関節症がある場合は、股関節の内圧が上昇すると痛みが誘発されるため、立位姿勢における股関節外転筋(中殿筋)による骨盤支持が難しくなります。

そこで代償的に股関節内転筋群(大内転筋や長内転筋)を収縮させることで骨盤の支持を高めようとするため、結果的に股関節は内転して膝関節は外反します。

膝関節が外反すると前述したように鵞足と内側側副靭帯の摩擦力が増しますので、結果的に鵞足炎を起こしやすい状態となります。

アプローチ方法としては、基本的に痛みは炎症によるものなので、しっかり股関節をケアしながら炎症が治まるのを待ち、支持できるように調整することが必要となります。

痛みの原因となっている筋肉を鑑別

鵞足に痛みがある場合、原因部位は鵞足を形成する筋肉(①縫工筋,②薄筋,③半腱様筋)、鵞足滑液包、膝の内側側副靭帯の三つが考えられます。

その中で筋肉の問題を鑑別するためには、選択的に三つの筋肉をひとつずつ伸張(緊張)させていき、疼痛の有無や強弱を確認することが有用です。以下にそれぞれの筋肉の伸張法について解説します。

筋肉①:縫工筋

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縫工筋を選択的に伸張させるには、腹臥位にて肘を立て、体幹を伸展した状態をとります。大腿遠位部には巻いたタオルを置き、股関節はやや伸展位に保持します。

その姿勢から前足部内側を把持して膝関節を屈曲させていき、同時に股関節を内旋するように誘導しながら床方向に押していきます。

筋肉②:薄筋

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薄筋を選択的に伸張するには、片膝立ちの姿勢をとり、もう片方の下肢は膝関節を伸展・外旋位(つま先を天井に向ける)に保持します。

下肢は上体より後方に位置(股関節伸展位)するように置き、体重を膝で支えている側に移動させながら薄筋を伸張していきます。

筋肉③:半腱様筋

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半腱様筋を選択的に伸張するには、長坐位にて下肢を屈曲し、足底を大腿遠位部内側に置きます。もう片方の股関節は軽度内旋位とした状態で、体幹を足部外側方向に向けて前屈していきます。

内側側副靭帯への負荷試験

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内側側副靭帯の損傷を確認するためには、膝関節外反ストレステストによって負荷を与えていきます。方法は、膝関節屈曲30度位にて徒手的に脛骨を外反させます。

損傷がある場合は痛みを感じたり、部分断裂がある場合は動揺性が出現します。負荷試験では、外反ストレステスト以外にも、直接的に押圧を加えることで圧痛の有無の確認します。

鵞足炎の薬物療法

炎症の原因はあくまでオーバーユースなので、治療は安静が第一です。痛み止めとして、消炎鎮痛を目的とした湿布薬や内服薬が処方されますが、副作用もあるので使用はできる限り控えます。

痛みが重度の場合は注射療法(ステロイド)が選択される場合もありますが、鵞足炎でそこまで状態が悪化することは稀です。

服薬などは最小限に止めながら、安静とリハビリテーションを中心にして治療と再発の予防に取り組んでいくことが大切です。

リハビリテーション

  1. 生活指導
  2. 物理療法(アイシング,超音波療法)
  3. 鵞足のストレッチング
  4. 下肢の支持性を調整
  5. 装具療法

生活指導と靴の調整

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鵞足炎は基本的にオーバーユース(使いすぎ)による炎症なので、しばらくは運動を中止して炎症が落ち着くのを待つことが大切です。

仕事の都合なので安静が難しい場合は、シューズの影響について説明するようにします。走行着地時の衝撃吸収作用は靴底の厚さに影響され、9㎜薄くなると80㎏増えるといわれています。

また、靴底の内側が磨り減った靴を履いていると、膝関節の外反トルクを増大させ、鵞足の負担を増加させる原因となります。

踵の周りはヒールカウンターと呼ばれ、着地時の脚のローリングをコントロールしており、この部分が柔らかすぎると足部の動きが過剰となり、関節への負担が増加します。

なので、靴底が浅いシューズや、磨り減ってしまったシューズの使用はランニングでは控えるように指導します。また、実施後のアイシングを徹底するようにします。

日本臨床スポーツ医学会は、ランニング障害と走行距離を調査した結果から、ランニング障害予防のための1日の走行距離の目安を定めています。

中学生は5-10㎞(月間200㎞)、高校生は15㎞(月間400㎞)、大学・実業団は30㎞(月間700㎞)、中高年は5-10㎞(月間200㎞)以内が望ましいとしています。

物理療法の効果

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鵞足炎の急性期はアイシングが有効で、熱感が引くまでは定期的に冷やすように指導します。とくに運動が中止できない患者では、運動後の冷却は必須です。

お勧めはダイソーに売られているソフトアイスマクラで、患部を包み込むようにして当てることができます。冷やす時間は5-10分ほどにします。

炎症が治まったら超音波療法を実施し、損傷部位の回復が促進できるようにアプローチしていきます。中途半端な状態で運動を再開すると痛みがまた起こるため、確実に治してから復帰することが大切です。

鵞足のストレッチング

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鵞足を構成する各筋肉の伸張法については前述しましたが、それらの柔軟性を確保しておくことは摩擦力を軽減する方向に作用します。

短縮している場合は鵞足滑液包が押し付けられて窮屈な状態となるため、できる限りに伸張性を保っておくことは再発を予防するために重要です。

炎症にて強い痛みがあるうちはストレッチをすると反対に筋緊張が増してしまうので、状態が落ち着いてから痛みのない範囲で実施するように指導します。

下肢の支持性を調整

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本来は立位保持で股関節内転筋群は働きませんが、前述したように下肢の支持性が低下している場合は股関節外転筋の働きを代償するように内転筋群が活動します。

その状態でランニングを続けると鵞足へのストレスも増すため、外転筋を鍛えることで下肢の支持性を調整することにより、ストレスを軽減できるようにアプローチしていきます。

内転筋群は緊張や硬結部を確認していきながら、必要に応じてリラクゼーションやリリースを実施し、中殿筋の筋収縮が発揮しやすくなるように調整します。

装具療法の適応

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装具療法では、内側ウェッジを使用して靴の内側を高くして外反を矯正したり、膝関節のサポーターを利用して動揺性を軽減することを目的に使用します。

鵞足炎にて装具が必要となることはほとんどありませんが、なにも変化を与えずにスポーツ復帰すると再発するリスクが高いため、即時にストレスを変化させるための手段として使用を検討しても構いません。

鵞足炎の治療において重要なのは、治ったあとに再発を防ぐことであるため、発生機序や予防法については十分に検討することが大切です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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